今から96年前、アガサ・クリスティが『アクロイド殺し』を世に出したとき、トリックがフェアかアンフェアかで大激論となった──というのはミステリ史に残る出来事でした。こうした激論を経て、ミステリは新たな時代の扉を開いたわけです。が。

そんなアクロイドに勝るとも劣らない議論を(一部で)呼んだのが、今年7月に刊行されたホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実』(創元推理文庫)でした。アクロイドのようなトリックの話ではありません。物語の展開や結末が「これはアリかナシか」で読者が真っ二つに割れたのです。

本サイトの「書評七福神の七月度ベスト!」をご覧ください。千街晶之「このように締めくくった著者の判断は賛否分かれるところだろう」、酒井貞道「こんな物語は読みたくなかった。でも読んでしまう」、霜月蒼「こんな「大人の事情」みたいな不愉快な出来事が、YAの、「少女探偵」の物語に持ち込まれるなんて」などなど、それぞれ7月のナンバーワンに推しながらも、一言留保をつけずにはいられないのがよくわかります。

その後開催された読書会世話人たちのリモート飲み会でも話題はもっぱら「これはアリかナシか」でした。興味深いのはラスト1ページについて「グロテスクだった」「あってはならない」という意見と「救われた」「希望が見えた」と、これまた印象が割れたこと。こんなミステリ、今まであった?

これはもうネタバレ全開で語るしかないでしょ! ということで、まずは9/18にネタバレなしで作品を紹介するトークライブを配信しました。そしていよいよ今週末、ネタバレありで遠慮なく語り合うよ。担当編集者に翻訳家、書評家、読者代表と中の人外の人が入り混じったバトルロワイヤルだ。あなたもぜひチャットやコメントで感想をお聞かせください。

視聴の条件はただひとつ、『自由研究には向かない殺人』『優等生は探偵に向かない』『卒業生には向かない真実』三部作をすべて読んでいること。話は続いていますので、完結編だけ読んでも醍醐味はわかりません。ぜひとも三部作全て読んでご参加ください。

配信日時 11月19日(日)14時〜
配信URL https://youtube.com/live/VDwntAT1vxs
パネリスト ・服部京子(三部作の翻訳家)
      ・佐々木日向子(東京創元社担当編集者)
      ・小林さゆり(翻訳家・西東京読書会世話人)
      ・安達眞弓(翻訳家・オンラインスリラー読書会世話人)
      ・大矢博子(書評家)
      ・大木雄一郎(福岡読書会世話人)
      ・加藤篁(名古屋読書会世話人)