アメリカのベストセラー・ランキング

3月1日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイアは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。邦訳は『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)として早川書房より3月5日刊行予定。

 

  1. 2. AMERICAN DIRT    Down

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 3. GOLDEN IN DEATH    Down

J.D. Robb J・D・ロブ

イヴ&ローク・シリーズ第50作。ある小児科医のもとに、金の卵の飾りが届けられる。好奇心から卵をあけてみると猛毒のガスが飛散し、小児科医は死亡する。イヴは小児科医の過去や人間関係を調べ、卵の送り主を突き止めようとするが、同じ手口による新たな犠牲者が出てしまう。

 

  1. 4. THE SILENT PATIENT    Up

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。

 

  1. 5. THE DUTCH HOUSE    Up

Ann Patchett アン・パチェット

瀟洒な屋敷〈ダッチハウス〉で何不自由なく暮らす二人の子供、姉ミーブと弟ダニー。あるとき継母がやってきて二人は屋敷から追われてしまう。それから数十年、つらい生活のなかで姉弟は分かちがたい絆で結ばれる一方、二度ともどれない家へと何度となく引き寄せられていく。家族の離散と過去への執着の物語。

 

  1. 6. CROOKED RIVER    Down

Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

FBI特別捜査官ペンダーガスト・シリーズ第19作。フロリダのリゾート地の浜辺に、切断された人間の足首が何十も打ちあげられる事件が起こり、ペンダーガストは現地に派遣される。被害者の生死すらわからず、捜査は難航するものの、やがて人体実験がおこなわれている可能性が浮上する。

 

  1. 7. THE GUARDIANS    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダで弁護士が射殺される事件が起こり、かつての依頼人だったミラーという若い黒人が逮捕される。ミラーは有罪判決を受けるが、その後も22年にわたって獄中から無実を訴えつづけていた。冤罪被害者の救済活動をおこなっている牧師にして弁護士であるカレン・ポストは、ミラーの支援に乗り出す。

 

  1. 8. SUCH A FUN AGE    Down

Kiley Reid カイリー・リード

ベビーシッターの仕事中、預かった子どもと高級スーパーマーケットに出かけたエミラは、児童誘拐を疑われて警備員に声をかけられ、騒ぎになる。エミラは大学卒業後もパートタイムの仕事を続ける20代半ばの黒人女性。雇い主のアリックスは、ブログやSNSでライフスタイルを発信する裕福な白人家庭の母親。ふたりのかかわりを通して、人種、階級、経済格差、友情など、さまざまな問題を描く。

 

  1. 9. A LONG PETAL OF THE SEA    Up

Isabel Allende イサベル・アジェンデ

スペイン内戦に揺れる1930年代末のカタルーニャ。フランコの弾圧を受けてフランスへ逃れた共和派の若き医師ビクトルは、戦死した弟の子供を身ごもったロゼと形式的に結婚する。パブロ・ネルーダが用意した船に乗り、チリへ亡命するためだった。安住の地を求めるふたりの数奇な運命を描く、『精霊たちの家』の作者によるヒストリカル・フィクション。

 

  1. 10. WEATHER    New!

Jenny Offill ジェニー・オフィル

マンハッタンで図書館司書として働くリジーは、夫と小学生の息子との3人家族。大学の恩師のポッドキャストを手伝い、気候変動についてリスナーから寄せられるメールの質問に答える副業を始めた彼女は、しだいに世界の滅亡を信じるようになる。

 

【まとめ】

邦訳『ザリガニの鳴くところ』の刊行が近づく“WHERE THE CRAWDADS SING”が1位に返り咲き。10位に新作がランクインしました。2014年に刊行された前作“DEPT. OF SPECULATION”が高い評価を受けたジェニー・オフィルの小説第3作で、気候問題をテーマに現代アメリカ人の未来への不安を描いた作品。オフィル関連の邦訳書には、彼女が編者を務めた『女友だちの賞味期限〈実話集〉』(プレジデント社)があります。トップテン外にも初登場作はなく、変動の少ない週となりました。

 

    1. 満園真木(みつぞの まき)

      東京在住の翻訳者。3月6日に最新訳書『ハーフムーン街の殺人』(アレックス・リーヴ著、小学館文庫)が刊行されます。ヴィクトリア朝のロンドンを舞台に、トランスジェンダーの若者が愛する女性の死の謎に迫る歴史ミステリーです。訳書はほかにリサ・ガードナー『無痛の子』、『棺の女』(ともに小学館文庫)、ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(東京創元社)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)など。