アメリカのベストセラー・ランキング

10月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. FOURTH WING    Stay

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

ナヴァレ王国に暮らす20歳のヴァイオレットは父と兄の死をきっかけに、将軍である母の命でドラゴンライダー養成所に入ることに。エリート戦士であるドラゴンライダーになるべくしのぎを削るライバルたちのなかで、人より小柄で体の弱いヴァイオレットははたして過酷な選考を生き残れるのか――ファンタジーの新シリーズ第1作。

 

  1. 2. LESSONS IN CHEMISTRY    Up

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 3. HOLLY    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

『ミスター・メルセデス』以降、スティーヴン・キング作品にたびたび登場する女性探偵ホリー・ギブニーを主人公とする新作長編。行方不明となった図書館勤務の女性の母親から依頼を受け、ファインダーズ・キーパーズ探偵社のホリー・ギブニーは、女性の失踪への関与が疑われる老齢の大学教授夫妻の調査に乗りだす。

 

  1. 4. SWORD CATCHER    New!

Cassandra Clare カサンドラ・クレア

シャドウハンター・シリーズで知られる著者による新シリーズの第1作。都市国家キャステランで、孤児のケルは王族のコナーのソード・キャッチャー、つまり影武者として育てられる。コナーのために死ぬことこそ自分の義務だと思っていたが、医師をめざす魔術師のリンと出会ったことで、運命が変わりはじめる。

 

  1. 5. BLOOD LINES    New!

Nelson DeMille and Alex DeMille ネルソン・デミル、アレックス・デミル

ネルソン・デミルが息子で脚本家のアレックス・デミルと手がけるシリーズの2作目。ベネズエラでの任務を終えた陸軍犯罪捜査司令部のスコット・ブロディとマギー・テイラーは、同僚がベルリンで殺害された事件を捜査する。難民危機、冷戦と秘密警察の負の遺産、ネオナチ運動といった現代ドイツの暗部にふたりは巻きこまれていく。

 

  1. 6. JUDGMENT PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

連邦保安官ルーカス・ダヴンポートが活躍する、「獲物」シリーズ第33作。連邦判事とその幼い息子ふたりが自宅で射殺される。地元の警察とFBIが調べるが、捜査は手づまりに。そこでルーカスと法執行機関で働くヴァージル・フラワーズがともに捜査に乗り出す。

 

  1. 7. TOM LAKE    Up

Ann Patchett アン・パチェット

2020年春、ラーラの娘三人が帰省してくる。ラーラは若い頃、劇団トム・レイクで有名な俳優と恋に落ちたのだが、娘たちがその当時の話を聞きたがるので語ることにした。ラーラの過去を聞いた三人の娘たちは、それぞれの人生や母親との関係、世間との対峙の仕方について、あらためて考え直すことになる。

 

  1. 8. THE ARMOR OF LIGHT    Up

Ken Follett ケン・フォレット

ジェニー紡績機の発明とともにイギリスは産業革命期に入り、劇的に変化していく生活とともに人々は運命に翻弄されていく。夫を労働中の事故で亡くした子持ちの母親、貧困に苦しむ子供たちへ教育を受けさせようと奮闘する若い女性、倒産の危機にある会社を継がされてしまう若者、自分の富を死守しようとする男……さらにはナポレオン戦争によって、登場人物たちの運命はさらに揺さぶられていくのだった。

 

  1. 9. 12 MONTHS TO LIVE    Down

James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ

ジェーン・スミスは富裕層の集まるハンプトンの敏腕刑事弁護士。あるときジェーンは一家殺害事件で起訴された男の弁護を引きうけ、どうにかして有利な評決を得ようと奔走する日々を送っていたが、なんと自身が末期癌の診断を受けて余命12カ月と宣告されてしまう。その一方で、過去に未解決の類似した殺人事件が起きていたことも判明する。その解決に向けた調査をジェーンが始めたところ、何者かに妨害され、その身に危険が迫るのだった。

 

  1. 10. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

 

【まとめ】

4位と5位に新作がランクインしました。4位のクレアのシャドウハンター・シリーズは、『骨の街』『灰の街』『ガラスの街』(いずれも杉本詠美訳、東京創元社)が刊行されています。5位のデミルはテロリスト対策部隊の活躍を描くジョン・コーリー・シリーズが、第5作の『獅子の血戦』(白石朗訳、講談社)まで刊行ずみです。トップテン外では、リチャード・チズマーの“BECOMING THE BOOGEYMAN”が14位にはいりました。2021年に発表されて本ランキングにも登場した“CHASING THE BOOGEYMAN”の続編です。

 

 

青木創(あおき はじめ)

翻訳者。1年ほど前に本ランキングで2位となったアレイナ・アーカートのデビュー作『解剖学者と殺人鬼』が早川書房より刊行されます。そのほかの訳書に、L・チャイルド『消えた戦友』(講談社)、D・ワッツ『偶然の科学』(早川書房)など。