アメリカのベストセラー・ランキング

12月31日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. FOURTH WING    Stay

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

ナヴァレ王国に暮らす20歳のヴァイオレットは父と兄の死をきっかけに、将軍である母の命でドラゴンライダー養成所に入ることに。エリート戦士であるドラゴンライダーになるべくしのぎを削るライバルたちのなかで、人より小柄で体の弱いヴァイオレットははたして過酷な選考を生き残れるのか――ファンタジーの新シリーズ第1作。

 

  1. 2. THE HEAVEN & EARTH GROCERY STORE    Up

James McBride ジェイムズ・マクブライド

1972年ペンシルヴェニア州のポッツタウンで、古い井戸の底から骸骨が発見された。それをきっかけに、1930年代にこの地に移ってきたユダヤ人とアフリカ系アメリカ人が住む町の秘密が明らかになる。

 

  1. 3. IRON FLAME    Down

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

“FOURTH WING”につづく、エンピリアン・シリーズの第2作。だれもがヴァイオレットは1年目の訓練で命を落とすと考えていたが、彼女はなんとか選考をパスした。そして2年目、“真の”訓練がはじまる。ヴァイオレットはやり遂げられるか、自分でもわからないでいる。その訓練では、彼女の愛する人を裏切るよう要求していた。

 

  1. 4. THE EXCHANGE    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

41歳のミッチ・マクディーアはマンハッタンの大手法律事務所のシニアパートナー。出張先のリビアで同行したアソシエイト弁護士のジョヴァンナが誘拐されてしまい、ミッチは100万ドルの身代金の調達のため、北アフリカからヨーロッパ各地を奔走することになる。映画化もされたベストセラー『法律事務所』の約30年ぶりの続編。

 

  1. 5. LESSONS IN CHEMISTRY    Stay

Bonnie Garmus ボニー・ガルマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 6. THE LITTLE LIAR    Stay

Mitch Albom ミッチ・アルボム

11歳の少年ニコのもとへある日ナチスの将校が来て、仲間のユダヤ人たちに「安全な新しい家」へ向かう列車に乗るように説得してくれと言われる。無邪気なニコは毎日人々を説得するが、最終列車に家族が押しこまれるのを見て、はじめて将校の策略に気づく。その後のニコ、家族、将校、ホロコーストを生き抜いた人々の数十年に及ぶ軌跡が描かれる。

 

  1. 7. HOLLY    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

『ミスター・メルセデス』以降、スティーヴン・キング作品にたびたび登場する女性探偵ホリー・ギブニーを主人公とする新作長編。行方不明となった図書館勤務の女性の母親から依頼を受け、ファインダーズ・キーパーズ探偵社のホリー・ギブニーは、女性の失踪への関与が疑われる老齢の大学教授夫妻の調査に乗りだす。

 

  1. 8. TOM LAKE    Up

Ann Patchett アン・パチェット

2020年春、ラーラの娘三人が帰省してくる。ラーラは若い頃、劇団トム・レイクで有名な俳優と恋に落ちたのだが、娘たちがその当時の話を聞きたがるので語ることにした。ラーラの過去を聞いた三人の娘たちは、それぞれの人生や母親との関係、世間との対峙の仕方について、あらためて考え直すことになる。

 

  1. 9. ALEX CROSS MUST DIE    Down

James Patterson ジェイムズ・パタースン

アレックス・クロス・シリーズ第32作。ワシントンナショナル空港の滑走路で飛行機が爆発・炎上し、クロスとサンプソンは現場に駆けつける。飛行機は遠隔操作されたベトナム戦争時代のマシンガンで銃撃されていたことがわかる。特殊な武器であることを考えれば、容疑者はすぐに浮上しそうなものだった。新たな大量殺戮を防ぐため、クロスとサンプソンは捜査を急ぐのだが……

 

  1. 10. THE EDGE    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

陸軍の元特殊部隊員ディヴァインが活躍するTHE 6:20 MANの2作目。CIA工作員の女性が故郷の田舎町で殺害され、所持していたはずの機密情報が紛失した。事件を捜査して情報漏洩を防ぐためにディヴァインが派遣されるが、町の住民は閉鎖的なうえに死守すべき秘密をかかえているらしく、探れば探るほどディヴァインは窮地に陥っていく。

 

【まとめ】

今週、新作のランクインはありませんでしたが、新たな邦訳の情報が入ってきました。今週も5位に入ったロングセラー、ボニー・ガルマスの“LESSONS IN CHEMISTRY”が来年1月、『化学の授業をはじめます。』(文藝春秋、鈴木美朋訳)として刊行されます。また、13位に入っているこちらもロングセラーのシェルビー・ヴァン・ペルト“REMARKABLY BRIGHT CREATURES”は『親愛なる八本脚の友だち』(扶桑社、東野さやか訳)として12月22日に邦訳が出たばかりです。

 

年末ということで、ニューヨーク・タイムズ紙の2023年ベスト・クライムノヴェルに選ばれた10冊をご紹介します(選者:Sarah Weinman)。S・A・コスビー“ALL THE SINNERS BLEED”、ジョーダン・ハーパー“EVERYBODY KNOWS”、イーライ・クレイナー“OZARK DOGS”、マーゴ・ドゥエイヒー“SCORCHED GRACE”、ダニエル・アルセノー“GLORY BE”、クレマンス・ミシャロン“THE QUIET TENANT”、ヴィクトリア・ヒェラン“MY MEN”、クリストファー・カールソン“BLAZE ME A SUN”、ラグナル・ヨナソン&カトリーン・ヤコブスドッティル“REYKJAVIK”、リチャード・オスマン“THE LAST DEVIL TO DIE”

 

日本でもおなじみの作家の作品も多く、このなかの何冊かは日本語で読める日も近そうですね。楽しみです。

 

最後になりますが、このNYTベストセラー速報は、今回をもって更新終了となります。2014年7月のスタートから9年半、ご愛読ありがとうございました。

執筆者一同より御礼申しあげます。

 

 

 

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。訳書は『夜に啼く森』、『噤(つぐ)みの家』、『完璧な家族』(いずれもリサ・ガードナー/小学館文庫)、『海に呼ばれて ロッカウェイで“わたし”を生きる』(ダイアン・カードウェル/辰巳出版)など。