アメリカのベストセラー・ランキング

10月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. FOURTH WING    Stay

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

ナヴァレ王国に暮らす20歳のヴァイオレットは父と兄の死をきっかけに、将軍である母の命でドラゴンライダー養成所に入ることに。エリート戦士であるドラゴンライダーになるべくしのぎを削るライバルたちのなかで、人より小柄で体の弱いヴァイオレットははたして過酷な選考を生き残れるのか――ファンタジーの新シリーズ第1作。

 

  1. 2. THE RUNNING GRAVE    New!

Robert Galbraith ロバート・ガルブレイス

J・K・ローリングが別名義で執筆している私立探偵コーモラン・ストライク・シリーズの第7作。ストライクはある父親から、カルト的な宗教団体に息子が入ってしまったと相談を受ける。原因不明の死者まで出ているらしいその団体に、ストライクのパートナーであるロビンが潜入調査をすることになるが、思いもよらなかった危険に巻きこまれていく。

 

  1. 3. THE ARMOR OF LIGHT    New!

Ken Follett ケン・フォレット

ジェニー紡績機の発明とともにイギリスは産業革命期に入り、劇的に変化していく生活とともに人々は運命に翻弄されていく。夫を労働中の事故で亡くした子持ちの母親、貧困に苦しむ子供たちへ教育を受けさせようと奮闘する若い女性、倒産の危機にある会社を継がされてしまう若者、自分の富を死守しようとする男……さらにはナポレオン戦争によって、登場人物たちの運命はさらに揺さぶられていくのだった。

 

  1. 4. HOLLY    Down

Stephen King スティーヴン・キング

『ミスター・メルセデス』以降、スティーヴン・キング作品にたびたび登場する女性探偵ホリー・ギブニーを主人公とする新作長編。行方不明となった図書館勤務の女性の母親から依頼を受け、ファインダーズ・キーパーズ探偵社のホリー・ギブニーは、女性の失踪への関与が疑われる老齢の大学教授夫妻の調査に乗りだす。

 

  1. 5. 12 MONTHS TO LIVE    New!

James Patterson and Mike Lupica ジェイムズ・パタースン、マイク・ルピカ

ジェーン・スミスは富裕層の集まるハンプトンの敏腕刑事弁護士。あるときジェーンは一家殺害事件で起訴された男の弁護を引きうけ、どうにかして有利な評決を得ようと奔走する日々を送っていたが、なんと自身が末期癌の診断を受けて余命12カ月と宣告されてしまう。その一方で、過去に未解決の類似した殺人事件が起きていたことも判明する。その解決に向けた調査をジェーンが始めたところ、何者かに妨害され、その身に危険が迫るのだった。

 

  1. 6. THE FRAGILE THREADS OF POWER    New!

V.E. Schwab  V.E.シュワブ

ロンドンを中心にして広がる異世界、グレー・ロンドン、レッド・ロンドン、ホワイト・ロンドン。かつてこれらの異世界は崩壊の危機を乗り越えたが、三人の魔術師の出現によってまたしても破滅の淵に立たされることになる。魔術師のひとり、テスだけが、世界を救う力を持っているらしいのだが――

 

  1. 7. TOM LAKE    Down

Ann Patchett アン・パチェット

2020年春、ラーラの娘三人が帰省してくる。ラーラは若い頃、劇団トム・レイクで有名な俳優と恋に落ちたのだが、娘たちがその当時の話を聞きたがるので語ることにした。ラーラの過去を聞いた三人の娘たちは、それぞれの人生や母親との関係、世間との対峙の仕方について、あらためて考え直すことになる。

 

  1. 8. LESSONS IN CHEMISTRY    Down

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 9. BRIGHT LIGHTS, BIG CHRISTMAS    New!

Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ

ケリーはノースカロライナからNYのグリニッチ・ヴィレッジへと出てきて、家族の農園で栽培しているクリスマスツリー用の木を売っていた。そんな日々を送りながら近隣の人々と親しくなっていったケリーは、特にシングルファザーのパトリックとは近所づきあい以上の何かがあるのを感じていた。それはほんのひとときのロマンスとして終わってしまうのだろうか、それとも……

 

  1. 10. DEMON COPPERHEAD    Down

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

【まとめ】

今週は大きくランキングが入れ替わり、5作がランクインしました。2位のガルブレイスはシリーズ第2作『カイコの紡ぐ嘘』(池田真紀子訳)まで邦訳刊行されています。3位のケン・フォレットは『大聖堂』(矢野浩三郎訳)、『火の柱』(戸田裕之訳)などの邦訳があります。5位のパタースンとの共著者マイク・ルピカはスポーツジャーナリスト出身の作家で、二人の共作はこれで3作目となります。

本連載がお休みだった先週には、リチャード・オスマンの新作『THE LAST DEVIL TO DIE』が初登場3位にランクインしました(今週は13位)。

 

関 麻衣子(せき まいこ)

埼玉在住の翻訳者。主な訳書に『その輝きを僕は知らない』ブランドン・テイラー、『ボーイズクラブの掟』エリカ・カッツ、『弁護士ダニエル・ローリンズ』ヴィクター・メソス(いずれも早川書房)など。