アメリカのベストセラー・ランキング

11月5日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE EXCHANGE    New!

John Grisham ジョン・グリシャム

41歳のミッチ・マクディーアはマンハッタンの大手法律事務所のシニアパートナー。出張先のリビアで同行したアソシエイト弁護士のジョヴァンナが誘拐されてしまい、ミッチは100万ドルの身代金の調達のため、北アフリカからヨーロッパ各地を奔走することになる。映画化もされたベストセラー『法律事務所』の約30年ぶりの続編。

 

  1. 2. FOURTH WING    Down

Rebecca Yarros レベッカ・ヤロス

ナヴァレ王国に暮らす20歳のヴァイオレットは父と兄の死をきっかけに、将軍である母の命でドラゴンライダー養成所に入ることに。エリート戦士であるドラゴンライダーになるべくしのぎを削るライバルたちのなかで、人より小柄で体の弱いヴァイオレットははたして過酷な選考を生き残れるのか――ファンタジーの新シリーズ第1作。

 

  1. 3. LESSONS IN CHEMISTRY    Down

Bonnie Garmus ボニー・ガーマス

1960年代のカリフォルニアで、才能豊かながら女というだけで化学者として正当に評価されていないと感じていたエリザベス。よき理解者に出会えたものの、やがてシングルマザーとなり、娘マッドと愛犬シックス・サーティーと暮らすうち、ひょんなことからテレビの料理番組のホストに起用される。いかにも化学者らしいユニークな料理用語や考え方が視聴者に受け、大人気となるが……

 

  1. 4. TOM LAKE    Up

Ann Patchett アン・パチェット

2020年春、ラーラの娘三人が帰省してくる。ラーラは若い頃、劇団トム・レイクで有名な俳優と恋に落ちたのだが、娘たちがその当時の話を聞きたがるので語ることにした。ラーラの過去を聞いた三人の娘たちは、それぞれの人生や母親との関係、世間との対峙の仕方について、あらためて考え直すことになる。

 

  1. 5. HOLLY    Down

Stephen King スティーヴン・キング

『ミスター・メルセデス』以降、スティーヴン・キング作品にたびたび登場する女性探偵ホリー・ギブニーを主人公とする新作長編。行方不明となった図書館勤務の女性の母親から依頼を受け、ファインダーズ・キーパーズ探偵社のホリー・ギブニーは、女性の失踪への関与が疑われる老齢の大学教授夫妻の調査に乗りだす。

 

  1. 6. JUDGMENT PREY    Stay

John Sandford ジョン・サンドフォード

連邦保安官ルーカス・ダヴンポートが活躍する、「獲物」シリーズ第33作。連邦判事とその幼い息子ふたりが自宅で射殺される。地元の警察とFBIが調べるが、捜査は手づまりに。そこでルーカスと法執行機関で働くヴァージル・フラワーズがともに捜査に乗り出す。

 

  1. 7. DEMON COPPERHEAD    Up

Barbara Kingsolver バーバラ・キングソルヴァー

アパラチアの山岳地帯のトレーラーハウスで産み落とされたデーモン・コッパーヘッドは銅色の髪を持つ少年で、貧困と薬物中毒に苦しみながらもさまざまな人々と出会い、自身の才覚で生き延びていく。チャールズ・ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を現代アメリカの過疎地帯に置き換えた作品。

 

  1. 8. THE ARMOR OF LIGHT    Stay

Ken Follett ケン・フォレット

ジェニー紡績機の発明とともにイギリスは産業革命期に入り、劇的に変化していく生活とともに人々は運命に翻弄されていく。夫を労働中の事故で亡くした子持ちの母親、貧困に苦しむ子供たちへ教育を受けさせようと奮闘する若い女性、倒産の危機にある会社を継がされてしまう若者、自分の富を死守しようとする男……さらにはナポレオン戦争によって、登場人物たちの運命はさらに揺さぶられていくのだった。

 

  1. 9. THE COVENANT OF WATER    Up

Abraham Verghese エイブラハム・ヴァルギーズ

20世紀の南インドのケララ州を舞台に、ある一家の3世代にわたる物語をつづった大河小説。1900年、12歳の少女アマキは2歳の息子ジョジョを持つ40歳の男やもめのもとへ嫁ぐ。アマキは16歳で娘を出産するが、継子のジョジョは10歳のとき用水路で溺死してしまう。アマキの一家はその後も疫病や飢饉や政治動乱など多くの苦難に見舞われる。

 

  1. 10. SWORD CATCHER    Down

Cassandra Clare カサンドラ・クレア

シャドウハンター・シリーズで知られる著者による新シリーズの第1作。都市国家キャステランで、孤児のケルは王族のコナーのソード・キャッチャー、つまり影武者として育てられる。コナーのために死ぬことこそ自分の義務だと思っていたが、医師をめざす魔術師のリンと出会ったことで、運命が変わりはじめる。

 

【まとめ】

今週の初登場は、1位に輝いたジョン・グリシャムの1作のみでした。グリシャムは毎年この時期に新作を出し、それが年末年始のランキングで上位をキープし続けるのが恒例となっています。グリシャムの近年の邦訳には、村上春樹訳の『「グレート・ギャツビー」を追え』とその続編『狙われた楽園』(ともに中央公論新社)や、『冤罪法廷(上・下)』(新潮文庫)などがあります。またベストテン外の15位には、YA作品で知られるエイドリアン・ヤングの“THE UNMAKING OF JUNE FARROW”が入りました。母の失踪の謎を解くために時空を超えるヒロインのタイムトラベル・ファンタジーということです。

 

 

満園真木(みつぞの まき)

東京在住の翻訳者。9月上旬に新しい訳書『夜に啼く森』が刊行されました。『棺の女』『完璧な家族』『噤(つぐ)みの家』(すべてリサ・ガードナー/小学館文庫)に続くボストン市警刑事D・D・ウォレン&生還者フローラのシリーズの第4弾。今回、D・DとフローラはFBI捜査官キンバリー・クインシーと力を合わせて、アパラチア山脈で白骨遺体が見つかった事件の捜査にあたり、その過程でのどかな山間の町にひそむ闇を暴いていきます。シリーズの過去作とあわせてぜひどうぞ。また、10月16日には『海に呼ばれて ロッカウェイで“わたし”を生きる』(ダイアン・カードウェル/辰巳出版)が出ました。離婚後、40代なかばでサーフィンと出会って人生が変わった著者のメモワール(回想録)。ニューヨーク市内のビーチタウン、ロッカウェイに引っ越した著者の暮らしが素敵で海に行きたくなります。こちらもよろしくお願いします!