アメリカのベストセラー・ランキング

7月12日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

3. TRUTH OR DIE    New!

James Patterson and Howard Roughan ジェイムズ・パタースン、ハワード・ローワン

失業中の弁護士トレヴァーは恋人が書くスクープ記事の調査を手伝ううちに、ある秘密に行き当たる。テロ集団や各国政府がこぞって欲しがる強力な自白剤。アルツハイマー治療薬のつもりでそれを開発した17歳の天才少年とともに、トレヴァーは巨悪の目論見を阻むべく立ち向かう。

4. FINDERS KEEPERS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

昨年夏に刊行された“Mr. Mercedes”の続編。著名な作家が殺害され、未発表の小説の原稿が盗まれる。が、犯人が別の罪で刑務所に収監されているあいだに、隠してあった原稿を少年が見つける。やがて釈放された犯人は原稿が奪われたことを知り、少年を追う。

5. IN THE UNLIKELY EVENT    Up

Judy Blume ジュディ・ブルーム

1950年代はじめ、ニュージャージーの小さな町で、飛行機の墜落事故が立てつづけに三件も起こる。ありえない事件に住民は動揺するが、そこに自分なりの意味を見いだそうとする。ヤングアダルトに人気の作者が、故郷の町で実際に起こった事件を題材にした大人向けの小説。

6. THE MELODY LINGERS ON    New!

Mary Higgins Clark メアリ・ヒギンズ・クラーク

有名インテリアデザイナーの助手をつとめるレインが仕事で訪れたその家は、50億ドルとともに失踪した疑惑の投資銀行家の留守宅だった。夫の無実を固く信じる夫人とその息子に近づき過ぎてしまったことが、レインと5歳の愛娘ケイティを思わぬ窮地に陥れる。

7. WICKED CHARMS    New!

Janet Evanovich and Phoef Sutton ジャネット・イヴァノヴィッチ、フェフ・サットン

ペイストリー・シェフのリジーと相棒ディーゼルのお宝ハンター・シリーズ第3作。100年前に殺された密売屋がニューイングランドの海岸に移した海賊の宝。そこに有名な“強欲の石”もあると聞き、リジーたちはメイン州へ繰りだすが、ディーゼルの謎のいとこウーフも同じ石を、そしてリジーを手に入れようと動いていた。

8. TOM CLANCY UNDER FIRE    Down

Grant Blackwood グラント・ブラックウッド

2013年に逝去したトム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズを共著者が受け継いだ最新作。テヘランで再会した旧友が、ひとつの鍵と謎めいたメッセージを残して姿を消した。友にかけられた疑いを晴らすため、ジャック・ライアン・ジュニアは真実を追って、イラン、コーカサス地方、そしてロシアが狙う紛争地域へ向かう。

9. THE RUMOR    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

ナンタケット島に住む作家のマデレンと庭造りに夢中な親友グレイスは、夫や子供たちと理想的な生活を送っていた。しかし、この夏はふたりの身辺によからぬ噂がたち、幸せな生活に危機が訪れる。噂を打ち消そうにも、現実は噂以上に厳しい状況に。ナンタケット在住の“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。

10. THE PRESIDENT’S SHADOW    Down

Brad Meltzer ブラッド・メルツァー

秘密結社カルパー・リング・シリーズ第3作。国立公文書館で働くビーチャー・ホワイトは、ジョージ・ワシントンが創設した大統領を守るための秘密結社のメンバーでもある。ホワイトハウスのバラ園で人間の腕が発見され、ビーチャーはそこに隠されたメッセージの意味を探り、やがてそれが大統領ではなく自分自身に宛てられたものだと気づく。

【まとめ】

トップ2を揺るがすには至りませんでしたが、ベテラン勢の作品が新たにランクインしました。3位のジェイムズ・パタースンには数々の共著があり、ハワード・ローワンとはこれが6作目。1作目のみ邦訳『殺意がふたりを分かつまで』が出ています。7位のイヴァノヴィッチはシリーズ3作目となる今回から、映画「くちづけはタンゴの後で」やドラマ〈ボストン・リーガル〉などの脚本に携わるフェフ・サットンを共著者に迎えました。そして17位には、ドン・ウィンズロウ『犬の力』の続編THE CARTELが登場。この2つの作品を合わせて、2部作構成での映画化が決定しています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

関西読書会の世話人メンバー。訳書にグレッグ・ルッカ『回帰者』など。先月の『ストーナー』読書会は、おかげさまで良い会となりました。ご参加いただいたみなさんのそれぞれに深いお話の数々、もっとお聞きしたかったです。またお目にかかれますように。

昨夏の当読書会は『ラバーネッカー』で盛り上がりましたが、そのべリンダ・バウアーの新刊『生と死にまつわるいくつかの現実』が、世話人ズ仲間の吉井智津さん訳で明日7月7日発売に。予約ポチしたわたしは首がキリンです。あ、ここはラバーネックと言うべき? ろくろっ首も涼しげで捨てがたい(意味不明)。