アメリカのベストセラー・ランキング

5月17日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. CAMINO WINDS    New!

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 2. IF IT BLEEDS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。

 

  1. 3. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 4. WALK THE WIRE    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第6作。石油ブームに沸くノースダコタの町で起きた殺人事件。被害者は若い女性で、空地に棄てられていた遺体には解剖の痕がのこされていた。デッカーとジェイミソンは調査にあたるが、事件は地域一帯で起こりつつあった不穏な出来事のほんの始まりでしかなかった。

 

  1. 5. THE BOOK OF LONGINGS    Up

Sue Monk Kidd スー・モンク・キッド

1世紀のガリラヤ地方。裕福な家に生まれ、知的探求心の強い娘に育ったアナは、周囲に隠れて抑圧された女性たちの物語を書いていた。14歳のアナに家族が望んだのは年上の有力者に嫁ぐことのみだったが、ある日市場で18歳のイエスと出会い、人生が一変する。全米ベストセラー小説『リリィ、はちみつ色の夏』の作者が、歴史上の人物を題材に描く。

 

  1. 6. THE WEDDING DRESS    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

1920年代から1960年代にかけて時代が大きく変わるなか、ある一家も様々な出来事に見舞われた。しかし1928年にパリでつくられたウェディング・ドレスは、世代を経て受け継がれていた。変わりつづける世界で、家族の絆の象徴となったウェディング・ドレスの物語。

 

  1. 7. AMERICAN DIRT    Down

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 8. MASKED PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第30作。上院議員の娘が、自分の写真や名前がさらされた奇妙なブログを見つける。そこには有力政治家の子息らの写真が多数あり、過激な政治的主張が書きこまれていた。明らかに危険な内容だが撮影者は特定できず、連邦保安官のルーカスに捜査が委ねられる。

 

  1. 9. THE SILENT PATIENT    Down

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。

 

  1. 10. THE END OF OCTOBER    New!

Lawrence Wright ローレンス・ライト

インドネシアの犯罪者収容所で、出血を伴う熱が原因で47人が死んだと報告された。アメリカの微生物学者で疫学者のパーソンズ博士は、WHOの代表として現地に赴く。病気は驚異的な勢いで世界中に広がっていき、パーソンズは謎のウイルスの正体を一刻も早くつきとめようとする。

 

【まとめ】

新作のランクインは3作でした。1位に初登場したのはジョン・グリシャム。2017年に出版された、フロリダの書店主ブルースが活躍する “CAMINO ISLAND” の続編にあたります。10位には、いまの世界の状況と重なるような、謎のウイルスを題材にした作品がランクインしました。著者のライトは、2007年に『倒壊する巨塔――アルカイダと「9・11」への道(上・下)』(平賀秀明訳、白水社)でピューリッツァー賞(ノンフィクション部門)を受賞しています。本コーナーがお休みだった先週に初登場した3作は、今週もランキング内に留まっています(2、4、5位)。4位の完全記憶探偵シリーズは、第2作『完全記憶探偵エイモス・デッカー ラストマイル』(関麻衣子訳、竹書房)まで刊行ずみです。

 

    1. 吉野山早苗(よしのやま さなえ)

      翻訳者です。訳書に〈英国少女探偵の事件簿〉シリーズ、〈ニューヨーク五番街の事件簿〉シリーズ(いずれもコージーブックス)など。