アメリカのベストセラー・ランキング

5月31日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Up

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. CAMINO WINDS     Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 3. IF IT BLEEDS    Stay

Stephen King スティーヴン・キング

巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。

 

  1. 4. WALK THE WIRE    Up

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第6作。石油ブームに沸くノースダコタの町で起きた殺人事件。被害者は若い女性で、空地に棄てられていた遺体には解剖の痕がのこされていた。デッカーとジェイミソンは調査にあたるが、事件は地域一帯で起こりつつあった不穏な出来事のほんの始まりでしかなかった。

 

  1. 5. THE 20TH VICTIM    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ

LA、シカゴ、サンフランシスコの3都市でドラッグ・ディーラーを狙う狙撃事件が頻発し、背後にドラッグ撲滅を目指す自警団の存在が見え隠れする。狙撃犯は殺人鬼か、それとも英雄か、死傷者が増えるにつれ国中が沸き返る。女性4人が活躍するウィメンズ・マーダー・クラブ・シリーズの第20作。

 

  1. 6. BIG SUMMER    Up

Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー

ぽっちゃり女子のインスタグラマーとして人気を博しはじめたダフネのもとへ、昔絶交した元親友のドルーが現れ、こともあろうに花嫁付添人になってくれと言う。ダフネは屈辱の思い出を噛み締めるものの、海辺の豪邸やハンサムな独身男性という誘い文句に心が揺れ動く。

 

  1. 7. AMERICAN DIRT    Up

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 8. THE LAST TRIAL    New!

Scott Turow スコット・トゥロー

アメリカ中部、キンドル郡。敏腕弁護士アレハンドロ・“サンディ”・スターンは、齢85を数え、引退を考えていた。だが、長年の友であるノーベル賞科学者が癌治療薬開発をめぐり殺人とインサイダー取引の罪に問われたことを知り、弁護を引き受ける――スターン最後の事件。

 

  1. 9. ALL ADULTS HERE    Down

Emma Straub エマ・ストラウブ

アストリッドは3人の子供たちを育てあげ、子供たちは大人になってそれぞれの人生を歩んでいるのだが、身内に言えない秘密はだれにでもあるものだ。ある日、好奇心の強すぎる孫を預かったばかりに、水面下の問題があれもこれも……。機知とユーモアで語られた、ある家族の物語。

 

  1. 10. THE BOOK OF LONGINGS    Down

Sue Monk Kidd スー・モンク・キッド

1世紀のガリラヤ地方。裕福な家に生まれ、知的探求心の強い娘に育ったアナは、周囲に隠れて抑圧された女性たちの物語を書いていた。14歳のアナに家族が望んだのは年上の有力者に嫁ぐことのみだったが、ある日市場で18歳のイエスと出会い、人生が一変する。全米ベストセラー小説『リリィ、はちみつ色の夏』の作者が、歴史上の人物を題材に描く。

 

【まとめ】

初登場は1作品と、変動の少ない週でした。8位はスコット・トゥローの新作リーガル・サスペンス。『推定無罪』『立証責任』『無罪 INNOCENT』(文藝春秋)など、トゥロー作品でおなじみの敏腕弁護士サンディ・スターン最後の事件が描かれます。トップテン外では、14位にインド出身の女性作家アルカ・ジョーシのデビュー作“THE HENNA ARTIST”が、15位には『アルアル島の大事件』のクリストファー・ムーアの新作“SHAKESPEARE FOR SQUIRRELS”がランクインしています。

 

    1. 中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

      翻訳者。訳書にヨルン・リーエル・ホルスト『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』、ジェニファー・イーガン『マンハッタン・ビーチ』など。