アメリカのベストセラー・ランキング

11月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE WHISTLER    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。

2. THE WRONG SIDE OF GOODBYE    New!

Michael Connelly マイクル・コナリー

ロス市警退職後、私立探偵業をはじめるかたわら、小さな町の警察署の予備警察官となったボッシュ。さっそく連続婦女暴行事件の捜査に参加する一方、余命わずかな富豪から、遠い昔に別れた恋人が産んだはずの自分の子供を捜してほしいと依頼される。ハリー・ボッシュ・シリーズ第21作。

3. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。

4. THE AWARD    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

第二次大戦中、フランス・リヨンに暮らす娘ガエルは、ドイツ軍に家族を殺され、レジスタンス運動に身を投じる。だが、心あるドイツ人将校の協力でフランスの文化遺産の保護に関わったことから、対独協力者の汚名を着せられることになり……時代に翻弄された女性が名誉を回復するまでの長い道のりを描いたヒストリカル・フィクション。

5. SMALL GREAT THINGS    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ベテラン看護師のルースは呼吸困難を起こした新生児を前に躊躇した。黒い指で絶対に子どもに触れるなと、その子の親に禁じられていたのだ。一瞬の迷いのせいで重い刑事責任を問われることになった彼女を救うため、白人弁護士は人種を武器にメディアを操る戦略を推してくるが……。ベストセラー作家ピコーが、現代の人種問題に切り込んでいく。

6. VINCE FLYNN: ORDER TO KILL    Down

Kyle Mills カイル・ミルズ

テロリストの手から核兵器を守るべく奔走していたCIA諜報員ミッチ・ラップは、中東を凌駕するほどの破壊的な目論見がロシアで進行していると気づき、ISISのリクルーターを装ってモスクワに潜入する。ミッチ・ラップ・シリーズの第15作。原作者ヴィンス・フリンが他界し、14作目からカイル・ミルズが書き継いでいる。

7. ESCAPE CLAUSE    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

法執行機関で働くヴァージル・フラワーズを主人公にしたシリーズ9作目。ミネソタ動物園から2匹のアムール虎がいなくなった。どうやら盗み出されたらしく、ヴァージルは調査に乗り出す。時を同じくして、ガールフレンドであるフランキーの妹、スパークルが越してきて、事態はより複雑になる。彼女は移民労働者の調査をしているのだが、調査を望まない裏社会の人間がいるらしい。さらに、彼女はヴァージルに好意を抱きはじめ……

8. THE WOMAN IN CABIN 10    Up

Ruth Ware ルース・ウェア

小型客船で北海をイギリスからノルウェーへ向かう途中、旅行雑誌の記者ローラは、深夜に人が海に落ちたような音を聞く。隣の10号室の女がいなくなっていたが、姿を見かけたのはローラだけで、船員も乗客も全員が10号室は空室だったと言う。自分を疑いながらも、ローラは独自に調査をはじめる。

9. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスより邦訳『すべての見えない光』(藤井光訳)が刊行されている。

10. COMMONWEALTH    Stay

Ann Patchett アン・パチェット

1960年代のロサンゼルスにはじまる、半世紀にわたる物語。バートは幼い子供3人と身重の妻がいる家に帰る気になれず、ほとんど見も知らぬ他人の娘の洗礼を祝うパーティに紛れこむ。そこでバートは娘の母親のベヴァリーにひと目で心を奪われてしまう。突然の出会いはふたつの家族を壊し、徐々に変形させてゆく。

【まとめ】

先週に引きつづき、グリシャムの新作が1位を獲得。新たにベストテン入りしたのは2位と4位の2作でした。2位に入ったコナリーのハリー・ボッシュ・シリーズは、第17作の邦訳『転落の町』が講談社文庫より今年9月に刊行されたところです。最新作にも登場する異母兄弟のリンカーン弁護士ことミッキー・ハラーのシリーズも、第4作『証言拒否』が2月に出ています。4位のダニエル・スティールは、今年発表した6作がすべてベストテン入りというあいかわらずの多作&人気ぶり。ベストテン外では、『プラクティカル・マジック』『ローカル・ガールズ』の著者アリス・ホフマンの最新作“FAITHFUL”が、19位にランクインしています。

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

訳書にパーマー『スキャンダラス 女たちの編集部』、フリン『カーターフック屋敷へようこそ』など。今月25日にミシェル・ペイヴァー「神々と戦士たち」シリーズ第3巻『ケフティウの呪文』が刊行されます。どうぞよろしくお願いします。