アメリカのベストセラー・ランキング

6月14日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 2. HIDEAWAY    New!

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ハリウッドの名家に生まれ、子役として活躍していたケイトは、9歳のときに誘拐されるが、機転を利かせて自力で脱出することに成功する。逃げこんだ家の家族は事情を知ってケイトを保護し、親身になって世話をしてくれるが、ケイトの試練はこれで終わったわけではなかった。

 

  1. 3. FAIR WARNING    New!

Michael Connelly マイクル・コナリー

ハリー・ボッシュ・シリーズのスピンオフで、ジャーナリストを主人公とするジャック・マカヴォイ・シリーズ第3作。マカヴォイが一夜だけの関係を持った女性が惨殺される。マカヴォイは調査に乗り出し、ほかにも不審な殺人事件が起こっていて、犯人が遺伝情報にもとづいて犠牲者を選び出し、殺害している可能性に気づく。

 

  1. 4. CAMINO WINDS    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダのカミノ島がハリケーンに襲われ、多くのひとが亡くなった。犠牲者のひとりにスリラー作家のネルソン・カーもいたが、頭部に殴られた跡があったことから、彼の友人で書店を営むブルース・ケーブルは、その死に疑問を持つ。やがて彼は、カーの著作の怪しげな登場人物たちは実在するのではと思いはじめる。

 

  1. 5. IF IT BLEEDS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

巨匠スティーヴン・キングによるホラー中編小説集。『ミスター・メルセデス』(白石朗訳、文春文庫)にはじまるビル・ホッジズ3部作および前作“THE OUTSIDER”の登場人物ホリー・ギブニーを主人公とした表題作‘IF IT BLEEDS’ほか、全4編を収録。

 

  1. 6. BIG SUMMER    Down

Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー

ぽっちゃり女子のインスタグラマーとして人気を博しはじめたダフネのもとへ、昔絶交した元親友のドルーが現れ、こともあろうに花嫁付添人になってくれと言う。ダフネは屈辱の思い出を噛み締めるものの、海辺の豪邸やハンサムな独身男性という誘い文句に心が揺れ動く。

 

  1. 7. AMERICAN DIRT    Stay

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 8. WALK THE WIRE    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

“完全記憶探偵”エイモス・デッカー・シリーズ第6作。石油ブームに沸くノースダコタの町で起きた殺人事件。被害者は若い女性で、空地に棄てられていた遺体には解剖の痕がのこされていた。デッカーとジェイミソンは調査にあたるが、事件は地域一帯で起こりつつあった不穏な出来事のほんの始まりでしかなかった。

 

  1. 9. ALL ADULTS HERE    Up

Emma Straub エマ・ストラウブ

アストリッドは3人の子供たちを育てあげ、子供たちは大人になってそれぞれの人生を歩んでいるのだが、身内に言えない秘密はだれにでもあるものだ。ある日、好奇心の強すぎる孫を預かったばかりに、水面下の問題があれもこれも……。機知とユーモアで語られた、ある家族の物語。

 

  1. 10. THE 20TH VICTIM    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ

LA、シカゴ、サンフランシスコの3都市でドラッグ・ディーラーを狙う狙撃事件が頻発し、背後にドラッグ撲滅を目指す自警団の存在が見え隠れする。狙撃犯は殺人鬼か、それとも英雄か、死傷者が増えるにつれ国中が沸き返る。女性4人が活躍するウィメンズ・マーダー・クラブ・シリーズの第20作。

 

 

【まとめ】

 2位と3位に新作が登場しました。2位のロバーツは、昨年末にこのランキングで1位となった光の魔法トリロジーの第3作『愛と魔法に導かれし世界』が扶桑社より刊行されています。3位のジャック・マカヴォイ・シリーズは第1作『ザ・ポエット』が扶桑社から、第2作『スケアクロウ』が講談社から刊行ずみです。トップテン外では、クライブ・カッスラーのファーゴ・アドベンチャー・シリーズ第12作“WRATH OF POSEIDON”が14位にはいりました。なお、本コーナーがお休みだった先週、「もしヒラリー・ロダムがビル・クリントンと結婚しなかったら」という架空の世界をカーティス・シッテンフェルドが描いた“RODHAM”が8位にランクインしましたが、今週は残念ながら圏外となっています。

    1. 青木創(あおき はじめ)

      翻訳者。訳書にJ・ハーパー『潤みと翳り』、L・チャイルド『ミッドナイト・ライン』、D・ワッツ『偶然の科学』など。