アメリカのベストセラー・ランキング

1月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE JUDGE’S LIST    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダ州で裁判官への苦情申立てについて調査する弁護士レイシー・ストルツが活躍する2016年刊行の“THE WHISTLER”の続編。20年前に父親を殺されたという女性ジェリーがレイシーのもとにやってくる。事件は未解決だが、ジェリーはある容疑者の名前をあげ、被害者はほかにも複数いると話す。その容疑者とは、なんと裁判官だというのだが――

 

  1. 2. WISH YOU WERE HERE    Up

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

29歳のダイアナは仕事も恋も順調で、恋人とガラパゴス諸島へ行く予定を立てていた。ところが未知のウイルスが流行の兆しを見せ、外科研修医である恋人は直前に出発を見送り、ダイアナひとりで旅に出ることに。到着した直後パンデミックにより国境が封鎖され、ダイアナはガラパゴス諸島に閉じこめられてしまう。

 

  1. 3. THE STRANGER IN THE LIFEBOAT    Down

Mitch Albom ミッチ・アルボム

船舶の爆発事故が起き、生存者9名がボートで漂流しながら三日間救助を待っていた。あきらめの雰囲気が漂うなか、波間にひとりの男が浮かんでいる姿が見え、助けだしてボートに乗せることになる。その男はなんと、自分が神であると名乗り、信じる者のみが生きのびられると言うのだった。神の助けを待つ者たちの前に本物の神があらわれたのだろうか、それとも――

 

  1. 4. THE LINCOLN HIGHWAY    Up

Amor Towles エイモア・トールズ

1954年、18歳のエメットはカンザスの少年拘置所を出てネブラスカへもどる。母はずっと前に失踪、父が最近病死したため、8歳の弟とともにサンフランシスコで人生をやりなおそうとリンカーンハイウェイを西へ向かおうとする。ところが、拘置所から少年ふたりが隠れてエメットについてきていた。4人は古いスチュードベーカーに乗って東へ向かう。

 

  1. 5. THE MIDNIGHT LIBRARY    Up

Matt Haig マット・ヘイグ

仕事を失い、飼い猫まで亡くして、何もかもうまくいかない、だれからも必要とされないと絶望したノーラは自殺を図る。そして生と死のあいだにある謎めいた図書館にたどり着く。所蔵されている無数の本は、自分が選ばなかった人生の物語であり、オリンピックのメダリストになる人生も母親になる人生も、自由に試すことができるらしい。

 

  1. 6. CLOUD CUCKOO LAND    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

15世紀のコンスタンティノープル、戦時下を生きる十代のアンナとオミール。現代のアイダホ州の図書館で対峙する、老いたジーノと若きシーモア。そして数十年後の未来における宇宙船で孤独に生きるコンスタンス。3つの時代を生きる5人の登場人物が、1冊の本を軸にしてそれぞれの人生に翻弄される。

 

  1. 7. CALL US WHAT WE CARRY   Down

Amanda Gorman アマンダ・ゴーマン

ジョー・バイデン現アメリカ大統領の就任式で自作を朗読する詩人に抜擢されたゴーマンの詩集。

 

  1. 8. THE WISH    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

マギーは16歳のときに、ノースカロライナ州の離島であるオクラコーク島に住む叔母と同居することになる。そして島で出会ったブライスという十代の若者を通じて、島の美しさと写真の魅力に取り憑かれる。それから20年以上が経過した2019年、マギーは写真家としてNYでギャラリーを持つまで成功していたが、自身の病に悩まされる。そんな折に心を占めていたのは、十代のころの恋の思い出だった。

 

  1. 9. GO TELL THE BEES THAT I AM GONE    Down

Diana Gabaldon ダイアナ・ガバルドン

ドラマ『アウトランダー』原作、時空を超えるヒストリカルロマンスのアウトランダー・シリーズ第9作。アメリカ独立戦争の戦火がフレイザーズ・リッジに迫るなか、クレアとジェイミーは愛娘ブリアナとその家族との再会を果たす。

 

10. THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE    Up
V.E. Schwab V.E.シュワブ

17世紀末のフランスに生まれたアディ・ラルーは、望まない結婚と平凡な暮らしから逃れるために、神々のひとりと取引をする。しかし魂と引き換えに、永遠の自由とともに与えられたのは、誰の記憶にものこらない孤独な人生だった。300年が経ち、ニューヨークの街で、ひとつの出会いが彼女の運命を変える。

 

【まとめ】

新年1回目のベストセラー・リストは、年末から大きな動きがなく15位までに新作はありませんでしたが、10位にV.E.シュワブの“THE INVISIBLE LIFE OF ADDIE LARUE”が再浮上しました。2020年10月25日付の本リストに初登場したのち、ランクイン44週目となったロマンティック・ファンタジーの話題作。映画化も進行中とのことです。来月2月に、『アディ・ラルーの誰も知らない人生(仮題)』(高里ひろ訳)として早川書房より邦訳の刊行が予定されています。同じく2月に、ハーパーコリンズ・ジャパンより邦訳刊行予定のマット・ヘイグは今週5位で、ランクイン56週目となりました。

 

吉井智津(よしい ちづ)

吉井智津(よしい ちづ)翻訳者。訳書にアンナ・シャーマン『追憶の東京 異国の時を旅する』(早川書房)、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)など。