◆第61回なぜか日本では未放映の人気政治ドラマ『マダム・セクレタリー』◆


 2019年にはいってすでに一ヶ月以上が経ちましたが、日本もアメリカもイギリスも、あいかわらず内政も外交も波乱含みでグダグダが続いてますねー。
そんな中、今回紹介するドラマは、ホワイトハウスを舞台にした政治スリラー『マダム・セクレタリー』です。

■『マダム・セクレタリー』第1話予告編■

 これは、アメリカ合衆国国務長官に昇格した元CIA分析官エリザベス・フォークナー・マッコードの活躍を描いた政治スリラーなのですが、その特色はとにかく内容が欲張りなこと。
1)政治的な駆け引きを巡る政治劇。
2)陰謀や犯罪を巡るスリラー。
3)家庭内の出来事を綴るホームドラマ。
 ――という、全くジャンルの異なる三つのエピソードが常に平行して描かれているのです。
 一番近い雰囲気のドラマというと、今、日本でリメイク版が作られてちょっと話題になってる『グッド・ワイフ』でしょうか。あれも、民事事件、刑事事件、事務所内での勢力争い、家庭内のドラマといった、ミステリ的内容とホームドラマ的内容とが、並行して描かれた盛りだくさんで難易度の高いシナリオが特徴でした。
 ただ、『マダム・セクレタリー』『グッド・ワイフ』と違うのは、恋愛要素は皆無なところ。主人公の旦那さんとの夫婦仲は盤石で、家庭劇の部分は、年頃の子供を三人も抱えたお母さんの奮戦記的なのです。
 政治劇の方は、アメリカのメジャー番組として当然のごとく、徹底してリベラル。『ザ・ホワイトハウス』『サバイバー 宿命の大統領』といったドラマ同様、現代の複雑で困難な政治的状況の中、アメリカの理想である民主主義を貫くべく奮闘する主人公の姿が描かれています。
 主演は、『ジュラシック・パーク3』の残念なお母さん役など、映画で活躍していたティア・レオーニ。ここ何年も映画出演がないのは、このドラマの主役を演じていたからなんですね。
 頭が切れて肝も太い元CIAの美人肝っ玉母さんが、国務長官として内政・外交に奮闘するという、スーパーヒロイン像全部入りみたいな痛快作です。
ところで、実はこのドラマ、アメリカではすでに第5シーズン放送中という人気番組なんですが、なぜか日本にはいまだに入ってきていないんですよね。内容的に難しいと思われて敬遠されてるのかなあ? 


 さて、今最も人気も内容も一番の政治スリラーといえば、何と言っても『大統領失踪』でしょう。なにせ、元大統領のビル・クリントンが、アメリカで一番稼いでいるミステリ作家、ジェイムズ・パタースンと共作、最新かつリアルなホワイトハウスの内情と、フィクションならではの波瀾万丈の展開とが楽しめる、豪華な一作です。

 さらにもう一本推すとすれば、こちらはすでにセミクラシック化しているジェフリー・アーチャー『大統領に知らせますか?』とその姉妹編となる『ロスノフスキ家の娘』(こちらは『ケインとアベル』の続編でもあります)や、同じくアーチャーがイギリスを舞台として描いた『めざせダウニング街10番地』でしょうか。アーチャーもまた、自身が政治家であったという経歴からか、リアルな政界描写に定評があります。
 
 最後に、本題とは関係ないのですが、日頃、SFがメインの筆者ですが、昨年末以来、SF以外の書籍の巻末解説仕事が続きました。
 アメリカの代表的なシナリオ教科書『ストーリー』、最新ハードボイルドアクション小説『拳銃使いの娘』、先頃亡くなったアメコミ界伝説の名編集者の伝記『スタン・リー: マーベル・ヒーローを創った男』の三冊です。もしよろしければ、解説部分はもちろん、本文の方も是非ともご一読ください。どれもおもしろいです。

堺 三保(さかい みつやす)
  1963年大阪生まれ。『SFマガジン』、『映画秘宝』等に記事書いてます。また、訳書近刊にコミックス『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション)。設定考証を担当したテレビアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランクス』が2018年1月から放送中。同じく設定部分を担当したアニメ映画『ニンジャバットマン』も2018年6月15日(金)劇場公開。
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