◆第62回2018年のベスト・スリラー・ドラマ? 女性二人のねじれた愛憎が絡み合うスパイアクション『キリング・イヴ』◆

 

 今回はめずらしく第1シーズンがすでに日本でも放送されてる作品をご紹介します。この原稿を書いてる今(3月初め)まさにクライマックスをWOWOWで放送してる『キリング・イヴ』がそれ。
 なんたってこの作品、各メディアで「2018年最高のスパイスリラー」という評判が巻き起こり、主演のサンドラ・オーがなんとゴールデングローブ賞とエミー賞の主演女優賞をダブルで取っちゃったとゆー、超話題の新作なのです。

■『キリング・イヴ』第1シーズン予告編■

 このドラマの主人公は二人の女性です。
 一人は、タイトルにもなっている(サンドラ・オー演じる)イヴ。イギリスの諜報機関MI5の職員で、洞察力に優れてはいるのですが、事務仕事ばかりやらされ、退屈して日々悶々としている中年女性です。
 もう一人の主役は、美貌の若き女殺し屋、ヴィネラル。謎の組織に雇われ、ヨーロッパを股にかけ、人を殺して回ってるメチャクチャやばい女性です。何がヤバいって、人殺しだってだけじゃなく、明らかに人格がどこかおかしいサイコパスなところ。
 このドラマは、イヴが持ち前の洞察力でヴィネラルの殺しに気づくところから始まります。他の職員たちはわからなかった、謎の殺し屋の存在を指摘、捜査班の一員となるのですが、ここで恐るべき逆転が生じます。なんと、追われている側のヴィネラルが、自分のことに気づいて捜査を始めたイヴに興味を抱き、コンタクトしようと試みるのです。
 追う者と追われる者という関係から、互いに相手に興味を持つ者として、少しずつ距離を縮めていくイヴとヴィネラル。二人の関係は第1シーズン最終話でなんともショッキングな結末を迎えるのですが……なんと、そこからさらに第2シーズンへと話は続き、いよいよ恐るべき殺人ゲームの幕が上がりそうな不穏な予告編が!(第2シーズンはこの4月から英米で放送開始予定)

 英米では、今一番続きが気になるスパイ+サイコスリラーとして大評判な本作、今からでもまだ視聴に間に合いますぞ!

■『キリング・イヴ』第2シーズン予告編■

 さて、女性が主人公のスパイスリラーと言えば、最近ではやはりテイラー・スティーヴンス『インフォメーショニスト』『ドールマン』といった《ヴァネッサ・マイケル・マンロー》シリーズが有名でしょうか。なにせ、マンローは絶世の美女にして最強の人間兵器。卑劣な強敵をなぎ倒していく痛快さは、今どき貴重なものかと。
 とはいうものの、どちらかと言えば『キリング・イヴ』は「信頼できない語り手」が主役のサイコスリラーに近い感じなので、たとえばA・J・フィン『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』とか、ポーラ・ホーキンズ『ガール・オン・ザ・トレイン』とかを連想したほうがいいのかも。どちらも「いったい、この先どうなっちゃうんだよ、この話?!」と、ハラハラドキドキしたい人向けでして、そのへんが『キリング・イヴ』と同質なのではないかと~。

堺 三保(さかい みつやす)
  1963年大阪生まれ。『SFマガジン』、『映画秘宝』等に記事書いてます。また、訳書近刊にコミックス『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション)。設定考証を担当したテレビアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランクス』が2018年1月から放送中。同じく設定部分を担当したアニメ映画『ニンジャバットマン』も2018年6月15日(金)劇場公開。
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