アメリカのベストセラー・ランキング

3月31日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女キヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 2. WOLF PACK    New!

C.J. Box C・J・ボックス

ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズの第19作。ピケットは女性猟区管理官ケイトリンとチームを組み、友人の鷹匠ネイトの力を借りて、野生動物を脅かすドローンを操縦していた老人を突きとめたが、その人物は証人保護プログラムの保護下にあった。やがて「狼の群れ」と呼ばれる殺し屋の一団が近辺をうろつきはじめる。

 

  1. 3. CEMETERY ROAD    Down

Greg Iles グレッグ・アイルズ

アメリカ南部の人種差別を題材にしたナチェズ3部作の作者によるスタンドアローンのスリラー。ワシントンDCでジャーナリストとして活躍していたマーシャルは、父の死期が近いことを知って故郷のミシシッピに戻る。が、生まれ育った町は変わり果て、地元の実力者たちに牛耳られていた。さらにそこへ殺人事件が発生し、マーシャルは町のために調査に乗り出す。

 

  1. 4. DAISY JONES & THE SIX    Down

Taylor Jenkins Reid テイラー・ジェンキンズ・リード

架空のロックバンドの誕生から解散までをオーラルヒストリーの形で綴った小説。バンドのザ・シックスはデイジーをリードシンガーとして迎えたのをきっかけに、60年代後半から70年代前半にかけて人気を博すが、やがてメンバーのあいだに確執が生まれていく。

 

  1. 5. THE SILENT PATIENT    Up

Alex Michaelides アレックス・マイケリデス

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のガブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたガブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。

 

  1. 6. SILENT NIGHT    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

9歳の少女エマは人気の子役として活躍していたが、交通事故で母を失い、自身も脳に深刻な損傷を負って言語能力と記憶を失ってしまう。伯母であり精神科医でもあるホイットニーはエマを引きとり、医師たちの力を借りながら、姪が生きる気力を取りもどせるように奮闘する。

 

  1. 7. THE CHEF    Down

James Patterson and Max DiLallo ジェイムズ・パタースン、マックス・ディラロ

ニューオリンズ市警のケイレブ・ルーニー刑事は、フードトラック「キラー・シェフ」で人気を集める腕利きの料理人でもある。だがある事件の捜査中、正当防衛を装い不当に容疑者を射殺したとの嫌疑をかけられることに……ベストセラー作家によるスタンドアローンの新作スリラー。

 

  1. 8. THE LAST ROMANTICS    Down

Tara Conklin タラ・コンクリン

フィオナ・スキナーは詩人として成功していたが、重い過去を背負っていた。父は心臓発作によって30代の若さで死に、母は3年にわたって重いうつ病を患い、一男三女の子供たちは自力で生活しなければならなかった。2079年から過去を振り返る形で、家族のドラマが描かれる。

 

  1. 9. THE ISLAND OF SEA WOMEN    Stay

Lisa See リサ・シー

韓国の済州島で暮らすミジャとヨンスクは海女としての人生をはじめる。親友同士でありながら、ミジャは対日協力者の娘、ヨンスクは海女の長の娘と、その境遇はまったくちがっていた。日本による植民地化、第二次世界大戦、朝鮮戦争とつづく激動の時代に生きたふたりを描く。

 

  1. 10. THE BORDER    Stay

Don Winslow ドン・ウィンズロウ

米国麻薬取締局(DEA)捜査官アート・ケラーと麻薬王アダン・バレーラとの壮絶な闘いを記した『カルテル』の続編。血と暴力の麻薬戦争、犯罪捜査、政治的な駆け引きと権力の腐敗を描き、2005年刊行(邦訳は2009年)の『犬の力』にはじまる三部作を締めくくる。

 

 

【まとめ】

動きの少ない週となり、新たにランクインしたのは2位の1作品のみでした。C・J・ボックスの猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズは、1作目の『沈黙の森』から近年の『狼の領域』、『冷酷な丘』、12作目にあたる『鷹の王』まで、11作品が講談社文庫より刊行されています。今回の作品には女性猟区管理官ケイトリンが登場しますが、舞台であるワイオミング州に実在のモデルがいるそうです。ベストテン外では、13位にクリスティン・フィーハンによるパラノーマル・ロマンスのゴーストウォーカーズ・シリーズ最新作“TOXIC GAME”がはいりました。

 

 

  1. 佐藤桂(さとう けい)

    神奈川在住の翻訳者です。「RE:THINK――答えは過去にある」(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)、『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳、角川文庫)など。