アメリカのベストセラー・ランキング

4月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女キヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 2. SOMEONE KNOWS    New!

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

アリー・ガーヴィーは、不安に苛まれながら、昔の友人の葬儀に参列するために郷里に向かっていた。葬儀に出れば、恐ろしい秘密を共有するふたりの友人と顔を合わせなければならない。20年前、ティーンエイジャーの悪ふざけから起こった悲劇。捕まることはなかったが、秘密を抱えて生きる人生は、終身刑と変わりがなかった。罪と向かいあう決意をしたアリーを、予想だにしない結末が待ち受ける。

 

  1. 3. LOST ROSES    New!

Martha Hall Kelly マーサ・ホール・ケリー

イライザ・フェリデーは、ある夏パリで、ロマノフ朝王家の一族であるソフィと出会い、意気投合する。イライザはロシアを訪れ、ソフィの案内で煌びやかな帝国の文化を満喫するが、第一次世界大戦が勃発し、イライザはアメリカに戻り、ソフィも田舎の領地へ疎開することに。やがて、ロシア革命が起こり、イライザは、ソフィたちの亡命を助けるために奔走する。暗い時代を生き抜いた女たちの友情の物語。

 

  1. 4. THE CORNWALLS ARE GONE    Down

James Patterson and Brendan DuBois ジェイムズ・パタースン、ブレンダン・デュボイズ

米陸軍情報将校のエイミー・コーンウォールの夫と娘が何者かに連れ去られた。ふたりの命と引き換えに犯人が要求してきたのは、ある囚人の居場所を突きとめ脱獄させること。しかし、そのためには法を犯さなければならない。与えられた時間は48時間。エイミーは選択を迫られる。ヒットメイカー、ジェイムズ・パタースンによる緊迫のスリラー。

 

  1. 5. TWO WEEKS    New!

Karen Kingsbury カレン・キングズベリー

バクスター家の人々を主人公とする新シリーズの第5作。アシュリー・バクスターの息子コールは、高校最後の学期に出会ったエリーズに、ひと目で心惹かれるが、彼女は妊娠していた。コールは、大学進学をあきらめてエリーズと結婚し、他人の子どもを育てる覚悟を決めるが、エリーズは、子どもを養子に出すことを決意。だが、養子の同意撤回期限の2週間が迫り、エリーズは予想外の決断を下す。

 

  1. 6. RUN AWAY    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

ウォール街のエリート金融マン、サイモンは大学をやめて家出した娘ペイジがセントラルパークにいるのを見つけ、連れ帰ろうとして、娘と一緒にいたアーロンという男を殴ってしまう。通行人にその場面の動画を撮られてインターネットで拡散されるなか、アーロンが死体で発見されたことから、サイモンには殺人の容疑がかけられる。

 

  1. 7. THE TALE TELLER    New!

Anne Hillerman アン・ヒラーマン

警察を退職し、探偵となったジョー・リープホーンは、ナバホの美術館から盗まれた貴重な衣装の行方を追っていたが、容疑者が不審な死を遂げ、何者かに警告を受ける。一方で、ナバホ族警察のジム・チーと妻のバーナデット・マヌエリートも、強盗事件の捜査中に死体を発見。一見関連性のないふたつの事件は、捜査が進むにつれ交差していく。父トニイの「リープホーン&チー」シリーズを継承するアン・ヒラーマンによるシリーズ第5作。

 

  1. 8. CELTIC EMPIRE    Down

Clive Cussler and Dirk Cussler クライブ・カッスラー、ダーク・カッスラー

NUMA(国立海中海洋機関)のダーク・ピットが活躍するシリーズの第25作。デトロイト川に沈んだタンカーを調べていたNUMAのダイバーが死亡。ピットらの調査で、微生物を使った事故現場の浄化をうたうバイオ企業の関与が浮上するが、その背後には古代エジプトの疫病にからむ恐るべき陰謀が隠されていた――

 

  1. 9. THE SILENT PATIENT    Down

Alex Michaelides アレックス・マイケリデス

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のガブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたガブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。

 

  1. 10. METROPOLIS    New!

Philip Kerr フィリップ・カー

1928年の夏。第一次大戦後の混乱期にあったベルリンの街は、犯罪で溢れていた。ベルンハルント・グンターは、その才能を見込まれて、ベルリン警察の刑事課に配属される。後に、数々の難事件を解決する、探偵ベルンハルント・グンターのキャリアの始まりを描いたシリーズ最新作。作者の死によって、最終作となった。

 

【まとめ】

1位のデリア・オーエンズは変わりませんが、新作は5作入りました。その他は少しずつ順位を下げています。2位は、《女性だけの弁護士事務所ロザート・アンド・アソシエイツ》シリーズ等で、本リストにもたびたび登場するリザ・スコットラインのスタンドアロンミステリー。3位のマーサ・ホール・ケリーは、デビュー作“LILAC GIRLS”で、強制収容所のトラウマに苦しむポーランド女性たちのために尽力した実在の人物キャロライン・フェリデーを描き、ミリオンセラー作家になりましたが、今回はその母親イライザの物語です。5位のキングズベリーは、3作品が邦訳刊行されている“赤い手袋の奇跡”シリーズの作者で、今回の作品はバクスター家の人々を主人公にした新シリーズの第5作。7位のアン・ヒラーマンは、元々ノンフィクションを手がけていましたが、亡き父トニイ・ヒラーマンが書きつづけた「リープホーン&チー」シリーズを引き継ぎ、“Spider Woman’s Daughter”(2013年刊行)で、ミステリー作家としてデビュー、本作は5作目です。10位は、フィリップ・カーが死の直前に書き上げたベルリン三部作の続編。探偵ベルンハルント・グンターを主人公にしたこのシリーズは、ベルリン三部作(翻訳は東江一紀氏)と続編を合わせて8作の邦訳が刊行されています。

 

  1. 服部理佳(はっとり りか)

    翻訳者。訳書に『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ(あなたがくれた憎しみ)』(岩崎書店)など。

    記念すべき第十回翻訳ミステリー大賞&読者賞を受賞したのは『カササギ殺人事件』でした。年末ミステリーランキング全制覇に引き続き、このダブル受賞。「怪鳥カササギ」、正に、向かうところ敵なしですね。おめでとうございます!