アメリカのベストセラー・ランキング

8月4日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. THE NEW GIRL    New!

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズ第19作。スイスのプライベートスクールに留学していたサウジアラビアの皇太子の娘が誘拐された。娘の命を救うため、皇太子は王室とイスラム過激派とのつながりを断ち切ると約束し、ガブリエルに協力を求める。

 

  1. 2. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 3. THE NICKEL BOYS    New!

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

1960年代のフロリダ。感化院ニッケル・アカデミーでは、矯正の名のもとに少年たちへの身体的、精神的、性的虐待が日々繰り返されていた。そして少年が黒人である場合にはその程度はさらにひどく……。『地下鉄道』の著者が、黒人少年ふたりの友情と成長を通して描く、不平等が遍在するジム・クロウ法時代のアメリカ。

 

  1. 4. UNDER CURRENTS    Down

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

ノースカロライナのブルーリッジ山脈の町で、なんの不自由もない幸せな子ども時代を送ったかに見えるゼイン。成長して弁護士事務所を開くために故郷にもどったゼインは、風景画家のダービーと出会って意気投合し、それぞれが抱える辛い過去に立ち向かう。

 

  1. 5. SUMMER OF ’69    Down

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

夏の休暇をナンタケット島で過ごすのがレヴィン家の恒例行事だが、1969年の夏はそうもいかないようだった。19歳の長男がベトナムに送られ、母はアルコールに逃げるようになっていた。また、双子を妊娠中の24歳の長女、21歳のヒッピーの次女、13歳の思春期の三女もそれぞれ問題を抱えていた。

 

  1. 6. WINDOW ON THE BAY    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シアトルの病院で集中治療室の看護師の仕事をしながら、ふたりの子どもの世話に身を捧げてきたシングルマザーのジェナだったが、子どもたちが大きくなって、ふたたび人生と向き合うことに。離婚から20年、あらたな恋にも期待を抱くが、別れた夫と同じ外科医であるローワンとの交際にいまひとつ積極的になれずにいたところ、思わぬ知らせがもたらされる。

 

  1. 7. EVVIE DRAKE STARTS OVER    Up

Linda Holmes リンダ・ホームズ

離婚を決意した矢先に夫を交通事故で亡くしたエヴィーは、スランプに苦しみ野球を離れた元メジャーリーグ投手のディーンに部屋を貸すことになる。大家と店子の関係からほどなく友人となったふたりのあいだには、やがて友情以上の感情がめばえ……米ナショナル・パブリック・ラジオのポップカルチャー評論で知られる著者の小説デビュー作。

 

  1. 8. CITY OF GIRLS    Down

Elizabeth Gilbert エリザベス・ギルバート

1940年、大学をドロップアウトした19歳のヴィヴィアンは、マンハッタンの叔母のもとでうらぶれた劇場の運営を手伝いながら、演劇の世界でさまざまな出会いを経験する。95歳になったいま、ヴィヴィアンは人生を振り返る。

 

  1. 9. BACKLASH    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第19作。ハーヴァスの元上司と妻が殺害され、本人も拉致されて拷問を受ける。さらなる尋問のためにロシアへ移送される途中、飛行機が墜落し、ハーヴァスは一命をとりとめるものの、極寒の原野で生き延びるための戦いを強いられる。

 

  1. 10. MRS. EVERYTHING    Stay

Jennifer Weiner ジェニファー・ウェイナー

1950年代のデトロイトに生まれた、勝気なジョーとお洒落に夢中なベシーの姉妹。時代の波に翻弄されたふたりの人生は思いもよらない軌跡をたどる。公民権運動、ベトナム戦争、ウーマンリブ――社会の激変のなかで生き方を模索する姉妹の70年を描く。『イン・ハー・シューズ』の作者による長篇第13作。

 

【まとめ】

今週は3作品があらたにトップテン入りしました。1位のダニエル・シルヴァは、毎年夏の刊行が続いている人気シリーズ。昨年のこの時期におなじく1位に初登場した前作“THE OTHER WOMAN”が『赤の女』としてハーパーコリンズ・ジャパンより今年5月に翻訳刊行されています。3位にはピューリッツアー賞、全米図書賞をはじめ多数の賞を受け話題を呼んだ『地下鉄道』(早川書房)のコルソン・ホワイトヘッドの新作が登場。2011年に閉校されるまでフロリダに実在した施設をモデルに書かれた小説とのこと。6位には、シーダー・コーヴ・シリーズなどで知られる人気作家デビー・マッコーマーの単発作品がランクインしました。

その他、14位にリンダ・カスティロ、15位にマーク・グリーニーの新作が登場しています。

 

  1. 吉井智津(よしい ちづ)

    翻訳者。訳書にナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―』(東洋館出版社)など。