アメリカのベストセラー・ランキング
8月18日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. WHERE THE CRAWDADS SING Up
Delia Owens デリア・オーエンズ
1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。
- 2. ONE GOOD DEED Down
David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ
1949年、退役軍人のアロイシャス・アーチャーはカルデロック刑務所から仮釈放され、ポカ・シティに向かう。すぐに地元の有力なビジネスマン、ハンク・ピットルマンのところで借金回収の仕事をすることになるが、殺人事件が起こり、アーチャーは警察から疑いの目を向けられる。バルダッチが生み出した、新たなアンチ・ヒーローの活躍。
- 3. THE NICKEL BOYS Stay
Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド
1960年代のフロリダ。感化院ニッケル・アカデミーでは、矯正の名のもとに少年たちへの身体的、精神的、性的虐待が日々繰り返されていた。そして少年が黒人である場合にはその程度はさらにひどく……。『地下鉄道』の著者が、黒人少年ふたりの友情と成長を通して描く、不平等が遍在するジム・クロウ法時代のアメリカ。
- 4. THE NEW GIRL Stay
Daniel Silva ダニエル・シルヴァ
美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズ第19作。スイスのプライベートスクールに留学していたサウジアラビアの皇太子の娘が誘拐された。娘の命を救うため、皇太子は王室とイスラム過激派とのつながりを断ち切ると約束し、ガブリエルに協力を求める。
- 5. DARK AGE New!
Pierce Brown ピアース・ブラウン
火星の最下層出身のダロウは、かつて反乱を起こして民主的な共和国を打ちたてたが、いまは国を追われ、私兵を率いて紛争に明け暮れている。一方、旧帝国の後継者が派閥を結集しはじめ、ダロウの妻が統治する共和国に危機が迫る。新旧さまざまな勢力が入り乱れ、世界はあらたな暗黒の時代を迎えるのか……。壮大なSFサーガ、レッド・ライジングシリーズの第5弾。
- 6. SUMMER OF ’69 Stay
Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド
夏の休暇をナンタケット島で過ごすのがレヴィン家の恒例行事だが、1969年の夏はそうもいかないようだった。19歳の長男がベトナムに送られ、母はアルコールに逃げるようになっていた。また、双子を妊娠中の24歳の長女、21歳のヒッピーの次女、13歳の思春期の三女もそれぞれ問題を抱えていた。
- 7. LABYRINTH New!
Catherine Coulter キャサリン・コールター
夫婦捜査官サビッチとシャーロックが活躍するFBIシリーズの23作目。シャーロックは衝突事故のはずみで人をはねてしまう。被害者はCIAのアナリストだとわかるが、シャーロックの意識がもどったときには姿を消していた。一方、サビッチは一連の女性誘拐殺人事件の捜査に乗り出すが、犯人は地元有力者の親族で超能力を持ち、しかも事件には例の消えたCIAアナリストもかかわっているとわかる。
- 8. CHANCES ARE New!
Richard Russo リチャード・ルッソ
大学で同窓だった3人の男がそれぞれちがう人生を歩み、60代になって旧交をあたためあう。しかし、当時3人が恋心をいだいていたジェイシーの失踪が、それぞれの脳裏から消えたことはなかった。ジェイシーに何があったのか。一同が記憶をたどるうちに、遠い過去が現在の友情と人生を脅かしはじめる。
- 9. UNDER CURRENTS Down
Nora Roberts ノーラ・ロバーツ
ノースカロライナのブルーリッジ山脈の町で、なんの不自由もない幸せな子ども時代を送ったかに見えるゼイン。成長して弁護士事務所を開くために故郷にもどったゼインは、風景画家のダービーと出会って意気投合し、それぞれが抱える辛い過去に立ち向かう。
- 10. CITY OF GIRLS Down
Elizabeth Gilbert エリザベス・ギルバート
1940年、大学をドロップアウトした19歳のヴィヴィアンは、マンハッタンの叔母のもとでうらぶれた劇場の運営を手伝いながら、演劇の世界でさまざまな出会いを経験する。95歳になったいま、ヴィヴィアンは人生を振り返る。
【まとめ】
3作品が新しくトップテン入りしました。今週2位のバルダッチですが、先週は初登場で1位に輝きました。5位のレッド・ライジングシリーズは『レッド・ライジング 火星の簒奪者』、『レッド・ライジング2 黄金の後継者上・下』と2作目まで邦訳されています。7位のFBIシリーズは、ロマンチックサスペンスとして着実に邦訳が進んでいて、今月の21日には最新刊『誘発』(原題NEMESIS)が発売予定です。8位のルッソは映画化と邦訳もされた『ノーバディーズ・フール』に代表されるように、ユーモアとあたたか味が定番の作家ですが、今回の作品はサスペンスと緊張が加わった新境地のようです。
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唐木田みゆき(からきだ みゆき)
翻訳者です。訳書はJP.ディレイニー『冷たい家』、ジョナサン・エイムズ『ビューティフル・デイ』、アンドリュー・メイン『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』、グレアム・ムーア『訴訟王エジソンの標的』。