アメリカのベストセラー・ランキング

9月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. A BETTER MAN    New!

Louise Penny ルイーズ・ペニー

ガマシュ警部シリーズ第15作。ケベック州警察殺人課に復帰したガマシュのもとに、妊娠中の娘が失踪したという男が相談に訪れ、暴力亭主が娘を殺したのではないかと訴える。一方スリーパインズ村では、近づく嵐で川があふれ洪水になる恐れがあると、土嚢を積んだり避難準備をしたりと住人たちは大騒ぎ。その川底から女の死体が発見され――

 

  1. 2. WHERE THE CRAWDADS SING    Down

Delia Owens デリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。

 

  1. 3. THE GIRL WHO LIVED TWICE    New!

David Lagercrantz ダヴィド・ラーゲルクランツ

故スティーグ・ラーソンのミレニアム3部作をダヴィド・ラーゲルクランツが書き継ぐミレニアム・シリーズの通算6作目。手足の指が欠損した小柄な男が死体で発見され、そのポケットからミカエルの電話番号のメモが見つかる。リスベットの協力を得て死んだ男の身元を探るうち、スウェーデン政府高官が過去に遭遇したエヴェレスト登山事故との関連が浮上する。

 

  1. 4. THE DARK SIDE    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

子供のころに難病の妹を亡くしたゾーイは、結婚して娘が生まれると、完璧な母親になろうと決意する。だが、やんちゃな娘ジェイミーは、生後数カ月からたびたび怪我をして病院に運ばれ、心配するゾーイの夫の心にはある恐ろしい疑念が頭をもたげはじめる。

 

  1. 5. THE INN    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

元ボストン市警刑事ビル・ロビンソンは、マサチューセッツの港町で妻の遺した海辺の宿を営んでいた。それぞれに過去を抱えた長期滞在者たちとの交流が心の支えだが、町に現われた麻薬組織の一員によってその平穏は乱される。宿を守るため、ビルと仲間たちは危険な闘いに挑む。

 

  1. 6. ONE GOOD DEED    Down

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

1949年、退役軍人のアロイシャス・アーチャーはカルデロック刑務所から仮釈放され、ポカ・シティに向かう。すぐに地元の有力なビジネスマン、ハンク・ピットルマンのところで借金回収の仕事をすることになるが、殺人事件が起こり、アーチャーは警察から疑いの目を向けられる。バルダッチが生み出した、新たなアンチ・ヒーローの活躍。

 

  1. 7. THE NICKEL BOYS    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

1960年代のフロリダ。感化院ニッケル・アカデミーでは、矯正の名のもとに少年たちへの身体的、精神的、性的虐待が日々繰り返されていた。そして少年が黒人である場合にはその程度はさらにひどく……。『地下鉄道』の著者が、黒人少年ふたりの友情と成長を通して描く、不平等が遍在するジム・クロウ法時代のアメリカ。

 

  1. 8. THE TURN OF THE KEY    Down

Ruth Ware ルース・ウェア

ローワン・ケインは、スコットランドの田舎町の屋敷に住み込みの家庭教師として赴任する。多額の報酬、スマートホーム化された豪邸、感じのいい夫妻と娘たち――理想的に思えた仕事は、じきに悪夢へ変わる。娘のひとりを殺害した容疑で逮捕されたのだ。獄中から無実を訴えるローワンの手紙によって、屋敷での真相が明かされていく。

 

  1. 9. THE SILENT PATIENT    Up

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のガブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたガブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。

 

  1. 10. OLD BONES    Down

Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

サンタフェの考古学者ケリーは、1846年から47年の冬にかけてシエラネバダ山脈で開拓民の一団が遭難した事件の現地調査を打診される。この一団はドナー隊と呼ばれ、飢えをしのぐために人肉食をおこなったことで知られているが、犠牲者の日記が発見されたおかげで、冬営地の正確な場所が突き止められそうだという。ケリーは調査を引き受けるが、現地で見つかったものは人肉食の痕跡だけにとどまらなかった。

 

【まとめ】

1位、3位、4位に新作が入りました。初登場1位に輝いたのはガマシュ警部シリーズの最新作。邦訳はシリーズ第4作までで止まっていますが、年に1冊のペースで着実に刊行されつづける長寿シリーズとなっています。3位に入ったミレニアム・シリーズは、第5作の邦訳『ミレニアム5 復讐の炎を吐く女』(早川書房)が2017年12月に刊行されています。なお、ラーゲルクランツは本作をもってミレニアム・シリーズの執筆を終了するとの噂が。別の作家がさらに続編を書くという話もささやかれており、シリーズの今後が気になるところです。9位には今年2月発売のロングセラー“THE SILENT PATIENT”が久々のトップテン入り。邦訳の『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)が9月5日に発売になったばかりです。また、当欄がお休みだった先週のランキングで2位に初登場した“OLD BONES”が今週は10位に入っています。こちらはFBI特別捜査官ペンダーガスト・シリーズの著者コンビによる、考古学者を主人公に据えた新たなシリーズの第1弾とのことです。

 

  1. 満園真木(みつぞの まき)

    東京在住の翻訳者。訳書はリサ・ガードナー『無痛の子』、『棺の女』(ともに小学館文庫)、ヴィンセント・ディ・マイオ、ロン・フランセル『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(東京創元社)、バリー・ライガ〈さよなら、シリアルキラー〉シリーズ(創元推理文庫)など。