第3回「アメリカ版浅見光彦?」

 さて今回は、今アメリカで人気上昇中の新作ミステリドラマと、その第一話にゲスト出演した大物作家たちについて、紹介したいと思います。

 その新番組のタイトルは『キャッスル』。ニューヨークを舞台に、売れっ子ミステリ作家とニューヨーク市警の美人刑事が、毎回難事件に挑むという、しゃれた雰囲気の作品です。てか、アメリカ版浅見光彦?

 主人公のリック・キャッスルは、ベストセラーを連発しているミステリ作家。

 第1話では、自作の内容を模した犯行現場を残す連続殺人事件が発生、情報源として捜査に協力し、見事犯人逮捕に貢献したキャッスルは、市長に直談判して、次回作のリサーチと称して、ニューヨーク市警の捜査にオブザーバーとして加わることになる、というのが大まかな設定。

 やたらと物知りで推理力抜群(でも、その根拠はいつも「ストーリーとしてどこかおかしい」だったりする)なれど、ちゃらちゃらと名士風をふかしがちなキャッスルと、実はキャッスルの小説のファンだったのに、本人にしゃしゃり出てこられて迷惑顔のコワモテ美人女刑事ベケットの二人を中心に、父親のキャッスルとは似ても似つかないマジメな一人娘、キャッスル以上に生活が派手な彼の母といったメンバーが繰り広げる「かるーーーい」都会派ミステリなのです。

 ミステリとして見るべきところはほぼ皆無。登場人物のキャラが楽しめれば、けっこう見ていられるかも。要は『こちらブルームーン探偵社』や『探偵レミントン・スティール』みたいな路線だと思ってください。

 でここからが今回の本題なんですが、第1話には、キャッスルの作家仲間としてスティーヴン・J・キャネルとジェイムズ・パタースンが本人役でゲスト出演してたんですね。

 ジェイムズ・パタースンといえば、『多重人格殺人者』に始まる黒人刑事「アレックス・クロス」シリーズや、『1番目に死がありき』に始まる「女性殺人捜査クラブ」で、日本のミステリファンにもお馴染みだと思いますが、スティーヴン・J・キャネルの名前はあまり知られていないかも。

 キャネルは、実は元々はテレビドラマ界のプロデューサー兼脚本家で、七〇年代に『ロックフォードの事件メモ』、八〇年代に『特攻野郎Aチーム』という大ヒットを飛ばした大物なのです。

 九〇年代以降は、小説家としても活躍するようになり、『陰謀』や『マフィアをはめろ!』といった作品を発表しています。

 もっとも、これら単発作品よりは、二〇〇一年の『追われる警官』から始まった「シェーン・スカリー」シリーズのほうが、本人の資質に合ってる気がするんですけど、二作目以降が未訳のままなのがちょっと残念です。

 で、話をこの二人の登場場面に戻すと、この二人とキャッスルとでポーカーしながら、事件の話をしてるという設定でした。

 でもって、キャッスルは、二人のアドバイスを受けて事件の真相に気づくんですよ。でも、このアドバイスがメチャクチャなんですよね。

「その話がそこで終わりってか? そんなプロットはダメだよ」

「そうそう。ひねりが全然ないじゃないか。そんな単純な話はおかしいだろ」

 とかなんとか、あくまで「小説のプロットとしておかしい」って言い張るんですよ、この爺さんたち。

 てか、そのヒントで事件の真相を推理するって、どんなミステリドラマだよ(笑)。

 ちなみに、パタースンもキャネルも、けっこう芝居が自然で台詞回しも良かったのが印象的でした。

 二人とも、おもしろいお爺ちゃんだなあ。

 堺三保