アメリカのベストセラー・ランキング
11月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE GUARDIANS New!
John Grisham ジョン・グリシャム
フロリダで弁護士が射殺される事件が起こり、かつての依頼人だったミラーという若い黒人が逮捕される。ミラーは有罪判決を受けるが、その後も22年にわたって獄中から無実を訴えつづけていた。冤罪被害者の救済活動をおこなっている牧師にして弁護士であるカレン・ポストは、ミラーの支援に乗り出す。
- 2. WHERE THE CRAWDADS SING Stay
Delia Owens デリア・オーエンズ
1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイヤは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。
- 3. THE 19TH CHRISTMAS Down
James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ
女性殺人捜査クラブ・シリーズ第19作。サンフランシスコ市警のリンジー・ボクサーは、“ローマン”と呼ばれる人物がクリスマスに大事件を起こす計画を立てているという情報を手に入れる。リンジーは計画を阻止しようとするが、何者かがさまざま手を使って捜査を攪乱する。
- 4. THE WATER DANCER Up
Ta-Nehisi Coates タナハシ・コーツ
南部の黒人奴隷ハイラム・ウォーカーは子供のころ母親と引き離され、その記憶を封印して生きてきた。ある日、川で溺れそうになったとき、水を介して瞬間移動する自分の不思議な力に気づく。死の淵から生還したハイラムは、奴隷解放運動に参加し、その霊力で家族や仲間を救おうとするが、力を操るには母親との思い出をたどる必要があった。全米図書賞受賞作『世界と僕のあいだに』で人種差別問題を投げかけたあと、著者コーツがはじめて書いた小説。
- 5. THE INSTITUTE Stay
Stephen King スティーヴン・キング
侵入者に両親を殺され、真夜中に自宅から連れ去られた12歳の少年ルーク。目覚めると、きのうまで暮らした自分の部屋とそっくりだが窓のない部屋にいた。そこはある邪悪な目的をもった施設で、ルークのほかにも子どもたちが何人も集められていた。そしてその子たちに共通していたのは、全員がテレパシーやテレキネシスといった特殊能力をもっていることだった。
- 6. OLIVE, AGAIN New!
Elizabeth Strout エリザベス・ストラウト
ピューリッツァー賞を受賞した『オリーヴ・キタリッジの生活』の続編。父の死を受け入れようとする少女。出産を控えた女。学生時代の秘めた恋を告白する看護師。遺産を相続したくない弁護士。小さな港町クロスビーに暮らす人々に、傍若無人な数学教師オリーヴがかかわっていく。
- 7. THE DUTCH HOUSE Stay
Ann Patchett アン・パチェット
瀟洒な屋敷〈ダッチハウス〉で何不自由なく暮らす二人の子供、姉ミーブと弟ダニー。あるとき継母がやってきて二人は屋敷から追われてしまう。それから数十年、つらい生活のなかで姉弟は分かちがたい絆で結ばれる一方、二度ともどれない家へと何度となく引き寄せられていく。家族の離散と過去への執着の物語。
- 8. THE TESTAMENTS Stay
Margaret Atwood マーガレット・アトウッド
環境破壊などで極端な少子化が進んだ近未来、子を産むためだけに支配層に仕える“侍女”たちの世界を描いたベストセラー・ディストピア小説『侍女の物語』(ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』原作)の続編。前作からさらに15年後の世界を、独裁国家ギレアデの内側と外側にいる3人の女性の視点から描く。2019年度ブッカー賞受賞作。
- 9. NINTH HOUSE Down
Leigh Bardugo リー・バーデュゴ
アレックスは高校を中退し、ドラッグの売人をしているボーイフレンドたちと過ごしていたが、殺人事件に巻きこまれて瀕死の重傷を負う。病院のベッドで、アレックスは奇妙な申し出を受けた。イェール大学に入れてやる、その代わり、ゴーストを見ることができる持ち前の特別な能力を生かせと言われたのだ。そうしてアレックスはイェール大学の1年生になった。YA小説で知られる著者がはじめて大人向けに書いたファンタジー作品。
- 10. THE GIVER OF STARS Stay
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ
1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。
【まとめ】
新作は2作のみと、動きの少ない週でした。初登場で首位となったのは、グリシャムの王道リーガル・サスペンス。冤罪被害者を生みやすいアメリカの司法制度の闇を描き出した作品として、好評を博しています。最近の邦訳には、今年7月に刊行された『危険な弁護士』があります。6位には、寡作ながらも巧みな心情描写で人気の高いストラウトの新作が登場しました。『オリーヴ・キタリッジの生活』は全4話のミニシリーズとしてドラマ化され、エミー賞を受賞しています。そのほかの邦訳に『私の名前はルーシー・バートン』や『何があってもおかしくない』など。トップテン外に目立った動きはありませんでした。
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青木創(あおき はじめ)
翻訳者。訳書にJ・ハーパー『潤みと翳り』、L・チャイルド『ミッドナイト・ライン』、S・P・トンプソン『脳科学者が教える本当に痩せる食事法』など。