第7回「スパイ転じてよろずトラブル解決業に」
今回ご紹介するのは、日本でもCS放送のみならずDVD化も開始されて、認知度アップ中のトラブルシューターもの「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」です。
主人公のマイケル・ウェスティンは、元はアメリカ政府の秘密機関に所属していた凄腕スパイ。ところが、ある日突然、解雇通知(バーン・ノーティス)を突きつけられたうえ、生まれ故郷のマイアミに強制送還されてしまいます。
経歴は抹消、財産は没収、しかもFBIの監視つきという状況で、マイケルはとにかく食べていくために隣人や知人のトラブル処理業めいた仕事を始め、なんとか生活費を稼ぎながらも、自分が突然解雇された理由を探ろうとします。
ところが、毎度毎度舞い込む事件がどれもこれも一筋縄ではいかない面倒なものばかり。マイケルはスパイとして鍛え上げた諜報や破壊工作の腕前を駆使して、これを解決していくのでした……。
というわけで、私立探偵のようで私立探偵でなく、警察も手の出せない揉め事を解決するトラブルシューターという、「特攻野郎Aチーム」を現代風にスマートにしたような作風が持ち味なのがこのドラマ。
主人公のマイケルがモノローグで「こういうときスパイは……」と蘊蓄を語りながら、いろんなテクニックを紹介しつつ、敵を翻弄してみせるくだりは、痛快そのもの。
主人公に扮するジェフリー・ドノヴァンは、映画では悪役の多い、けっこう影のあるにいちゃんで、それが凄腕のスパイという設定に説得力を与えると共に、けっこうお人好しで情にもろいという主人公の二面性を軽妙に演じていて好キャスティングな感じ。
毎回、風光明媚なマイアミの景色と共に、派手なアクションと軽妙な会話を、頭をからにして楽しめる娯楽アクションですので、アクション派の方にはお奨めの一作です。
さて、この手の、元軍人やスパイが、市井の生活を送る中で、事件に巻き込まれ、やむにやまれずかつての腕前を披露して活躍するという設定は、アメリカのミステリではお馴染みのモノですよね。
日本でもお馴染みのキャラといえば、最近だとやはり、
スティーヴン・ハンターの『極大射程』、『狩りのとき』、『ブラックライト』、『四七人目の男』、『黄昏の狙撃手』などに登場する超絶スナイパー、ボブ・リー・スワガーでしょうか。
でも、この手のヒーローで筆者の最近のお気に入りは、リー・チャイルドの『キリング・フロアー』、『反撃』、『前夜』などに登場する元軍人、ジャック・リーチャーだったりします。
軍人一家に育ち、自分も軍隊に入って暮らしたせいで、それ以外の生活をあまり知らずに大人になり、退役すると共にそれまでの反動でか、自由気ままな風来坊となってしまった主人公の、一人飄々と「我が道をいく」スタイルがとても気に入っているのでした。
日本ではまだ三作しか訳されていませんが、アメリカ本国ではこの春すでに十四作目が発表された超人気シリーズなのです。どんどん、翻訳されないかなあ。
堺三保