今回の大震災には本当に心が痛みます。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々におかれましては、一日も早い復旧と復興をお祈りいたします。

 心痛むニュースや悲惨な映像が連日つたえられるなか、各国から差しのべられる支援の手は、実に心強いものがあった。なかでもアメリカは原子力空母ロナルド・レーガンを中心とする救援艦隊の派遣を即座に決断するなど、すばやい対応ぶりを見せた。この原稿を書いているあいだにも、真水を積んだ米軍のはしけが福島の原発に向かっている。

 しかし、八〇年代に青春をすごした世代にとって、まさかロナルド・レーガンという名前の空母に日本が助けられる日がくるとは思ってもみなかったというのが偽らざる心境だ。〈バック・トゥ・ザ・フューチャー〉のドクがこれを聞いたらどういうだろうか?

 折しも、地球の反対側ではその八〇年代に世界の注目を浴びた一隻の空母がその生涯を終えようとしている。フォークランド戦争で活躍した英国海軍の空母インヴィンシブルだ。すでに退役し、艦内の装備をはぎ取られたうえで、三月二十四日、スクラップにされるためトルコへ曳航されていった。ちなみに、戦争に参加したもう一隻の空母ハーミーズは艦齢50年になるのに、インドに売却されて、ヴィラートという名前でいまも現役。

 両空母に搭載されていたシーハリアーVSTOL戦闘機も二〇〇六年に退役。さらにその元となったハリアー攻撃機も昨年末に英軍から退役した。イギリスは当初その更新にF−35ライトニング�戦闘機の短距離離陸垂直着陸型を導入する計画だったが、結局、通常離着陸型を採用することになった。これで少なくともイギリスでは垂直に着陸できる固定翼機の血統がとだえることになる。これも時代の流れとはいえ、一抹の淋しさをおぼえずにはいられない。

村上和久(むらか みかずひさ)1962年生まれ。ミステリ&ミリタリー両分野で翻訳に従事するかたわら、北島護名義で軍装関係の翻訳も手がけ、現在「ミリタリー・クラシックス」誌で連載中。最近刊はフォーデン『乱気流』