第26回 イギリスのドラマならではの暗くて危ない展開が魅力の『刑事ジョン・ルーサー』

 今年もついに12月になってしまいました。1年間なんてあっというまですな〜。来年こそはもうちょっといろいろがんばろ(ダイエットとかね)。

 さて、今回ご紹介するのは、イギリスの刑事ドラマ『刑事ジョン・ルーサー』です。

 イギリスものにはめずらしく、黒人刑事が主人公なのですが、この人のキャラがとにかく強烈。

 頭脳明晰にして人の心理を読む力に長けた名探偵ながら、強引で型破りな捜査方法が問題視されている異端の刑事で、とある事件で凶悪な連続誘拐殺人犯を殺しかけたという嫌疑を受け、半年間休職していたというのです。

 しかも、仕事にかまけて家庭を顧みなかったあげく、奥さんに出て行かれてしまい、精神的にとても不安定になってしまっているというおまけつき。

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 そんなルーサーが、鋭い推理と大胆な行動で、毎回凶悪な犯罪者たちを追い詰めていく、というのが本筋なのですが、それと並行して、冷酷なサイコパス女、アリス・モーガンとの奇妙な関係も描かれていくのが、このシリーズのおもしろいところ。

 このアリス、第1話から登場するのですが、そのキャラのインパクトはある意味ルーサー以上。なんせ、十代で大学を卒業、天体物理学を研究する天才にして、強烈なナルシスト、他人の生き死にに無頓着な殺人鬼ながら、見た目は可憐とすら言える美女なのです。

 第1話を見終わった時点では、ここからルーサーとアリスとの攻防戦が始まるのではないか、と予想していたのですが、イギリスのミステリドラマがそんなわかりやすい展開をするはずはなく、あれよあれよというまに、定石から外れた予想外の方向に物語は進んでいってしまうのでした。

 いやもう何を言ってもネタバレになっちゃうので、とてもこれ以上は書けませんが、とにかく気になった人は続けて見てよ、と言うしかありません。

 本国イギリスはもちろん、アメリカでも好評を得た本作は、すでに第3シーズンの製作も決定しているとのことで、今後も楽しみな一本です。

 さて、殺人鬼と探偵の奇妙な関係と言えば、やはりかの有名なハンニバル・レクター博士とFBIのクラリス・スターリングを思いだしてしまいます。

『羊たちの沈黙』で邂逅した二人の関係は、『ハンニバル』で驚くべき結末を迎えるわけですが、ジョン・ルーサーとアリス・モーガンの関係はどんな結末を迎えることになるのでしょう?

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

AXNの公式ホームページhttp://mystery.co.jp/program/luther/index.html

第1シーズンの予告編

堺三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。最新刊『キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー』(小学館集英社プロダクション)。

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