第32回 アメリカのコギャルってコワい、とつくづく思わされる「プリティ・リトル・ライアーズ」

 アメリカでは、『トワイライト』シリーズの(原作小説、映画版双方の)大ヒット以降、YA(ヤングアダルト)小説とその映像化が盛んになっています。確か、本連載でも何回か言及したかも。

 すでに『ヴァンパイア・ダイアリーズ』(テレビドラマ化)、『ハンガー・ゲーム』(映画化)など、何本もヒット作が出ているのですが、今回ご紹介する「プリティ・リトル・ライアーズ」もそんな一本であります。

 お話の舞台はアメリカによくある郊外の住宅地、ローズウッド。ある日、そこに住む仲良し女子高校生5人組の一人、アリソンが突然失踪してしまいます。

 それから一年、残された4人の少女たちは、失踪事件以降疎遠になっていたのですが、突然「A」というイニシャルの謎の人物から、それぞれが抱えている誰も知らないはずの秘密について書いたメールが送られてきます。

 最初、4人は、実は生きていたアリソンからのメールだと考えるのですが、時期を同じくしてアリソンの遺体が発見されるのです。

 アリソンを殺したのは誰か? その動機は? 4人にメールを送りつけてくる「A」とは何者なのか? Aの目的は?

 謎が謎を呼び、少女たちは徐々に追い詰められていくのですが……。

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 この作品、なんといっても、女の子たちのキャスティングとかメイクとかがよくできてます。

 完璧な「かわいい」子じゃなくて、ちょっとバランスの悪いというか、エキゾチックな顔立ちの女の子たちを連れてきて、いかにも一癖ありそうなメイクと衣装でキメさせてるんですよねー。

 同世代の男の子にはちょっと太刀打ちできないだろうという感じの「小悪魔」っぽい感じが

 もっとも、4人それぞれの秘密というのが、まあ、大人からしたら小さいことなんですよねえ。確かに「先生とできちゃった」とか「万引きでつかまった」とかは犯罪だけど、それにしたって命がかかるようなことじゃないし。ましてや、「姉の彼氏を取っちゃった」とか「実はレズビアン」とか、実にその、どうでもいいと言いますか。

 でも、そういうことが「絶対の秘密」でなければいけないのが、女子高生というものなのでしょう。

 実は、この、スリラーとしてはある種「ぬるい」ところが、アメリカでの本作の人気の秘密なのかもしれません。

 本作の「主人公たちの秘密を知っている、死んだはずの人間が復讐にやってくる」というシチュエーションは、「ザ・フォッグ」「ラストサマー」といった、スプラッター映画やスラッシャー映画と言われる、ホラー映画のサブジャンルの典型的なプロットだったりします。

 そのシチュエーションを使いつつ、内容をソフトにして(なんせ主役4人は誰も死にません)、主人公の少女たちの日常描写に力を注いで、女の子たちが見やすいようにしてあるというわけです。

 この、「内容をソフトにしてある」ところが、最近ヒットしてる少女向けYAものの共通点なんですよね。『トワイライト』しかり『ヴァンパイア・ダイアリーズ』しかり。逆に言うと、「物足りない」感じがしちゃう男性が多かったりもするわけで、『トワイライト』なんて、悪い吸血鬼と良い吸血鬼と狼男が三つ巴で対決するホラーなのに、映画館はほぼ女性客だけで満席だったりするわけです。

 もっとも、本作の場合、もともとミステリ要素が強いのと、女の子たちがそろって、普通のドラマだとヒロインじゃなくて敵役側っぽい子だちなのが妙にリアルかつ色っぽいんで、男性でも楽しく見ていられる気がします。

 個人的には、4人の中でもヒロイン格のアリア役のルーシー・ヘイルよりも、エミリー役のシェイ・ミッチェルの、ちょっとアジア系が混じっている独特な雰囲気がお気に入りです(おい>自分)。

 なお、サラ・シェパードによる原作は、日本でも『ライアーズ』というタイトルで、4巻目までが翻訳されています。

 ちなみに、原作は最初は全8巻だったのが、テレビドラマの第1シーズンがヒットしたため、新たに4冊追加されたんだそうです。最終刊は今年の年末に刊行予定だとか。

 一方のテレビシリーズのほうも、この夏から第3シーズンがスタート。

 いったいどこまで続くんじゃー、この話? つか、「A」の正体がわかる日は来るのでしょうか?(笑)

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

●日本語版公式サイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/prettylittleliars/mainsite/

●第3シーズン予告編

堺三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。最近の仕事はテレビアニメ『エウレカセブンAO』のSF設定。最新刊は『WE3』(小学館集英社プロダクション)。

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