第36回 正統派英国特殊部隊アクション『反撃のレスキュー・ミッション』

 今月は女性読者ドン引き間違いなしの、男くさいアクションものドラマをご紹介したいと思います。たまには男性読者限定サービスってことでひとつ(笑)。

 作品名は『反撃のレスキュー・ミッション』。第1シーズンは、イギリスの冒険小説作家、クリス・ライアンの同名の小説を原作にしているという、バリバリのアクションものでして、製作もアメリカではなくイギリスのテレビ局です。

 この1シーズン目がイギリスで大人気となり、アメリカのケーブルテレビ局と共同製作でさらにスケールの大きなドラマとして第2シーズン以降が作られることになりました。

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 ところが、第一シーズンで主人公の元SAS(英空軍特殊部隊)隊員ジョン・ポーターを演じているイギリスの人気俳優、リチャード・アーミテイジが、映画版『ホビット』のメインキャストの一人に抜擢されちゃって、第2シーズン以降と撮影スケジュールが思いきりバッティングしちゃって、降板することになってしまいました。

 おかげで、彼は第2シーズン第1話にちらりと登場しただけで退場してしまい、第2シーズン以降は新しい主役コンビが番組を引き継いでいます。

 この新コンビを演じている、フィリップ・ウィンチェスターとサリバン・ステープルトンは、今どき珍しいくらいガテン系のごついあんちゃんたちでして、第1シーズン以上に、なんというか男くさい(いや、ちゃんと女性キャラもレギュラーでいるんですけどね)ドラマとなっております。

 彼らが所属しているのは、英国秘密情報部MI6の作戦部門の一つ、セクション20。

 SASやSBSといった軍の正規の特殊部隊では扱えない極秘の、とはいえ、普通の情報部員には手に負えないような荒っぽい作戦に従事する、情報部内の特殊部隊なのです。

 このドラマは、毎シーズン、かれらセクション20のメンバーが、凶悪かつ狡猾な世界各地のテロリストたちと渡り合う姿を描く、派手な銃撃戦だらけのアクション大作なのです。

 なんせもう、毎回毎回、とにかく敵も味方も撃ちまくる。

 実のところ、物語の方は(特にオリジナルストーリーになった第2シーズン以降)けっこう雑な感じなのですが、銃器アクションマニアは毎回のドンパチを見ているだけでけっこう楽しい気持ちになれるはず。

 まさに、いまだにモデルガンとか見たらつい触っちゃうようなダメな男性(私含む)向けのドラマだと言えましょう。

 アメリカでの評判も良いみたいだけど、第4シーズンも作られるのかなあ?

 さて、クリス・ライアンと言えば、元イギリス特殊部隊(SAS)隊員で、中東で作戦中に敵の捕虜となった体験を元に書いたノンフィクション、『ブラヴォー・ツー・ゼロ孤独の脱出行』で作家デビューした、バリバリの「特殊部隊もの」作家なわけです。

 英米にはこの「特殊部隊もの」という非常にニッチな、しかし、固定客ががっちりといる冒険小説のサブジャンルがありまして、日本でも、大ヒットとは言わないまでも、翻訳を出せば必ず一定数は売れると言われております。

 そして、この手の「特殊部隊もの」の作家には元軍人、それもイギリス人が多いわけですが(一番売れっ子のトム・クランシーは、実はアメリカの民間人だっていうのも皮肉な話ですが)、クリス・ライアンはその代表格と言ってもいいでしょう。

 ちなみに、このライアンと同じ元SAS隊員で、それどころか、同じブラヴォー・ツー・ゼロというパトロール隊に所属していた作家がもう一人います。

 それが、『ブラヴォー・ツー・ゼロ SAS兵士が語る壮絶な湾岸戦記』『SAS戦闘員最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録』といったノンフィクションで大ヒットを飛ばし、『リモート・コントロール』に始まる「特殊部隊もの」軍事アクションを多数書いている、アンディ・マクナブです。

 ところがこの二人、当時の階級も同じ軍曹、歳もほぼ同じなのに、すごく仲が悪いんだとか。それもそのはず、実は、パトロール隊が敵の捕虜になったとき、ライアンは一人だけ難を逃れて逃げ延びましたが、マクナブは他の生き残りの隊員たちと共に捕まってしまって、ケガや病気を負ってしまったのです。もっとも、ライアンも逃走中に核廃棄物で汚染された水を飲んで、障害を得てしまったということですが。

 さらに言うと、死んでしまった隊員の一人について、ライアンの描写があまりに冷たいというので、マクナブは怒りまくったんだとか。

 戦友、必ずしも、生涯の友とはならず、ってことですかねえ。

 ちなみに、小説に関して言えば、わたしはどちらの作品もけっこう好きだったりします。

 皆さんも、以上のことを念頭に置いて読み比べてみたら、新たな発見があるかもしれませんよ。いや、「特殊部隊もの」に興味がない人にまでお勧めはしませんが(苦笑)。

〔挿絵:水玉螢之丞〕  

WOWOWプレミア 反撃のレスキュー・ミッション

『反撃のレスキュー・ミッション』第3シーズン紹介ビデオ(アメリカでは第2シーズン)

『反撃のレスキュー・ミッション』第3シーズンオープニング

堺三保(さかい みつやす)

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1963年大阪生まれ。関西大学工学部卒(工学修士)。南カリフォルニア大学映画芸術学部卒(M.F.A.)。主に英米のSF/ミステリ/コミックについて原稿を書いたり、翻訳をしたり。もしくは、テレビアニメのシナリオを書いたり、SF設定を担当したり。さらには、たまに小説も書いたり。最近はアマチュア・フィルムメイカーでもあり(プロの映画監督兼プロデューサーを目指して未だ修行中)。最近の仕事はテレビアニメ『エウレカセブンAO』のSF設定。最新刊は『WE3』(小学館集英社プロダクション)。

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