今回から二回にわけて、第四回翻訳ミステリー大賞二次投票にあたって、翻訳者のみなさまが投票メールに添えてくださったコメントの一部を紹介します。なお、掲載にあたって編集した箇所がありますこと、ご了承ください。作品は得票数順、コメントは投票者名50音順です。

 また、これからお読みになるかたの参考として当サイト人気連載「書評七福神今月の一冊」における各評者のコメントを添えました。

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【授賞式にて。左:文藝春秋・永嶋俊一郎、右:二宮磬氏(『無罪』訳者)】 

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(16票)

越前敏弥:おととしの『古書の来歴』、去年の『忘れられた花園』につづいて、今年も歴史ミステリーの醍醐味をたっぷり満喫できた『深い疵』に票を投じたい気もしましたが、やっぱり、あのどうしようもなくスケベで、どうしようもなくだらしなくて、どうしようもなく女々しい大馬鹿者のラスティ・サビッチの魅力には抗しきれません。ダメ男万歳! 同病相憐れむと言われたってかまわんぞ。

加賀山卓朗:人生経験の乏しい私にも、この本のすばらしさはわかります。

白石朗:緊迫の法廷シーンを読める醍醐味はなにものにもかえがたい。

芹沢恵『湿地』と最後まで迷いましたが、登場人物の気持ちの揺れが丁寧に描かれていたこちらに。堪能しました。

田口俊樹:この骨太感、読み応え、対決劇の面白さ、キャラの立ちざま、何を取っても一級品。サビッチは立派な人です。人間だれしも過ちはあるもんで……。

松井里弥:モルト検事の末永い幸せを願って、『無罪』に投票します。

     *

北上次郎『推定無罪』のときに四十歳だったラスティ・サビッチが六十歳になって帰って来た! 死んだ愛人を思って泣く四十歳のラスティが印象深かったが、この男、六十になってもまだふらふらしているから、ダメ男は生涯ダメ男のままということだろう。四十歳でふらふらしているやつは六十になってもふらふらしている、というのが今月の教訓だ! もちろん小説の中身も素晴らしい。

吉野仁:何十年ぶりかで『推定無罪』を再読した後、この続編を読んだ。そのせいか、ある登場人物の凄みをあらためて感じさせられた。

 候補作『毒の目覚め』S・J・ボルトン/法村里絵訳(東京創元社)

20130416191138.jpg20130416191139.jpg(11票)

加藤洋子:なによりも主人公が魅力的、そして読後感が爽やか。本に引き寄せられる、先を読みたくてたまらなくなる、すてきな作品です。

栗原百代:現代を舞台にしての見事なゴシックとサスペンスの融合、ヒロインの生い立ちと英国の長閑な村の歴史が微妙に交差する構成に、翻訳ミステリーならではの豊穣を最も深く味わわせてもらった作品です。

高橋恭美子:「ヘビってかわいい!」と思えるようになりました。なにより主人公クララの命を尊ぶ姿勢に深く共感。穂井田直美さんの愛情たっぷりの解説も素敵です。

三橋智子:冒頭から物語に一気に引きこみ最後まで離さない。知的面白さに加え五感も刺激される。主人公も共感しやすく魅力的。作品全体に誠実さを感じる。

     *

酒井貞道:毒蛇が大量発生したイギリスの田舎村を舞台に、偏屈な若き女性獣医クララが、毒蛇にまつわる怪事件を調べ回るのだが、とにかくストーリーテリングがうまい。田舎のスモール・コミュニティぶりを活用して人物面/現象面双方で焦点を絞りつつ、毒蛇による不気味な恐怖感と緊迫感を盛り立てる。おまけに、ヒロインのコンプレックスにも踏み込んで、ロマンス成分と混ぜることで読者をやきもき(またはキュンキュン)させる。

 候補作『解錠師』スティーヴ・ハミルトン/越前敏弥訳(早川書房)

20130416191138.jpg20130416191139.jpg(11票)

飯干京子:最終候補6作品のうち、5作品は今年になってから読みました。大作揃いで堪能させていただきましたが、すべて読み終えたあとも一番鮮明に心に焼き付いて離れないのは、昨年早い時期に読んだ『解錠師』のあのシーンだったということで、一次投票と同じ作品に一票を投じさせていただきます。

喜須海理子:ふだん翻訳書を読まない方にも、ぜひ読んでもらいたい!

白須清美:決め手は小説を読む楽しさが詰まっている点。既に各ミステリランキングで高評価を受けていますが、いわゆるミステリファンでない読者や、普段あまり本を読まない方にも、広く読んでほしいということで選びました。

中川潤一郎:すでに様々な好意的評価をされておりますが、読後いちばん心に残った作品ということで、本作を強く推します。

東野さやか:一次投票締め切りのあとに読んだ『無罪』も好みで、最後まで迷いましたが、アラカンになってもダメダメなサヴィッチさんより、寡黙すぎる美少年を選びました。

南沢篤花『毒の目覚め』とのあいだでかなり迷ったが、僅差で本作を選んだ。『無罪』もトゥローらしくて悪くはなかったが、上記2作と比較すると、あと一歩という感じ。

     *

酒井貞道:言葉を失った少年の、甘酸っぱく切なく仄暗く、そしてスリリングな青春を描く、素晴らしきクライム・ノベル。人生を静かに振り返る、老成したかのような主人公(でも二十代)の語り口が、えもいわれぬアトモスフィアを醸し出す。誰もが楽しめる逸品です。

吉野仁:ロックされたものなら何でも解き開ける犯罪者マイクル、その劇的な半生。なのだが、刑務所において過去を振り返る構成と口が聞けない主人公キャラ設定が実に効果的だ。読み出したら止められなかった。

 いかがでしたか。次回は以下の三作へのコメントを紹介いたします。

●第一回大賞受賞作

●第二回大賞受賞作

●第三回大賞受賞作

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