アメリカのベストセラー・ランキング

2月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. AMERICAN DIRT    Stay

Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳は『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)として早川書房より2月6日に刊行されました。

 

  1. 2. WHERE THE CRAWDADS SING    Stay

Delia Owens ディーリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイアは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。邦訳は『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)として早川書房より3月5日刊行予定。

 

  1. 3. WHEN YOU SEE ME    New!

Lisa Gardner リサ・ガードナー

ジョージア州で人骨が発見され、FBI特別捜査官のキンバリー・クインシーが調査にあたる。するとほかにも被害者がいたことが判明し、過去のものになったはずの連続誘拐犯の関与が疑われる。誘拐事件の担当だったボストン市警殺人課刑事D・D・ウォレンに加え、かつて監禁されたのちに生還し、いまなおPTSDに苦しむ被害者が捜査に協力する。

 

  1. 4. LOST    Down

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

アムステルダムからマイアミへ、さらわれた子供たちがひそかに送られてくる。海を越えて張りめぐらされる人身売買ネットワーク。地元マイアミをこよなく愛する市警刑事トム・ムーンがFBIとの合同捜査チームを率い、アムステルダムの刑事マリーと協力しながら巨大な犯罪シンジケートにいどむ。

 

  1. 5. DEAR EDWARD    Stay

Ann Napolitano アン・ナポリターノ

ある夏の日、12歳のエドワードは愛する兄と両親とともに、ニューアーク空港からロスアンジェルスに向かう。ほかの搭乗客は183人、それぞれにさまざまな経歴があり、事情を抱えていた。ところが飛行機は墜落し、エドワードだけが助かる。エドワードは家族のいなくなった世界で、自分の居場所を見つけようと奮闘する。

 

  1. 6. THE SILENT PATIENT    Stay

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。

 

  1. 7. SUCH A FUN AGE    Down

Kiley Reid カイリー・リード

ベビーシッターの仕事中、預かった子どもと高級スーパーマーケットに出かけたエミラは、児童誘拐を疑われて警備員に声をかけられ、騒ぎになる。エミラは大学卒業後もパートタイムの仕事を続ける20代半ばの黒人女性。雇い主のアリックスは、ブログやSNSでライフスタイルを発信する裕福な白人家庭の母親。ふたりのかかわりを通して、人種、階級、経済格差、友情など、さまざまな問題を描く。

 

  1. 8. THE DUTCH HOUSE    Up

Ann Patchett アン・パチェット

瀟洒な屋敷〈ダッチハウス〉で何不自由なく暮らす二人の子供、姉ミーブと弟ダニー。あるとき継母がやってきて二人は屋敷から追われてしまう。それから数十年、つらい生活のなかで姉弟は分かちがたい絆で結ばれる一方、二度ともどれない家へと何度となく引き寄せられていく。家族の離散と過去への執着の物語。

 

  1. 9. A LONG PETAL OF THE SEA    Down

Isabel Allende イサベル・アジェンデ

スペイン内戦に揺れる1930年代末のカタルーニャ。フランコの弾圧を受けてフランスへ逃れた共和派の若き医師ビクトルは、戦死した弟の子供を身ごもったロゼと形式的に結婚する。パブロ・ネルーダが用意した船に乗り、チリへ亡命するためだった。安住の地を求めるふたりの数奇な運命を描く、『精霊たちの家』の作者によるヒストリカル・フィクション。

 

  1. 10. THE GUARDIANS    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

フロリダで弁護士が射殺される事件が起こり、かつての依頼人だったミラーという若い黒人が逮捕される。ミラーは有罪判決を受けるが、その後も22年にわたって獄中から無実を訴えつづけていた。冤罪被害者の救済活動をおこなっている牧師にして弁護士であるカレン・ポストは、ミラーの支援に乗り出す。

 

【まとめ】

今週の初登場は3位のリサ・ガードナー1作でした。これはクインシー・シリーズと、『棺の女』『無痛の子』が邦訳されているD・D・ウォレン・シリーズのクロスオーバー作品です。このコーナーがお休みだった先週は動きが多く、新作が3つランクインしました。先週初登場で1位を獲得したジャニーン・カミンズの“AMERICAN DIRT”が今週も1位をキープしています。ドン・ウィンズロウに“現代版『怒りの葡萄』”と評されている話題作で、6日に邦訳が『夕陽の道を北へゆけ』として早川書房より発売されたばかりです。残るふたつは、今週9位のイサベル・アジェンデ“A LONG PETAL OF THE SEA”と、今週は圏外となったウィリアム・ギブスン“AGENCY”。『ニューロマンサー』などで知られるサイバーパンクSFの始祖ギブスンの新作は、2014年刊“THE PERIPHERAL”の続編です。イサベル・アジェンデは、前々作の邦訳『日本人の恋びと』が2018年に河出書房新社より刊行されています。

 

    1. 国弘喜美代(くにひろ きみよ)

      南東京読書会の世話人のひとり。訳書にローラ・シムズ『あなたを見てます大好きです』、エドワード・セント・オービンのパトリック・メルローズ・シリーズ(手嶋由美子さんとの共訳)など。8日に開催したマイケル・オンダーチェ『戦下の淡き光』(田栗美奈子訳、作品社)読書会は、ゲストと参加者のみなさまのおかげで有意義な楽しい会となりました。作品をいろいろな角度で見ることができ、ネタバレなしで話し合えるあまりない機会だと思います。読書会がはじめてのかたもどうぞ気軽にご参加ください。