アメリカのベストセラー・ランキング

3月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

 

  1. 1. BLINDSIDE    New!

James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン

ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第12作。ベネットが捜査にあたったブロンクスの殺人事件の被害者には、国家の安全をゆるがしかねない高度なハッキング活動と、目下行方不明となっているニューヨーク市長の娘とのつながりがあった。

 

2. WHERE THE CRAWDADS SING    Down
Delia Owens ディーリア・オーエンズ

1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイアは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。

 

3. AMERICAN DIRT    Down
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ

アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。

 

  1. 4. THE WARSAW PROTOCOL    New!

Steve Berry スティーブ・ベリー

アメリカ合衆国司法省の元工作員が活躍するコットン・マローン・シリーズの第15作。間もなく開かれるプライベート・オークションで、ポーランド首相にかんするある情報が競りにかけられるという。アメリカ、ロシアがそれぞれの理由で欲しがっている秘密の情報だ。元上司のネルからそれを聞いたマローンは、オークションへの切符となる聖槍を盗むため、ポーランドの城へと向かう。

 

  1. 5. THE SILENT PATIENT    Down

Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ

有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。

 

  1. 6. COCONUT LAYER CAKE MURDER    New!

Joanne Fluke ジョアン・フルーク

お菓子探偵ハンナ・スウェンセン・シリーズの第25作。前の事件からのストレスですっかり参ってしまったハンナは、しばらくのんびり過ごそうと友人の住むカリフォルニアを訪れるが、すぐに電話で呼び戻されてしまう。ハンナの店のあるミネソタのレイク・エデンで殺人事件が発生し、妹ミシェルのボーイフレンドに容疑がかかっているというのだ。被害者は町の数少ない刑事のひとり。ハンナの活躍に期待がかかる。

 

  1. 7. APEIROGON    New!

Colum McCann コラム・マッキャン

ひとりはイスラエル人。ひとりはパレスチナ人。緊張のつづく日常のなかでともに娘を失ったふたりの父親が出会い、憎しみのときを経て、やがてたがいの悲しみを知る。ふたりは手をとりあって、自分たちの体験を世界に伝える活動を始めた。『世界を回せ』で全米図書賞を受賞したアイルランド出身作家による、実話をもとにした稀有な友情の物語。

 

  1. 8. THE DUTCH HOUSE    Down

Ann Patchett アン・パチェット

瀟洒な屋敷〈ダッチハウス〉で何不自由なく暮らす二人の子供、姉ミーブと弟ダニー。あるとき継母がやってきて二人は屋敷から追われてしまう。それから数十年、つらい生活のなかで姉弟は分かちがたい絆で結ばれる一方、二度ともどれない家へと何度となく引き寄せられていく。家族の離散と過去への執着の物語。

 

  1. 9. SUCH A FUN AGE    Down

Kiley Reid カイリー・リード

ベビーシッターの仕事中、預かった子どもと高級スーパーマーケットに出かけたエミラは、児童誘拐を疑われて警備員に声をかけられ、騒ぎになる。エミラは大学卒業後もパートタイムの仕事を続ける20代半ばの黒人女性。雇い主のアリックスは、ブログやSNSでライフスタイルを発信する裕福な白人家庭の母親。ふたりのかかわりを通して、人種、階級、経済格差、友情など、さまざまな問題を描く。

 

  1. 10. THE GIVER OF STARS    Stay

Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ

1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。

 

【まとめ】

今週は新作が4作登場しています。1位、4位、6位には、それぞれ息の長いシリーズものがランクインしました。6位のジョアン・フルークはシリーズ第21作『バナナクリーム・パイが覚えていた』(上條ひろみ訳)がハーパーコリンズ・ジャパンのmirabooksより1月10日に邦訳刊行されています。7位のコラム・マッキャンは、全米図書賞、国際IMPACダブリン文学賞などの受賞歴があり、40言語で翻訳出版されているアイルランドの作家。今回作はスピルバーグのアンブリン・パートナーズが映画化権を獲得したとのこと。その他、今週は圏外となりましたが、本連載がお休みの先週4位に、マーク・グリーニーのグレイマン・シリーズ第9作“ONE MINUTE OUT”が登場していました。また、今週2位、本ベストセラーリストにはランクイン78週目となる“WHERE THE CRAWDADS SING”が、邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)として早川書房より3月5日に刊行されています。

 

 

    1. 吉井智津(よしい ちづ)

      翻訳者。訳書に、ナディア・ムラド『THE LAST GIRL―イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』(東洋館出版社)、アラベラ・カーター・ジョンソン『小さなモネ―アイリス・グレース―自閉症の少女と子猫の奇跡』(辰巳出版)など。