アメリカのベストセラー・ランキング

8月31日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. COLORLESS TSUKURU TAZAKI AND HIS YEARS OF PILGRIMAGE    New!

Haruki Murakami 村上春樹

日本では2013年に出版された『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の英訳版。大学生のとき、友人4人から突然絶交された男が、ある女性との出会いをきっかけに、十数年を経てその理由を探ろうとする。

2. LOVE LETTERS    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シーダー・コーヴ・シリーズのスピンオフ作品であるローズ・ハーバー・シリーズの第3作。海辺の町の小さなB&Bを舞台に、それぞれに悩みをかかえた3組の男女と、ラブレターの持つ力が描かれる。

3. THE 6TH EXTINCTION    New!

James Rollins ジェームズ・ロリンズ

アメリカの秘密特殊部隊の活躍を描くシグマフォース・シリーズの第10作。軍事研究施設から緊急警報が発せられる。軍の部隊が駆けつけると、施設の人員が全員死亡していたのみならず、50平方マイル以内のあらゆる生物が死に絶えていた。

4. BIG LITTLE LIES    Down

Liane Moriarty リアン・モリアーティ

オーストラリアの小さな町で、同じ幼稚園に子どもを通わせるママ友たち。冒頭でそのうちのひとりが死ぬことが明かされる。誰が、そしてなぜ——“THE HUSBAND’S SECRET”でブレイクした著者による新作ドメスティック・サスペンス。

5. THE GOLDFINCH    Stay

Donna Tartt ドナ・タート

爆破事故で母を失った少年が過酷な運命に翻弄され、大人になるまでの物語。2014年ピューリッツァー賞(フィクション部門)を受賞、河出書房新社より2015年に邦訳が刊行予定。

6. THE HEIST    Stay

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師ガブリエル・アロン・シリーズの第14作。美術修復師にしてイスラエルの秘密工作員ガブリエル・アロンが、イギリス人元外交官殺しの犯人を探るうちに、盗まれたカラヴァッジョの絵画をめぐる秘密が明らかになる。

7. THE BOOK OF LIFE    Stay

Deborah Harkness デボラ・ハークネス

パラノーマル・ファンタジー3部作〈オール・ソウルズ・トリロジー〉の完結編。幻の写本の謎を追い、エリザベス朝イングランドから現代へと戻った魔女の末裔の歴史学者ダイアナとヴァンパイアのマシューを新たな危機が襲う。

8. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

9. THE LOST ISLAND    Down

Douglas Preston and Lincoln Child ダグラス・プレストン、リンカーン・チャイルド

科学者にして泥棒の天才でもあるギデオンを主人公とするシリーズの第3作。今回の指令は、ニューヨークの図書館に展示されているアイルランドの国宝、ケルズの書を盗み出せというものだった。古書に隠された秘密とは——。

10. THE MAGICIAN’S LAND    Down

Lev Grossman レヴ・グロスマン

大人のためのファンタジーと評される3部作の完結編。ニューヨークにある特別な大学で魔術を学んだ青年クエンティンが、幼いころに物語で読んだ魔法の世界を訪れる。『コーデックス』の作者による人気シリーズ、第1作は20か国以上で翻訳された。

【まとめ】

1位から3位までを新作が独占しました。初登場でいきなり1位を獲得したのは、村上春樹の長編最新作。アメリカでも発売日には書店に行列ができたようです。

2位で触れたシーダー・コーヴ・シリーズはテレビドラマ化され、現在第2シーズンが放映されています。

5位のドナ・タート、8位のアンソニー・ドーアの人気はいまだ衰えず。トップテン外では、ファンタジー作家ロビン・ホブの新作“FOOL’S ASSASSIN”が13位にランクインしています。

青木創(あおき はじめ)

文芸翻訳家。訳書にB・メルツァー『偽りの書』、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。今秋には、昨年のバリー賞を受賞したミステリをお届けできる見こみです。