アメリカのベストセラー・ランキング

9月7日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. COLORLESS TSUKURU TAZAKI AND HIS YEARS OF PILGRIMAGE    Stay

Haruki Murakami 村上春樹

日本では2013年に出版された『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の英訳版。大学生のとき、友人4人から突然絶交された男が、ある女性との出会いをきっかけに、十数年を経てその理由を探ろうとする。

2. ADULTERY    New!

Paulo Coelho パウロ・コエーリョ

家庭と仕事に恵まれながらも無感動な日々を送る三十路の女性記者は、再会した元恋人との関係に救いを求めるが……『アルケミスト——夢を旅した少年』など、スピリチュアルな作風で知られるブラジル人作家が“不倫”を扱った作品。

3. BIG LITTLE LIES    Up

Liane Moriarty リアン・モリアーティ

オーストラリアの小さな町で、同じ幼稚園に子どもを通わせるママ友たち。冒頭でそのうちのひとりが死ぬことが明かされる。誰が、そしてなぜ——“THE HUSBAND’S SECRET”でブレイクした著者による新作ドメスティック・サスペンス。

4. THE GOLDFINCH    Up

Donna Tartt ドナ・タート

爆破事故で母を失った少年が過酷な運命に翻弄され、大人になるまでの物語。2014年ピューリッツァー賞(フィクション部門)を受賞、河出書房新社より2015年に邦訳が刊行予定。

5. MEAN STREAK    New!

Sandra Brown サンドラ・ブラウン

ノース・カロライナの山中で謎の男に捕らえられた女性小児科医。彼女は脱出を決意するが、独自の倫理観を持つ人々との出会いによって、人生に疑問を感じはじめ……意外な展開を見せるサバイバル・ストーリー。

6. WE ARE NOT OURSELVES    New!

Matthew Thomas マシュー・トマス

アイルランド系移民を両親に持つヒロインを中心に、20世紀後半のアメリカ中産階級の葛藤を描いたファミリー・サーガ。ニューヨーク出身の著者のデビュー作で、アマゾンの8月度の“Best Books of the Month”にも選ばれている。

7. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

8. THE HEIST    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師ガブリエル・アロン・シリーズの第14作。美術修復師にしてイスラエルの秘密工作員ガブリエル・アロンが、イギリス人元外交官殺しの犯人を探るうちに、盗まれたカラヴァッジョの絵画をめぐる秘密が明らかになる。

9. THE 6TH EXTINCTION    Down

James Rollins ジェームズ・ロリンズ

アメリカの秘密特殊部隊の活躍を描くシグマフォース・シリーズの第10作。軍事研究施設から緊急警報が発せられる。軍の部隊が駆けつけると、施設の人員が全員死亡していたのみならず、50平方マイル以内のあらゆる生物が死に絶えていた。

10. LOVE LETTERS    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

シーダー・コーヴ・シリーズのスピンオフ作品であるローズ・ハーバー・シリーズの第3作。海辺の町の小さなB&Bを舞台に、それぞれに悩みをかかえた3組の男女と、ラブレターの持つ力が描かれる。

【まとめ】

村上春樹の英訳最新作が先週からの首位をキープ、2位にパウロ・コエーリョの新作が初登場しています。このほか、ロマンス界の大御所サンドラ・ブラウンの新作サスペンスが5位に、新人作家マシュー・トマスの家族小説が6位にランクインしました。トップテン外の12位には、ウィリアム・K・クルーガーの元保安官コーク・オコナー・シリーズ第14作、“WINDIGO ISLAND”が。

北田絵里子(きただ えりこ)

文芸翻訳者。ミステリーの訳書はゴダード『血の裁き』『隠し絵の囚人』、クイーン『ギリシャ棺の秘密』(越前敏弥氏との共訳)など。なぜかご縁がない女性作家の作品も訳してみたい今日このごろです。翻訳ミステリー金沢読書会の世話人もしています。