アメリカのベストセラー・ランキング
3月29日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. THE MIRROR & THE LIGHT New!
Hilary Mantel ヒラリー・マンテル
英国の稀代の政治家トマス・クロムウェルの生涯を綴った3部作の3作目。ヘンリー8世の王妃アン・ブーリン処刑以後、クロムウェルの絶頂期から失脚までを描く。前2作がともにブッカー賞を受賞した、話題の歴史文芸大作。
- 2. WHERE THE CRAWDADS SING Up
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
1950年代、ノースカロライナの田舎町。幼くして家族に捨てられた少女カイアは、町の人々の偏見にさらされながら沼地に隠れ住んでいた。やがて、たくましさと繊細さを併せもつ美しい娘に成長し、ふたりの若者との交流によって心を開いていくが、町で殺人事件が発生し、疑いの目を向けられる。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 3. JOURNEY OF THE PHARAOHS New!
Clive Cussler and Graham Brown クライブ・カッスラー、グレアム・ブラウン
カート・オースチン主人公のNUMAファイル・シリーズの17作目。カートひきいるNUMAのチームは沈没船の積み荷から、エジプトのファラオの財宝に関する貴重な史料を発見するが、調査を進めてトレジャーハントに没頭する一行の前に、財宝を強奪せんと武器商人の組織が立ちはだかる。
4.AMERICAN DIRT Up
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ
アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。
- 5. A GOOD NEIGHBORHOOD New!
Therese Anne Fowler テレーズ・アン・ファウラー
価値観のちがう人々とつき合うには? 黒人女性のヴァレリー教授はご近所づき合いが緊密な町で息子を育てながら、申し分のない日々を送っていた。ところが、白人で成金のホイットマン一家が隣に越してきてからというもの、平穏な暮らしがことあるごとに乱され、あげくは息子が隣家の怪しげな娘に熱をあげてしまう。
6.MY DARK VANESSA New!
Kate Elizabeth Russell ケイト・エリザベス・ラッセル
17年前、女子高生だったヴァネッサは中年の国語教師ジェイコブと恋に落ちた。ところがある日、以前ヴァネッサと同じ体験をしたという女性が現れ、未成年者に性的虐待をした罪でジェイコブを訴えるという。初恋の相手だったジェイコブを人生の師と思っていたヴァネッサは、あらためて過去と向き合わざるをえなくなる。
- 7. HOUSE OF EARTH AND BLOOD Down
Sara J. Maas サラ・J・マース
半分、妖精、半分、人間のブライス・キンランは2年まえ、親友とその仲間を惨殺された。犯人は捕まったものの、犯罪はまたはじまる。彼女は悪名高い堕天使、ハント・アサラーの仲間に加わり、自ら殺人者を追うことにする。
- 8. LONG RANGE Down
- J. Box C・J・ボックス
ワイオミング州猟区管理官、ジョー・ピケット・シリーズの第20作。グリズリーに襲われた一団の救助に駆りだされたピケット。被害者のひとりから証言を聞き、この襲撃は見かけどおりのものではないとの疑いを持つ。まもなく、地元の著名な判事が撃たれて負傷する。ピケットは担当地区にもどり、狙撃犯を追うことになる。
- 9. BLINDSIDE Down
James Patterson and James O. Born ジェイムズ・パタースン、ジェイムズ・O・ボーン
ニューヨーク市警の刑事マイケル・ベネットを主人公とするシリーズの第12作。ベネットが捜査にあたったブロンクスの殺人事件の被害者には、国家の安全をゆるがしかねない高度なハッキング活動と、目下行方不明となっているニューヨーク市長の娘とのつながりがあった。
- 10. THE NUMBER GAME Down
Danielle Steel ダニエル・スティール
夫のポールと幸せな家庭を築いていたはずのアイリーンは、彼が若い女性と不倫していることを知り、これまでの人生を見つめなおす。ポールがアイリーンの元にもどると、彼の恋人だったオリヴィアは、経営する絵画ギャラリーを国際的に展開させることを決意。アイリーンもまた自らの夢を追い、パリのル・コルドン・ブルーで学ぶことにする。新しいことをはじめるのに遅すぎることはない、というメッセージが込められた物語。
【まとめ】
4作品がトップテン入りするなか、ディーリア・オーエンズとジャニーン・カミンズが堅調です。初登場で1位のTHE MIRROR & THE LIGHTは、激動の16世紀英国を描いた大作の完結編。前作から8年ぶりの刊行です。前2作の邦訳は『ウルフ・ホール』『罪人を召し出せ』(宇佐川晶子訳)として早川書房から刊行されています。同じく初登場で3位のJOURNEY OF THE PHARAOHSですが、著者のクライブ・カッスラー氏が2月24日に88歳で永眠されました。長年冒険小説の巨匠として活躍するかたわら、作中に登場するNUMA(国立海中海洋機関)を実際に設立し、沈没船の探索に力をそそいだことでも知られていました。謹んで哀悼の意を表します。なお、本シリーズの邦訳10作目『気象兵器の嵐を打ち払え』(土屋晃訳)が今週3月26日に扶桑社から刊行予定です。
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唐木田みゆき(からきだ みゆき)
翻訳者。訳書にアンドリュー・メインの生物学探偵セオ・クレイ・シリーズなど。1作目『森の捕食者』に引きつづき、2作目の『街の狩人』も楽しんでいただけたら幸いです。
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