アメリカのベストセラー・ランキング

11月16日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. GRAY MOUNTAIN    Stay

John Grisham ジョン・グリシャム

リーマン・ショックに揺れるアメリカ。新人弁護士のサマンサは、ウォール・ストリートの大手法律事務所からヴァージニア州の田舎町の法律相談所に移籍させられるが、そこで弁護士として成長しながら、悪辣な巨大石炭産業に立ち向かう。

2. THE SLOW REGARD OF SILENT THINGS    New!

Patrick Rothfuss パトリック・ロスファス

異世界ファンタジー三部作〈キングキラー・クロニクル〉に登場する謎めいた女性キャラクター、オーリの冒険を描く。先行の三部作は、“『ハリー・ポッター』完結後の10年をリードする正統派本格ファンタジー小説“としてアメリカで大ヒットしたが、日本では第一部の『風の名前』のみが紹介されている。

3. PRINCE LESTAT    New!

Ann Rice アン・ライス

『夜明けのヴァンパイア』からはじまる壮大なシリーズ〈ヴァンパイア・クロニクルズ〉の最新作。レスタト・ド・リオンクールを中心とした主要キャラクターが顔を揃える、初期5作品の続編であり、新シリーズの幕開けともなる作品。

4. HAVANA STORM    New!

Clive Cussler and Dirk Cussler クライブ・カッスラー、ダーク・カッスラー

国立海中海洋機関”NUMA”所属のダーク・ピットが活躍する冒険アクション第23作(16作目以後は息子のダーク・カッスラーとの共著で発表)。今回ピットは、キューバでポスト・カストロの勢力争いに巻きこまれる。本シリーズの邦訳は、前々作の『神の積荷を守れ』が昨年刊行されている。

5. LEAVING TIME    Down

Jodi Picoult ジョディ・ピコー

ジェナが3歳のとき、象の研究者だった母は幼い娘を残して突然姿を消した。象にまつわる死亡事故が起こり、その混乱のなかでいなくなったのだ。10年後、ジェナは母の書いた研究日誌を読み、探偵と霊能力者の助けを借りて母の足跡をたどってゆく。

6. THE HANDSOME MAN’S DELUXE CAFE    New!

Alexander McCall Smith アレグザンダー・マコール・スミス

”サバンナのミス・マープル”ことボツワナの女探偵ミス・ラモツエを主人公とした、No.1レディーズ探偵社シリーズ第15作。探偵事務所の共同経営者がレストラン経営に乗り出したことから生じるトラブルに、ラモツエが挑む。第4作『新参探偵、ボツワナを騒がす』まで邦訳あり。

7. PEGASUS    New!

Danielle Steele ダニエル・スティール

ロマンス作家のスティールによる、第二次世界大戦を背景としたファミリー・サーガ。ドイツ貴族のニコラスは、亡母がユダヤ系だったためナチスから逃れて家族とアメリカに渡り、故国の親友から贈られた白馬とともに、サーカス団の花形として新たな人生を切り開いてゆく。

8. EDGE OF ETERNITY    Down

Ken Follett ケン・フォレット

1960年代から80年代にかけて、国籍のちがう5つの家族が、冷戦という時代に翻弄されながら生きていくさまを描く。『巨人たちの落日』『凍てつく世界』につづく、20世紀をテーマにした「100年3部作」の第3部。

9. THE PERIPHERAL    New!

William Gibson ウィリアム・ギブスン

『ニューロマンサー』などで知られるサイバーパンクSFの始祖ギブスンの最新作。21世紀後半のアメリカで、テレビゲームのベータテストに仕組まれたとおぼしき殺人を目撃したヒロインが、さらに遠い未来の権力闘争に引きずりこまれる。

10. DEADLINE    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

“獲物”シリーズに登場するミネソタ州犯罪捜査局捜査官を主人公とするヴァージル・フラワーズ・シリーズの第8作。田舎町で頻発する飼い犬の盗難事件。友人の依頼で捜査に向かうヴァージルだが、さらにその町で新聞記者が殺害される。

【まとめ】

 グリシャムが先週からの首位をキープした今週は、新作6作品の登場で2位以下が大変動。作家の顔ぶれはベテラン勢中心ながら、あらゆるジャンルを網羅したような、バラエティに富んだランキングとなりました。アン・ライスの〈ヴァンパイア・クロニクルズ〉については、今後の発表予定ぶんを含むシリーズ全作品の映画化権をユニバーサル・ピクチャーズが獲得しており、過去の映画化作品のリブートも予想されるとのこと。

北田絵里子(きただ えりこ)

文芸翻訳者/翻訳ミステリー金沢読書会世話人。最新訳書は、ジェイムズ・レナーの型破りなジャンル横断小説『プリムローズ・レーンの男』、エラリー・クイーンの国名シリーズ新訳『シャム双子の秘密』(越前敏弥氏との共訳)。いずれも10月に発売されたばかりです。どうぞよろしく。