アメリカのベストセラー・ランキング

3月8日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. A SPOOL OF BLUE THREAD    Up

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

4. THE NIGHTINGALE    Up

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

5. THE WHITES    New!

Harry Brandt (Richard Price) ハリー・ブラント(リチャード・プライス)

過去のミスがもとで閑職に甘んじるニューヨーク市警の中年刑事ビリー。かつて担当した未解決事件の容疑者たちが相次いで死亡していることを知り、刑事魂を蘇らせるが……。『黄金の街』『聖者は口を閉ざす』のプライスがハリー・ブラント名義で発表した警察小説。

6. OBSESSION IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

華やかな活躍により注目を集める敏腕女性警部補イヴを崇拝し、忠実な真の友人と自称するストーカーが現れた。“イヴのために”殺人を繰り返し、とうとうその標的は……。イヴ&ローク・シリーズ第40作。

7. THE ACCIDENTAL EMPRESS    New!

Allison Pataki アリスン・パタキ

デビュー作“THE TRAITOR’S WIFE”が昨年ベストセラーとなった著者によるヒストリカル・フィクション第2弾。19世紀半ば、姉の見合い相手の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見初められ、オーストリア皇妃となったエリザベートの数奇な人生を描く。

8. DREAMING SPIES    New!

Laurie R. King ローリー・キング

ホームズと妻のメアリが活躍する、シャーロック・ホームズの愛弟子シリーズの第13作。1920年代半ば、インドからサンフランシスコへの船旅の途中に日本を訪れたふたりは、皇室の威信を揺るがす脅迫事件の捜査を引き受けることになる。

9. TRIGGER WARNING    Down

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

人気アメリカン・コミック『サンドマン』シリーズの原作や、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞の『アメリカン・ゴッズ』などで知られる著者の3冊目の短編集。未発表の『アメリカン・ゴッズ』スピンオフ短編“Black Dog”など25編がおさめられている。

10. PRIVATE VEGAS    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マキシン・ペトロ

元海兵隊のジャック・モーガンが民間調査会社“プライベート”を率いて難事件に取り組むシリーズの第5作。女性ばかりを狙った誘拐事件が発生するが、警察による捜査は外交特権に阻まれる。自身も命を狙われながら、ジャックは殺人嗜好者を追う。

【まとめ】

1位と2位は今週も変わらずですが、5位、7位、8位に新作が登場しています。5位の“THE WHITES”というタイトルは、長年追いつづける宿敵の犯罪者を“白鯨”になぞらえたものとのこと。7位のアリスン・パタキは、元ニューヨーク市長のジョージ・パタキの娘ということでも話題を呼んでいるそうです。8位のローリー・キングのシャーロック・ホームズの愛弟子シリーズは、第7作『疑惑のマハーラージャ』(集英社刊)まで邦訳が出ています。

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

関西在住の翻訳者。訳書はフリン『ゴーン・ガール』、モレイス『マダム・マロリーと魔法のスパイス』など。春には古代ギリシアが舞台の歴史冒険ファンタジー・シリーズ『神々と戦士たち』(ミシェル・ペイヴァー著)の第1巻があすなろ書房より刊行予定です。