アメリカのベストセラー・ランキング

3月15日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. MIGHTIER THAN THE SWORD    New!

Jeffrey Archer ジェフリー・アーチャー

激動の20世紀イギリスを生きる一族を描いた〈クリフトン年代記〉第5部。スターリン支配の内情暴露本執筆によりシベリアで投獄された友人の救出に乗り出すハリー・クリフトン。一方、妻エマはIRAによる船上爆弾テロの責任を問われて窮地に立つ。

4. PRODIGAL SON    New!

Danielle Steel ダニエル・スティール

良い子と悪い子——幼少から対照的だった双子の兄弟。生家を離れたピーターは投資家として築いた地位を失って帰郷し、町医者を営むマイクルと20年ぶりに再会する。わだかまりが緩んだのも束の間、母の日記が疑念を揺り起こし、双子の善と悪を塗り替えていく。

5. A SPOOL OF BLUE THREAD    Down

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

6. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

7. THE WHITES    Down

Harry Brandt (Richard Price) ハリー・ブラント(リチャード・プライス)

過去のミスがもとで閑職に甘んじるニューヨーク市警の中年刑事ビリー。かつて担当した未解決事件の容疑者たちが相次いで死亡していることを知り、刑事魂を蘇らせるが……。『黄金の街』『聖者は口を閉ざす』のプライスがハリー・ブラント名義で発表した警察小説。

8. GRAY MOUNTAIN    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

リーマン・ショックに揺れるアメリカ。新人弁護士のサマンサは、ウォール・ストリートの大手法律事務所からヴァージニア州の田舎町の法律相談所に移籍させられるが、そこで弁護士として成長しながら、悪辣な巨大石炭産業に立ち向かう。

9. TRIGGER WARNING    Stay

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

人気アメリカン・コミック『サンドマン』シリーズの原作や、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞の『アメリカン・ゴッズ』などで知られる著者の3冊目の短編集。未発表の『アメリカン・ゴッズ』スピンオフ短編“Black Dog”など25編がおさめられている。

10. OBSESSION IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

華やかな活躍により注目を集める敏腕女性警部補イヴを崇拝し、忠実な真の友人と自称するストーカーが現れた。“イヴのために”殺人を繰り返し、とうとうその標的は……。イヴ&ローク・シリーズ第40作。

【まとめ】

1位と2位は今週も揺るがず、3位と4位にベテラン作家の新作が入ってきました。ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記は7部完結の予定で、3月28日には第4部の邦訳『追風に帆を上げよ』(新潮文庫)が刊行されます。ダニエル・スティールのランクインは、昨年7月にこの速報コーナーが開始してからだけでも8月4日付4位、11月16日付7位、今回で3度目と、ほぼ3ヶ月ごとに新作を繰り出す多作ぶり。ベストテン外では13位にジョアン・フルークのお菓子探偵ハンナ・スウェンセン・シリーズ第18作“DOUBLE FUDGE BROWNIE MURDER”が、15位にローラ・リップマンのテス・モナハン・シリーズ第12作“HUSH HUSH”が、それぞれ登場しています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

はじめまして、こちらの新メンバーになりました。訳書はグレッグ・ルッカ『逸脱者』『哀国者』『回帰者』など。ですが、二足目のわらじを履くことになってから、翻訳わらじはいつしか下駄箱の奥へと(……がさごそ……ぎゃ、カビっ?)。大阪読書会の世話人ズの1人です。どうぞよろしくお願いします。