アメリカのベストセラー・ランキング

3月22日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

3. THE BURIED GIANT    New!

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

アーサー王亡きあと騎士やドラゴンや人食い鬼が棲む世界で、ブリテン人の老夫婦が息子を訪ねて、霧に覆われた地を旅する。失われた記憶、愛、戦争をめぐる物語。ブッカー賞作家イシグロの10年ぶりの長編。

4. A SPOOL OF BLUE THREAD    Up

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

5. THE ASSASSIN    New!

Clive Cussler and Justin Scott クライブ・カッスラー&ジャスティン・スコット

私立探偵アイザック・ベル・シリーズの第8作。1905年、政府の要請を受けたヴァン・ドーン探偵社がロックフェラー傘下の石油会社を調査していたところ、何者かが凄腕のスナイパーを使って重要な証人を殺害し、精油所を爆破する。

6. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

7. PRODIGAL SON    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

良い子と悪い子——幼少から対照的だった双子の兄弟。生家を離れたピーターは投資家として築いた地位を失って帰郷し、町医者を営むマイクルと20年ぶりに再会する。わだかまりが緩んだのも束の間、母の日記が疑念を揺り起こし、双子の善と悪を塗り替えていく。

8. DEAD HEAT    New!

Patricia Briggs パトリシア・ブリッグズ

元人間の人狼アナと、人狼のリーダーであるチャーリーを主人公とするパラノーマル・ファンタジーのシリーズ第4作。アリゾナを訪れ、年老いた人間の旧友と再会したふたりだが、激しさを増す妖精と人間との戦いに巻きこまれる。

9. THE WHITES    Down

Harry Brandt (Richard Price) ハリー・ブラント(リチャード・プライス)

過去のミスがもとで閑職に甘んじるニューヨーク市警の中年刑事ビリー。かつて担当した未解決事件の容疑者たちが相次いで死亡していることを知り、刑事魂を蘇らせるが……。『黄金の街』『聖者は口を閉ざす』のプライスがハリー・ブラント名義で発表した警察小説。

10. MIGHTIER THAN THE SWORD    Down

Jeffrey Archer ジェフリー・アーチャー

激動の20世紀イギリスを生きる一族を描いた〈クリフトン年代記〉第5部。スターリン支配の内情暴露本執筆によりシベリアで投獄された友人の救出に乗り出すハリー・クリフトン。一方、妻エマはIRAによる船上爆弾テロの責任を問われて窮地に立つ。

【まとめ】

3位に登場したカズオ・イシグロの新作は、『忘れられた巨人』として早川書房より4月下旬に刊行される予定です。5位の探偵シリーズは第2作まで邦訳ずみ。8位のシリーズ自体は未邦訳ですが、これは同じく人狼が活躍するマーシィ・トンプソン・シリーズのスピンオフで、そちらは第1作『裏切りの月に抱かれて』が出版されています。トップテン外の動きとしては、11位に『ロス・アラモス運命の閃光』『さらば、ベルリン』で知られるジョゼフ・キャノンの“LEAVING BERLIN”が、14位に『フランチェスコの暗号』で有名なイアン・コールドウェルの“THE FIFTH GOSPEL”がはいっています。

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

訳書はエラリー・クイーン『アメリカ銃の秘密』(越前敏弥さんとの共訳)、マイケル・ハーグ『インフェルノ・デコーデッド』など。