アメリカのベストセラー・ランキング

4月19日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. THE SHADOWS    New!

J. R. Ward J・R・ウォード

ブラック・ダガー・ブラザーフッド——〈黒き剣兄弟団〉こと、個性豊かなエリート・ヴァンパイア戦士たちを巡って繰り広げられる人気パラノーマル・ロマンス・シリーズの第13作。邦訳は二見書房より、第5作『情熱の炎に抱かれて』までが刊行されている。

3. THE STRANGER    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

幸せな家庭と仕事にめぐまれ、完璧な人生を歩んでいた主人公。謎の男と出会ったことをきっかけに妻の秘密を知り、そこから何もかもが夢幻だったかのように崩れ去っていく。マイロン・ボライター・シリーズの著者による、スタンドアローンの新作スリラー。

4. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

5. THE PATRIOT THREAT    New!

Steve Berry スティーブ・ベリー

米司法省の元工作員コットン・マローン・シリーズ第10作。財務省から盗まれたファイルには、合衆国憲法修正第16条に絡むトップシークレットが隠されていた。元上司の命を受け、ヴェネツィアから遠くクロアチアへと犯人を追うコットンに24時間のリミットが迫る。

6. AT THE WATER’S EDGE    New!

Sara Gruen サラ・グルーエン

『サーカス象に水を』の著者による新作長編。父の不興を買った名家の娘マデリンと夫エリスは、ネス湖の怪獣発見を目指す友人ハンクとともにスコットランド高地へ赴く。戦時の困窮下を美しい小村で暮らすうち、やがてマデリンは外の世界の広さに気づきはじめる。

7. A SPOOL OF BLUE THREAD    Down

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

8. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

9. THE BURIED GIANT    Down

Kazuo Ishiguro カズオ・イシグロ

アーサー王亡きあと騎士やドラゴンや人食い鬼が棲む世界で、ブリテン人の老夫婦が息子を訪ねて、霧に覆われた地を旅する。失われた記憶、愛、戦争をめぐる物語。ブッカー賞作家イシグロの10年ぶりの長編。邦訳が『忘れられた巨人』として早川書房より4月下旬に刊行予定。

10. NYPD RED 3    Down

James Patterson and Marshall Karp ジェイムズ・パタースン、マーシャル・カープ

ニューヨーク市警の特命捜査班“レッド”所属のザック・ジョーダンとカイリー・マクドナルドの男女コンビが活躍するシリーズの第3作。大富豪の家のガレージで運転手の生首が発見され、捜査に乗りだすザックとカイリー。やがて大富豪の十代の息子が行方不明になる。

【まとめ】

今週も1位は不動のまま、2位5位6位に新作が入ってきました。5位のコットン・マローン・シリーズは第1作のみ邦訳『テンプル騎士団の遺産』が出ています。6位のサラ・グルーエンは「恋人たちのパレード」として映画化された『サーカス象に水を』のあと、ボノボの物語“APE HOUSE”を上梓し、今回が5作目。 ランク外では『ケロッグ博士』などで知られる鬼才T・コラゲッサン・ボイルの新作が13位に、『護られし者』3部作ではじまるピーター・V・ブレットの英雄ファンタジー・シリーズ新作が14位に、それぞれ初登場しています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にグレッグ・ルッカ『逸脱者』『哀国者』『回帰者』など。やや雨多めの4月ですが、みなさん桜は満喫できたでしょうか。桜を見ると食べたくなるのが桜餅。関東と関西ではお餅の部分が全然違うこと、先日はじめて知りました。こちらは花が散っても楽しめますね。楽しむといえば、今月は翻訳大賞、翻訳ミステリー大賞、翻訳ミステリー読者賞、それぞれの発表もとても楽しみです。