アメリカのベストセラー・ランキング

5月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. THE LIAR    New!

Nora Roberts ノーラ・ロバーツ

亡くなった夫は嘘つきだった。多額の借金とともに遺された妻シェルビーは、夫の金庫から複数の名義のIDを発見する。娘を連れてテネシーの田舎町に帰郷するシェルビーだが、なぜか次々に危険に見舞われ……。ロマンスの女王が放つ新作ロマンティック・サスペンス。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。

4. EVERY FIFTEEN MINUTES    New!

Lisa Scottoline リザ・スコットライン

精神科医エリックは、強迫性障害を抱える少年の担当医となる。やがて少年が執着を示していた少女が殺害され、エリックは姿を消した少年の行方を追うが……。『虚偽証人』などのリーガル・サスペンスで知られるベストセラー作家による心理サスペンス。

5. THE STRANGER    Down

Harlan Coben ハーラン・コーベン

幸せな家庭と仕事にめぐまれ、完璧な人生を歩んでいた主人公。謎の男と出会ったことをきっかけに妻の秘密を知り、そこから何もかもが夢幻だったかのように崩れ去っていく。マイロン・ボライター・シリーズの著者による、スタンドアローンの新作スリラー。

6. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

7. MIRACLE AT AUGUSTA    Up

James Patterson and Peter de Jonge ジェイムズ・パタースン&ピーター・ドゥ・ヤング

1996年に上梓されてアメリカでベストセラーとなった“Miracle on the 17th Green”(『17番ホールの奇跡』)の続編。前作では、平凡な中年男トラビスが突然ゴルフの才に目覚めたが、本作はその1年後、すっかり有名になったトラビスを描く。

8. AT THE WATER’S EDGE    Down

Sara Gruen サラ・グルーエン

『サーカス象に水を』の著者による新作長編。父の不興を買った名家の娘マデリンと夫エリスは、ネス湖の怪獣発見を目指す友人ハンクとともにスコットランド高地へ赴く。戦時の困窮下を美しい小村で暮らすうち、やがてマデリンは外の世界の広さに気づきはじめる。

9. A SPOOL OF BLUE THREAD    Up

Ann Tyler アン・タイラー

ボルティモア郊外に建つ古びた平凡な家を軸に、70代のアビーとレッドを中心としたホイットシャンク一家四世代の、愛情だけではない複雑な感情を描いたファミリードラマ。『ブリージング・レッスン』(1988年)でピューリッツァー賞を受賞した人気作家の20作目。

10. HOT PURSUIT    Down

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第33作。バリントンは美貌の女性パイロットと知り合って欧州へ旅に出るが、女の元恋人が旅先に現れ、怪しい動きを見せる。そのころ中東のテロリスト組織がバリントンの友人である政府高官を狙っていた。

【まとめ】

2位と4位に新作が登場しました。2位のノーラ・ロバーツは、オドワイヤー家3部作の第2作『心惑わせる影』が3月末に扶桑社より刊行されています。また2015年のピューリッツァー賞が先週発表され、3位の“ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE”がフィクション部門賞を受賞しました。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定です。さらに同著者による短編集『シェル・コレクター』の表題作が、沖縄の離島を舞台にリリー・フランキー主演で映画化されるとのこと、こちらも楽しみです。 

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

関西在住の翻訳者。訳書はギリアン・フリン『ゴーン・ガール』、リチャード・C・モレイス『マダム・マロリーと魔法のスパイス』など。ケイト・モートンの『秘密』、翻訳ミステリー大賞・読者賞W受賞おめでとうございます! この原稿を書きつつ、開票速報が気になって気になって……の25日でした。