アメリカのベストセラー・ランキング

6月7日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

3. SEVENEVES    New!

Neal Stephenson ニール・スティーヴンスン

月の爆発によって居住不能になった地球。宇宙ステーションへ脱出して生きのびたわずかな人類の子孫が、5000年後に地球への帰郷を試みる——ローカス賞・ヒューゴー賞受賞作家が放つ壮大なポスト・アポカリプスSF。

4. MEMORY MAN    Stay

David Baldacci デイヴィッド・バルダッチ

フットボールの試合中に頭部を強打して以来、どれほど些細な事柄もけっして忘れられない超記憶症候群になってしまったデッカー。刑事として人生を送っていたが、何者かに妻子を殺害される悲劇に遭い、みずからの能力を用いて真相を突き止めていく。

5. 14TH DEADLY SIN    Down

James Patterson and Maxine Paetro ジェイムズ・パタースン、マクシーン・ペトロ

女性殺人捜査クラブ・シリーズ第14作。サンフランシスコ市警の制服を着た犯罪者集団が繰り返す凶悪事件に、殺人課刑事リンジーと新聞記者シンディ、検死官クレア、地方検事ユキの4人の女性が挑む。

6. BEACH TOWN    New!

Mary Kay Andrews メアリー・ケイ・アンドルーズ

映画会社のロケハン担当者グリーアは、新作映画のロケ地を求め、フロリダの海辺の町にたどり着く。町の平穏を望む町長のエベンは協力を拒むが、グリーアはなぜかそんな彼に惹かれていき——『愛さずにはいられない』の作者による新作ウィメンズ・フィクション。

7. GATHERING PREY    Down

John Sandford ジョン・サンドフォード

ミネアポリス市警のルーカス・ダヴンポートが活躍する「獲物」シリーズ第25作。みずからを“旅人たち”と呼ぶ流れ者の一団を狙った連続殺人。大学生の娘レティを通じ、その一団のメンバーから助けを求められたルーカスは捜査に乗りだす。

8. THE NIGHTINGALE    Up

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

9. THE SCARLET GOSPELS    New!

Clive Barker クライヴ・バーカー

「血の本」シリーズのオカルト探偵ハリー・ダムーアと、映画『ヘル・レイザー』(原作『ヘルバウンド・ハート』)の魔道士ピンヘッドの対決を描いた本格ホラー。連れ去られた友人の女霊媒師を救いだすため、ハリーはピンヘッドと戦うべく魔界へ足を踏み入れる。

10. ROBERT B. PARKER’S KICKBACK    New!

Ace Atkins エース・アトキンズ

パーカー死後、スペンサー・シリーズを引き継いだアトキンズによる第4作。軽い悪ふざけで理不尽に逮捕され、過酷な環境の更生施設に入れられた少年の母親がスペンサーに協力を求める。ある判事によって、大勢の少年たちが続々とその施設に送られているらしい。

【まとめ】

1、2位は今週も変わらずですが、3位、6位、9位、10位に新作がランクインしています。3位の“SEVENEVES”は『ダイヤモンド・エイジ』『クリプトノミコン』で知られるスティーヴンスンによる880ページもの大作SFです。2012年にスタートしたアトキンズ版スペンサー・シリーズはいまのところ未訳ですが、同作者によるクウィン・コルソン・シリーズの第1作は2012年エドガー賞最優秀長篇賞候補に選ばれ、『帰郷』として邦訳出版されています。

中谷友紀子(なかたに ゆきこ)

関西在住の翻訳者。訳書はフリン『ゴーン・ガール』、モレイス『マダム・マロリーと魔法のスパイス』など。今月末に次の訳書『神々と戦士たち? 青銅の短剣』(ミシェル・ペイヴァー著/あすなろ書房)が刊行予定です。青銅器時代のギリシアが舞台の歴史冒険ファンタジー・シリーズの第1作です(イルカ目線もあります)。どうぞよろしくお願いします。