アメリカのベストセラー・ランキング

8月2日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. GO SET A WATCHMAN    New!

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“To Kill a Mockingbird”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

2. THE GIRL ON THE TRAIN    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

4. ARMADA    New!

Ernest Cline アーネスト・クライン

ゲーム好きの男子高校生が、ある日UFOを目撃する。そのUFOはまるで毎晩自分のプレイしているゲーム——異星の侵略者から地球を守るオンラインゲーム——から飛び出してきたかのようだった。ポップカルチャー満載SFスリラー。

5. THE ENGLISH SPY    Down

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第15作。その美貌と幅広い慈善活動でイギリス王室の顔となっている“世界一有名な女性”、イギリス王女がクルーズ中に爆殺された。アロンは犯人を突き止めるべく、イギリスの諜報員と協力して調査を始める。

6. CODE OF CONDUCT    Down

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第14作。国際人道支援団体がコンゴに建設した医療機関がテロリストに襲撃され、多数の犠牲者が出る。生存者救出のため現地に赴いたハーヴァスを震撼させる恐るべき計画とは。

7. NAKED GREED    New!

Stuart Woods スチュアート・ウッズ

ニューヨーク市警刑事から弁護士に転じたストーン・バリントンを主人公とするシリーズの第34作。ニューヨークでビールの販路をひらこうとする男の依頼を受けたことから、バリントンはギャングの怒りを買うことになる。

8. THE NIGHTINGALE    Up

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

9. THE RUMOR    Stay

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

ナンタケット島に住む作家のマデレンと庭造りに夢中な親友グレイスは、夫や子供たちと理想的な生活を送っていた。しかし、この夏はふたりの身辺によからぬ噂がたち、幸せな生活に危機が訪れる。噂を打ち消そうにも、現実は噂以上に厳しい状況に。ナンタケット在住の“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。

10. NEMESIS    Down

Catherine Coulter キャサリン・コールター

ロマンチック・スリラー、FBIシリーズの第19作。JFK空港での爆弾テロを阻止したシャーロックだが、直後にニューヨークの中心街で次なるテロが発生する。一方夫のサビッチは、呪術用の短剣が用いられた奇妙な刺殺事件の捜査にあたる。犯人は殺害時の記憶をすべて失っていた。

【まとめ】

刊行前から話題になっていた“GO SET A WATCHMAN”が1位に初登場、発売1週間でミリオンセラーを記録しています。4位の“ARMADA”の著者アーネスト・クラインは、初の小説『ゲームウォーズ』がベストセラーになり、スピルバーグの監督で映画化も決まっている注目の作家です。トップテン外では、ドン・ウィンズロウ『犬の力』の続編“THE CARTEL”が15位にランクイン。南米の麻薬戦争を描いた『犬の力』と“THE CARTEL”を合わせ、2部作での映画の製作が決定しています。

国弘喜美代(くにひろ きみよ)

南東京読書会の世話人のひとりで、東京在住の翻訳者です。訳書は『スペイン岬の秘密』(越前敏弥さんとの共訳)など。拙訳『パリで待ち合わせ』(デボラ・マッキンリー/早川書房)が7月23日に刊行されました。ふとしたことから文通をはじめた大人の男女の物語で、季節ごとの料理がたくさん登場します。内容にぴったり合ったエアメールふうの帯が目印です。