アメリカのベストセラー・ランキング

8月9日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. GO SET A WATCHMAN    Stay

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“To Kill a Mockingbird”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

2. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Stay

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

4. THE ENGLISH SPY    Up

Daniel Silva ダニエル・シルヴァ

美術修復師にしてイスラエル諜報機関の伝説のスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの第15作。その美貌と幅広い慈善活動でイギリス王室の顔となっている“世界一有名な女性”、イギリス王女がクルーズ中に爆殺された。アロンは犯人を突き止めるべく、イギリスの諜報員と協力して調査を始める。

5. CODE OF CONDUCT    Up

Brad Thor ブラッド・ソー

アメリカ海軍特殊部隊SEALS出身のエージェントが活躍するスコット・ハーヴァス・シリーズの第14作。国際人道支援団体がコンゴに建設した医療機関がテロリストに襲撃され、多数の犠牲者が出る。生存者救出のため現地に赴いたハーヴァスを震撼させる恐るべき計画とは。

6. ARMADA    Down

Ernest Cline アーネスト・クライン

ゲーム好きの男子高校生が、ある日UFOを目撃する。そのUFOはまるで毎晩自分のプレイしているゲーム——異星の侵略者から地球を守るオンラインゲーム——から飛び出してきたかのようだった。ポップカルチャー満載SFスリラー。

7. SPEAKING IN BONES    New!

Kathy Reichs キャシー・ライクス

法人類学者テンペランス・ブレナンを主人公とするシリーズの第18作。迷宮入りした事件を調べている素人探偵がテンペのもとを訪れ、レコーダーにおさめられた音声を聞かせる。それは何者かに拉致され、拷問を受けている若い女の声だった。捜査を進めるうちに、カルト教団の存在が明らかになっていく。

8. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハンナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

9. THE RUMOR    Stay

Elin Hilderbrand エリン・ヒルダーブランド

ナンタケット島に住む作家のマデレンと庭造りに夢中な親友グレイスは、夫や子供たちと理想的な生活を送っていた。しかし、この夏はふたりの身辺によからぬ噂がたち、幸せな生活に危機が訪れる。噂を打ち消そうにも、現実は噂以上に厳しい状況に。ナンタケット在住の“サマー・ノベルの女王”と呼ばれる人気作家の最新作。

10. LUCKIEST GIRL ALIVE    Up

Jessica Knoll ジェシカ・ノール

アニーはニューヨークの雑誌編集者。華やかな仕事に、ハンサムでお金持ちのフィアンセ……すべてを手にしているかに見える彼女には、封印した過去があった。15年前、フィラデルフィアの名門私立校に転校したアニーが遭遇した忌まわしい事件とは。

【まとめ】

1位から3位は変わらず、新たにトップテン入りした作品もひとつだけという変動の少ない週になりました。その7位のキャシー・ライクスは自身も法人類学者であり、テレビドラマの『BONES——骨は語る——』の原案を提供したことで知られています。小説と同じくテンペランス・ブレナンを主人公とするこのドラマは、シーズン10を数える長寿番組となり、シーズン11の制作も決定しました。トップテン外では、アレグザンダー・マコール・スミスの日曜哲学クラブシリーズの最新作“THE NOVEL HABITS OF HAPPINESS”が19位にランクインしています。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。P・メイの『さよなら、ブラックハウス』の続編『忘れゆく男』が3月に刊行されました。そのほかの訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。