アメリカのベストセラー・ランキング
4月19日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. WHERE THE CRAWDADS SING Stay
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 2. VALENTINE New!
Elizabeth Wetmore エリザベス・ウェットモー
石油ブームに沸く1970年代のテキサス。オデッサという小さな町で、14歳のメキシコ系少女が採掘作業員から凄惨な暴行を受ける事件が起こり、住民たちのあいだに亀裂が生じる。5人の女の目を通して、当時の暴力、貧困、人種差別、性差別が描き出される。
- 3. AMERICAN DIRT Stay
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ
アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。
- 4. THE BOY FROM THE WOODS Down
Harlan Coben ハーラン・コーベン
30年前にニュージャージー州の森で野生児として発見され、故郷も親の顔も知らないワイルド。田舎町で探偵業を営む彼のもとに、旧知の敏腕弁護士ヘスターから、行方不明の少女を探してほしいと依頼が入る。両親は娘の悪ふざけだと楽観的だが、捜索開始から4日目、人間の指が送りつけられる。
- 5. TEXAS OUTLAW New!
James Patterson and Andrew Bourelle ジェイムズ・パタースン、アンドリュー・ブレル
テキサスレンジャーを主人公とするローリー・イェイツ・シリーズ第2作。アリアナという刑事の要請により、ローリーはテキサス西部の田舎町に派遣される。アリアナは事故死したとされる地元の議員が実は殺害されたのではないかと疑っており、ローリーは捜査に乗り出す。
- 6. THE SILENT PATIENT Up
Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ
有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。
- 7. THE GLASS HOTEL Down
Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル
ヴァンクーヴァー島の五つ星ホテルで働く女性バーテンダーのヴィンセントは、オーナーのジョナサンに見そめられて結婚する。ところがジョナサンが出資金詐欺で逮捕され、やがてヴィンセントはコックとしてコンテナ船に乗りこむ。兄のポールや夫のジョナサンなど、ヴィンセントに関係ある人物の人生が語られていく。
- 8. THE MIRROR & THE LIGHT Stay
Hilary Mantel ヒラリー・マンテル
英国の稀代の政治家トマス・クロムウェルの生涯を綴った3部作の3作目。ヘンリー8世の王妃アン・ブーリン処刑以後、クロムウェルの絶頂期から失脚までを描く。前2作がともにブッカー賞を受賞した、話題の歴史文芸大作。
- 9. THE GIVER OF STARS Up
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ
1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。
- 10. THE NIGHT WATCHMAN Up
Louise Erdrich ルイーズ・アードリック
ノース・ダコタ州のインディアン保留地、タートル・マウンテン近くにある工場で夜間警備員を務めるトーマス。彼はまた、チペア族の評議会のメンバーでもある。パトリスは高校卒業後、その工場で働いていたが、消息の知れなくなった姉のヴェラを探そうと、ミネソタに向かう。人間の本質のいい部分にも悪い部分にも向き合わざるを得なくなる人々の雄大な物語。
【まとめ】
今週は新作が2つ登場しました。2位のウェットモーはこれがデビュー作。アン・パチェットらから絶賛されており、今後の活躍が楽しみです。5位のパタースンとブレルの共作は第1作が2018年に刊行され、このランキングでも初登場で1位を獲得するなど好評を博しました。また、本コーナーがお休みだった先週に初登場4位となったマンデルの新作が、今週は7位にランクインしています。前著『ステーション・イレブン』は、新型インフルエンザのパンデミックによって文明が崩壊した世界を描いて全米図書賞最終候補作となり、小学館から邦訳が刊行されています。トップテン外では、大ベストセラーになった『ため息つかせて』などで知られるテリー・マクミランの新作“IT’S NOT ALL DOWNHILL FROM HERE”が12位にはいりました。
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青木創(あおき はじめ)
翻訳者。訳書にJ・ハーパー『潤みと翳り』、L・チャイルド『ミッドナイト・ライン』、D・ワッツ『偶然の科学』など。
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