第15回となる福岡読書会は、7月4日の午後、天神のとある会議室でおこなわれました。参加者は幹事含めて15名、地元福岡のみならず、東京や札幌からもお客様をお迎えしての開催となりました。

 課題書は、『悪意の波紋』(エルヴェ・コメール著/山口羊子訳 集英社文庫)でした。昨年からの再評価の流れを受けて、この辺で福岡でもフランス・ミステリーを堪能していただきたいと思って選んだ作品でしたが、正直なところ、ここまで読書会向きの作品とは思ってもいませんでした。

「このエピローグ、どう思いました?」

 開始第一声がこれ。そこから怒濤のごとくエピローグに関する意見が噴出、これはありなのかなしなのかで議論が盛り上がりました。お読みになられてない方もいらっしゃるので、細かい部分には言及できませんが、要は「人と違っていたい」というフランス人気質あふれたミステリーであり、それを容認できるかどうかというところにかかっているのではないでしょうか。個人的には非常におもしろい作品だと思いましたが、中には、言いたいことを全部書いてしまうのではなく、事実の描写や伏線の回収など、読者に伝えるさまざまな手段があるわけで、ドヤ顔して書くよりまずそういうところを工夫すべきという厳しい意見もありました。まあなんというか、みなさんから愛にあふれたご意見を頂戴し、世話人としてはありがたい限りであります。

 確かに、真剣に(?)ミステリー作品として読んでいくと、伏線や登場人物の描写など、ツッコミどころが満載(そもそもこれは波紋なの? 俺の知ってる波紋と違うなどのご意見もありました)の作品ではありますが、なんといいますか、英米的ミステリーがもたらすカタルシスとはまた違った奇妙な味に身を委ねる快楽もちょっとは理解してもらえたのではないかと勝手に想像しております。

 本作だけではなく、フランスにはまだまだおもしろいミステリー作品がたくさんあります。本会では、そういう作家や作品も少しだけ紹介してみました。『わらの女』『殺人交叉点』といった有名作品から、ジャプリゾマンシェットなどの復刊、新訳が出ている作家、フランク・ティリエポール・アルテフレッド・ヴァルガスなど最近の作家も名前が挙がりました。芥川賞作家又吉直樹は、授賞記者会見で「私の作品がダメでも他の本を100冊読めば小説のおもしろさがわかってもらえる」と発言していましたが、今回の課題書がもし合わなかったとしても、上記の作家や作品を読んでもらえたら、100冊読まずともフランス・ミステリーの魅力は伝わるんじゃないかなーと勝手に思っています。ぜひ一度、書店にてお手に取ってみてください。

 新世話人の初回としては、本会から二次会、三次会と、これほどの盛り上がりだったことにホッとしていると同時に、次回もがんばろうという気合いもまた新たに注入されたような思いです。参加していただいたみなさま、本当にありがとうございました。次回は11月開催の予定、課題本は現在選定中です。詳細が決まり次第、またこちらでご案内させていただきます。福岡だけでなく全国のみなさま、リピーターの方も読書会未体験の方も、ぜひ福岡読書会においでくださいませ。

(福岡読書会 大木雄一郎)

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