アメリカのベストセラー・ランキング
10月25日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
1. THE SURVIVOR New!
Vince Flynn and Kyle Mills ヴィンス・フリン、カイル・ミルズ
元CIAのジョー・リックマンは祖国を裏切り、大量の超機密文書を盗み出した。CIA長官はエリートスパイ、ミッチ・ラップに命令を下し、リックマンを追わせるが……故ヴィンス・フリンの跡を継いでカイル・ミルズが書きあげたシリーズ最新作。
2. A KNIGHT OF THE SEVEN KINGDOMS New!
George R. R. Martin ジョージ・R・R・マーティン
「ゲーム・オブ・スローンズ」(『氷と炎の歌』シリーズ)の約百年前を舞台にした外伝的中編の初期三作を一冊にまとめたもの。160点を超えるイラスト入り。
3. THE MURDER HOUSE Down
James Patterson and David Ellis ジェイムズ・パタースン、デイヴィッド・エリス
ハンプトンズの海辺に建つ屋敷で16年前、不可解な火災により老夫婦が死亡した。地元の人々からいまもマーダー・ハウスと呼ばれているその家で、こんどはハリウッドのプロデューサーと愛人の死体が発見される。
4. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE Up
Anthony Doerr アンソニー・ドーア
フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。
5. THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB Down
David Lagercrantz ダビド・ラーゲルクランツ
故スティーグ・ラーソンによるミレニアム3部作の続編を故人と同じスウェーデンの作家が書き継いだもの。スティーグ・ラーソンは4部目に着手していたが、その草稿は今作に反映されていない。とはいえ、リスベットとミカエルは引きつづき登場し、今回リスベットはNSAのシステム侵入に挑む。
6. GO SET A WATCHMAN Up
Harper Lee ハーパー・リー
ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。
7. MAKE ME Down
Lee Child リー・チャイルド
元アメリカ陸軍憲兵隊捜査官のジャック・リーチャーが活躍するシリーズの第20作。流れ者の暮らしをつづけるリーチャーは、オクラホマの田舎町で元FBI捜査官のミシェルと知り合う。そしてその町で行方不明になったミシェルの友人の捜索を手伝うことになるが、住民は不自然なまでに非協力的だった。
8. SHADOWS OF SELF New!
Brandon Sanderson ブランドン・サンダースン
ファンタジー小説『ミストボーン』シリーズの最新作。前作“The Alloy of Law”で舞台が19世紀後半のアメリカに移ったあとの本作では、魔法とテクノロジーの融合した社会が描かれる。『ミストボーン・トリロジー』と呼ばれる三部作は邦訳も発売中。
9. AFTER YOU Down
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ
2012年発表(邦訳は2015年)のベストセラー『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』の続編。前作は半年限定で介護職についたルイーザと、四肢麻痺の青年実業家ウィルとの物語で、今回はその後、主人公ルーがもがきながら自分の道を探そうとする姿を描く。
10. THE GIRL ON THE TRAIN Down
Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ
ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。10月15日に邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳、講談社文庫)が発売されました。
【まとめ】
新作が3つ飛び込んできました。初登場1位の“THE SURVIVOR”は『謀略国家』『強権国家』の二作が邦訳されているミッチ・ラップ・シリーズの最新作です。原作者であるヴィンス・フリンが2013年に逝去したため、本作はカイル・ミルズが書き継ぎました。2位と8位の新作はいずれもファンタジーのシリーズ作で、どちらも邦訳が数冊出ています。4位の“ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE”は浮沈を繰り返し、発売から1年以上経っていながらもいまだにトップ10に残っているというすごい作品です。ランキング常連の『ガール・オン・ザ・トレイン』もいよいよ邦訳が発売されました。
武藤陽生(むとう ようせい) |
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ゲーム、出版翻訳。めっきり寒くなってきました。今年ももう終わりですね。東京の蒲田駅前に晩年のボビー・フィッシャーがよく座って新聞を読んでいたというベンチがあり、先日そこに自分も腰かけてみました。今は最近文庫化された『完全なるチェス—天才ボビー・フィッシャーの生涯』を読んでいますが、めっぽう面白いです。 |