アメリカのベストセラー・ランキング
5月3日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)
- 1. WHERE THE CRAWDADS SING Stay
Delia Owens ディーリア・オーエンズ
ノースカロライナ州の湿地で村の青年チェイスの死体が発見され、「湿地の少女」と呼ばれるカイアが真っ先に疑われる。6歳で家族に見捨てられ、ひとりで生き延びてきたカイアは、果たして犯人なのか――みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と絡みあう。邦訳『ザリガニの鳴くところ』(友廣純訳)が早川書房より刊行されている。
- 2. MASKED PREY New!
John Sandford ジョン・サンドフォード
ルーカス・ダヴンポートの「獲物」シリーズ第30作。上院議員の娘が、自分の写真や名前がさらされた奇妙なブログを見つける。そこには有力政治家の子息らの写真が多数あり、過激な政治的主張が書きこまれていた。明らかに危険な内容だが撮影者は特定できず、連邦保安官のルーカスに捜査が委ねられる。
- 3. AMERICAN DIRT Down
Jeanine Cummins ジャニーン・カミンズ
アカプルコで書店を営むリディアは、麻薬カルテルのボスの怒りを買い、夫や母親をはじめ家族16人を殺される。8歳の息子ルカとともに生き延びるため、彼女はメキシコを縦断してアメリカを目指す。邦訳『夕陽の道を北へゆけ』(宇佐川晶子訳)が早川書房より刊行されている。
- 4. THE SILENT PATIENT Up
Alex Michaelides アレックス・マイクリーディーズ
有名画家のアリシア・ベレンソンは完璧な人生を送っているようにみえた。夫のゲイブリエルは人気のファッション・カメラマンで、住まいはロンドンの一等地に建つ壮大な家だ。しかしある夜、仕事から帰ってきたゲイブリエルの顔に向け、アリシアは5発の銃弾を撃ちこむ。それ以来、彼女はいっさい、口をつぐむのだった。邦訳『サイコセラピスト』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、坂本あおい訳)が刊行ずみ。
- 5. THE BOY FROM THE WOODS Down
Harlan Coben ハーラン・コーベン
30年前にニュージャージー州の森で野生児として発見され、故郷も親の顔も知らないワイルド。田舎町で探偵業を営む彼のもとに、旧知の敏腕弁護士ヘスターから、行方不明の少女を探してほしいと依頼が入る。両親は娘の悪ふざけだと楽観的だが、捜索開始から4日目、人間の指が送りつけられる。
- 6. THE GLASS HOTEL Up
Emily St. John Mandel エミリー・セントジョン・マンデル
ヴァンクーヴァー島の五つ星ホテルで働く女性バーテンダーのヴィンセントは、オーナーのジョナサンに見そめられて結婚する。ところがジョナサンが出資金詐欺で逮捕され、やがてヴィンセントはコックとしてコンテナ船に乗りこむ。兄のポールや夫のジョナサンなど、ヴィンセントに関係ある人物の人生が語られていく。
- 7. IN FIVE YEARS Up
Rebecca Serle レベッカ・サール
憧れの有名法律事務所に就職が決まり、恋人のプロポーズも受けた日、ダニーは幸せの絶頂だった。ところがその晩夢に見た5年後の自分は、見知らぬ部屋で見知らぬ男性と結婚生活を送っていた。あまりに鮮明なその夢は、すべてに完璧を求め、計画通りに生きてきたダニーの価値観をゆるがす。
- 8. REDHEAD BY THE SIDE OF THE ROAD Down
Anne Tyler アン・タイラー
ボルティモアでアパートの管理人をしながらコンピュータ修理業を営む43歳のマイカ。地味で決まりきった彼の日常は、恋人が家からの立ち退きに直面し、さらには自分の息子と称する少年が転がりこんできたことで大きく乱されていく。
- 9. THE GIVER OF STARS Stay
Jojo Moyes ジョジョ・モイーズ
1930年代、アメリカ人と結婚したアリスは、英国での窮屈な人生から抜け出せるものと考えていたが、ケンタッキー州の小さな町へ移っても、結局は息の詰まる毎日がつづいた。しかしアリスは山奥まで馬で本を届ける巡回図書館員として働きはじめ、同僚の女性4人と友情をはぐくむようになる。実話にもとづく物語。
- 10. VALENTINE Down
Elizabeth Wetmore エリザベス・ウェットモー
石油ブームに沸く1970年代のテキサス。オデッサという小さな町で、14歳のメキシコ系少女が採掘作業員から凄惨な暴行を受ける事件が起こり、住民たちのあいだに亀裂が生じる。5人の女の目を通して、当時の暴力、貧困、人種差別、性差別が描き出される。
【まとめ】
新たにランクインしたのは1作のみと、動きの少ない週となりました。2位の連邦保安官ルーカス・ダヴンポートを主人公とする「獲物」シリーズは、1989年からつづく人気シリーズ。第10作の『餌食』まで邦訳出版されています。ベストテン外では、自身が元米海軍特殊部隊員だというジャック・カーのスリラー“SAVAGE SON”が、13位にランクインしています。
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佐藤桂(さとう けい)
神奈川在住の翻訳者です。『サバヨミ!』(久野郁子さんとの共訳、ハヤカワ文庫NV)、『RE:THINK――答えは過去にある』(早川書房)、『逆転交渉術:まずは「ノー」を引き出せ』(早川書房)など。
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