アメリカのベストセラー・ランキング

1月24日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. STAR WARS: THE FORCE AWAKENS    New!

Alan Dean Foster アラン・ディーン・フォスター

映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の公式ノヴェライゼーション。8ページにわたるカラー写真付き。著者は最初の「スター・ウォーズ」でもジョージ・ルーカス本人の依頼でゴーストライターをつとめ、映画化前の1976年に脚本から小説を書き起こしたことが近年明かされている。

2. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

3. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

4. ROGUE LAWYER    Down

John Grisham ジョン・グリシャム

ミニバーとWi-Fiを備えた革装特別仕様の防弾車に乗り、その運転手兼用心棒兼ゴルフのキャディーでもある腹心の友を相棒に、ひとの嫌がる依頼人ばかりを弁護する異端児セバスチャン・ラッド。孤高の男を主人公に据えた、リーガル・サスペンスの名手による最新作。

5. THE NIGHTINGALE    Up

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。

6. SEE ME    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

すさんだ過去と決別して人生をやり直すため、教師を目指しながらひっそり暮らすコリン。弁護士のマリアと出会い、愛しあうようになるが、マリアにもまた深い心の傷があった……『きみに読む物語』で知られるベストセラー作家によるロマンティック・スリラー。

7. CROSS JUSTICE    Stay

James Patterson ジェイムズ・パタースン

男やもめの犯罪心理学者、アレックス・クロス・シリーズ第23作。いとこのステファンが身の毛もよだつような殺人事件の犯人として告訴されたことを受け、クロスは35年ぶりに、ノースカロライナ州スタークスヴィルに帰郷する。そこで彼を待っていたものは、すっかり様変わりしてしまった生まれ故郷と、自分の過去にまつわる真実だった。

8. THE BAZAAR OF BAD DREAMS    Down

Stephen King スティーヴン・キング

2009年以降に雑誌等で発表された短編のほか、未発表の“Mister Yummy”、“Obits”の2編を含む全20編をおさめたキングの最新短編集。

9. GO SET A WATCHMAN    Stay

Harper Lee ハーパー・リー

ピュリッツアー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

10. FATES AND FURIES    UP

Lauren Groff ローレン・グロフ

大学時代に出会い、卒業後すぐに結婚したロットとマティルドの夫婦。俳優を目指し挫折するも、劇作家として成功したロットは、陰ながら支えつづけてくれたマティルドに感謝しているが……夫と妻、それぞれの視点から語られる23年の結婚生活の真実とは。2015年全米図書賞最終候補作。

【まとめ】

1位にスター・ウォーズ最新映画のタイイン作品が躍り出ました。アラン・ディーン・フォスターは「スタートレック」「エイリアン」「トランスフォーマー」など多くのノヴェライズを手掛け、スター・ウォーズのスピンオフ小説も2作書いています。1つ繰り上がって5位となったクリスティン・ハナは、先週お知らせしたとおり邦訳の刊行が決まりました。小学館から3月8日発売予定の『ナイチンゲール(上・下)』(加藤洋子訳)をお楽しみに。10位のローレン・グロフ“FATES AND FURIES”は9月末に7位で初登場したのち一旦ランク外となりましたが、全米図書賞の最終候補5作に残って順位をもどし、15週ぶりにトップ10に返り咲きました。今週のもうひとつの新作として、11位にバチェラー・パーティーで起こった殺人事件の悪夢を描くクリス・ボジャリアンの“THE GUEST ROOM”が入っています。また、12月18日にはやくも邦訳『ミレニアム 4 蜘蛛の巣を払う女 (上・下)』が刊行され、今月の書評七福神のコーナーで3票を獲得しているダヴィド・ラーゲルクランツ“THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB”は17位。安定の20位圏内を継続しています。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。以前に訳したボディガード・シリーズの主人公アティカスは、『アラバマ物語』(原題:“TO KILL A MOCKINGBIRD”)に出てくる正義の弁護士アティカス・フィンチにちなんだ名前でしたが、アメリカの良心とも呼ばれて国民に愛されたこの弁護士の後年が描かれる“GO SET A WATCHMAN”(執筆年はこちらが先)では、彼が見下げ果てた人種差別主義者となっていたことが大きなショックと話題を呼んでいるそうで、その内容に興味津々。あらためて『アラバマ物語』を再読中です。