バレンタインのプレゼントに最適! かどうかはともかく……
著書の『翻訳百景』(角川新書)が10日に刊行されました。これは、ブログ「翻訳百景」やこのシンジケートのサイト、各種雑誌などに書いた文章を土台にして大幅に加筆したもので、翻訳の仕事の実情や翻訳出版を盛りあげていくための試みなどについて、各種図版をたくさん使って紹介してあります。編集者の手がはいったゲラ(校正刷り)や共訳者とのやりとりのメモなど、ふだんあまり公開されない資料の実物をいくつも載せました。
目次は以下のとおり。
第1章 翻訳の現場
・文芸翻訳の仕事
・すぐれた編集者とは
・翻訳書のタイトル
・翻訳の匙加減
第2章 『ダ・ヴィンチ・コード』『インフェルノ』翻訳秘話
・『天使と悪魔』と『ダ・ヴィンチ・コード』
・『デセプション・ポイント』と『パズル・パレス』、映画二作ほか
・『ロスト・シンボル』と『インフェルノ』
・ドン・ブライン『ダ・ヴィンチ・コッド』翻訳秘話
第3章 翻訳者への道
・わたしの修業時代
・なんのために学ぶのか
第4章 翻訳書の愉しみ
・全国翻訳ミステリー読書会
・読書探偵作文コンクール
・「紙ばさみ」って何?
・『思い出のマーニー』翻訳秘話
・ことばの魔術師 翻訳家・東江一紀の世界
各章の内容説明についてはブログ「翻訳百景」の紹介記事を見ていただくとして、ここではシンジケートのサイトの読者のかたへのお薦めの項目を3つ紹介します。
【1】全国翻訳ミステリー読書会
まずは何よりもこれ。シンジケートが後援する全国読書会について、その歴史や開催の様子や各読書会の特徴までを、13ページにわたって紹介しました。
左は、2011年の夏ごろ、のちに名古屋読書会の世話人になるO矢H子さん(伏せ字にする意味があるのか?)が発した悲鳴。
このほか、以前このサイトに掲載された読書会レポートをまるごとひとつ載せてあります。どこの読書会のやつかは、読んでのお楽しみ。あ、ご当地ラーメンの話は……ありません。まあ、ラーメンということばは3回出てくるけど。そっちの情報については、この前まとめた「全国翻訳ミステリー読書会&ラーメン店めぐりの記録」を見てください。
【2】翻訳書のタイトル
邦題を決めるにあたって、編集者といっしょに考えたなかで、いまも記憶に残っている作品を5つ選んでそのときのエピソードを紹介しています。5作の最後を飾るのは、このサイトの読者ならよくご存じ、B藝S秋の編集者Nさんの離れ業が光ったあの作品。あの作品の邦題がなぜああなったのか、当時のツイートをライブ感そのままに収録してあります。
【3】ことばの魔術師 翻訳家・東江一紀の世界
去年の春から夏にかけてずっと取り組んできた、東江一紀さんの一周忌に合わせての企画(トークイベント、書店フェア、読書会)の一部始終を23ページにわたって収録しました。
左図はそのころ札幌読書会の課題書で採りあげた『プレシャス』(サファイア著、河出文庫)の一節。こんなふうに、いくつかの英文と東江さんの訳文を並べる形で、不世出の名訳者の偉業を振り返っています。
書店やトークイベントで配布した冊子のデータは、いまもここからダウンロードできます。
この『翻訳百景』の刊行とダン・ブラウン『インフェルノ』の文庫化を記念して、今月末に東京・大阪・京都で3日連続のトークイベント&サイン会が開催されるので、お時間のあるかたはぜひお越しください。すべて参加費無料です。
25日(木)の第16回翻訳百景ミニイベント(表参道・東京ウィメンズプラザ)は、(株)KADOKAWA 文芸・ノンフィクション局局長の郡司聡さんをお招きしての対談形式でおこないます。郡司さんは長く角川書店で編集者として翻訳書担当の総責任者をおつとめになった人で、ダン・ブラウンと直接会った数少ない日本人のひとりでもあります。この日は、翻訳出版の現在や未来についてもいっしょにお話しできたらと考えています。
翌26日(金)には、紀伊國屋書店グランフロント大阪店でトークイベントを開催します。こちらはおそらく角川新書の編集者が聞き手になって進める形になりますが、トークの内容は前日の東京とかなり近いものになります。
さらに、その翌日の27日(土)には、京都のイベントスペース amu KYOTO でトークイベントをすることになりました(第1回京都読書会の会場です)。この日は京都読書会世話人の宮迫さんが聞き手となり、半分ぐらいの時間はプロジェクターを使った解説をおこなうので、25日の東京、26日の大阪とはほぼ別内容です。
参加を希望なさるかたは、それぞれのリンク先の要項を見てお申しこみください。
◇越前敏弥(えちぜん としや) 1961年生。おもな訳書に『解錠師』『夜の真義を』『Yの悲劇』『ダ・ヴィンチ・コード』『インフェルノ』など。趣味は映画館めぐり、ラーメン屋めぐり、マッサージ屋めぐり |