アメリカのベストセラー・ランキング

2月28日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. MORNING STAR    New!

Pierce Brown ピアース・ブラウン

厳しい階級制度が敷かれた火星のコロニーを舞台とするSF3部作の第3部。最下カーストのレッドに属するダロウは、傲慢な支配階級のゴールドに対し、ついに仲間を率いて反乱を起こすが、その前にかつての友人たちが立ちふさがる。第1部が『レッド・ライジング 火星の簒奪者』(内田昌之訳)の邦題で早川書房から刊行されている。

2. BROTHERHOOD IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

元上院議員エドワードが何者かに傷を負わされ、そのまま消息を絶つ。姿を最後に見たのは、いとこのデニスだった。デニスいわく、エドワードは一族ゆかりの土地を勝手に売ろうとしていたらしい。イヴはデニスの妻で自身の友人でもあるトッププロファイラーのシャーロットとともに事件を調べはじめる。イヴ&ローク・シリーズ第42作。

3. NYPD RED 4    Down

James Patterson and Marshall Karp ジェイムズ・パタースン、マーシャル・カープ

ニューヨーク市警の特命捜査班“レッド”所属のザック・ジョーダンとカイリー・マクドナルドの男女コンビが活躍するシリーズの第4作。映画のプレミアイベント会場で女優が殺害され、数百万ドルのネックレスが強奪される。一方、市内の病院では高価な医療機器の窃盗事件が頻発、ザックとカイリーは捜査に奔走する。

4. FIND HER    New!

Lisa Gardner リサ・ガードナー

ボストン市警の刑事D・D・ウォーレンを主人公とするシリーズの第8作。誘拐された若い女が犯人を殺害するという事件が発生する。その女は7年前にも誘拐され、1年以上にわたって監禁されたすえに、犯人を殺害して脱出した過去を持っていた。

5. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

6. THE GIRL ON THE TRAIN    Down

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

7. MY NAME IS LUCY BARTON    Down

Elizabeth Strout エリザベス・ストラウト

ピューリッツァー賞を受けた著者による最新作。簡単な手術を受け、回復中のルーシー・バートンの病室に、もう何年も口をきいていない母親が見舞いにやってくる。2人はルーシーの幼少期の思い出話をはじめ、次第に絆を取り戻していく。しかし、その水面下では……短いながらも深い余韻を残す、母と娘の物語。

8. THE NIGHTINGALE    Down

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。小学館から『ナイチンゲール(上・下)』(加藤洋子訳)として3月8日発売予定。

9. BLUE    Down

Danielle Steel ダニエル・スティール

ビバリーヒルズでの絵に描いたようなセレブ婚生活を一瞬の事故で失ったジニー。ホームレスの少年ブルーとの出会いが彼女の疲れ果てた心を変えていくが、ふたりの友情が深まりはじめたころ、ブルーが隠していた衝撃的な秘密が明かされる。ロマンス作品で知られるダニエル・スティールの最新作。

10. BREAKDOWN    Down

Jonathan Kellerman ジョナサン・ケラーマン

テレビ女優が死体で発見された。その女優の幼い息子オーヴィットの行方もわからない。アレックスはオーヴィットの消息と女優の死の謎を探るが、第二の殺人事件が起こり……。ロサンゼルスの小児臨床心理医アレックス・デラウェア・シリーズの第31作。

【まとめ】

1位と4位に新作がランクインしました。1位の3部作はブラウンのデビュー作ですが、本人の脚本で映画化されることが決定しており、準備が進んでいる模様です。監督は《ワールド・ウォーZ》のマーク・フォースターになるとのこと。4位のガードナーのシリーズの邦訳は、第1作の“ALONE”が『あなただけに真実を』の邦題で刊行されています。トップテン外では、アレックス・ベレンスンの“THE WOLVES”が14位にランクインしました。CIAの元工作員ジョン・ウェルズが活躍するシリーズの第10作です。

青木創(あおき はじめ)

フィクション翻訳とノンフィクション翻訳の両方を手がけています。訳書に、D・ワッツ『偶然の科学』、A・フランセス『〈正常〉を救え』など。昨年末に国弘喜美代さんとの共訳でドン・ウィンズロウの新作『報復』が刊行されました。現在はゲーム理論と格闘中です。