アメリカのベストセラー・ランキング

3月13日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Up

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

2. A GIRL’S GUIDE TO MOVING ON    New!

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

夫に裏切られて結婚生活の危機に直面したふたりの女性が、新たな愛と希望を見つけ、勇気を出して再出発する。昨年3月にトップテン入りした“LAST ONE HOME”につづく“New Beginnings”シリーズ第2作。

3. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

4. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。小学館から『ナイチンゲール(上・下)』(加藤洋子訳)として邦訳刊行予定。

5. GO SET A WATCHMAN    Up

Harper Lee ハーパー・リー

ピューリッツァー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。

6. COMETH THE HOUR    Down

Jeffrey Archer ジェフリー・アーチャー

激動の20世紀イギリスを生きる一族を描いた〈クリフトン年代記〉第6部。ハリー・クリフトンはシベリアで投獄された友人のロシア人作家の救出に奔走。一方、銀行の重役となった息子のセバスティアンはインド人の娘と恋に落ちるも、彼女には親の決めた許嫁がいた。

7. WEDDING CAKE MURDER    New!

Joanne Fluke ジョアン・フルーク

お菓子探偵ハンナ・スウェンセン・シリーズ第19作。結婚式を目前に控えたハンナは、テレビ局主催のデザートシェフ・コンテストに出場。そのジャッジとしてレイク・エデンの町を訪れていたセレブリティシェフが刺殺された。登場するケーキなどのレシピ紹介もあり。

8. MY NAME IS LUCY BARTON    Stay

Elizabeth Strout エリザベス・ストラウト

ピューリッツァー賞を受けた著者による最新作。簡単な手術を受け、回復中のルーシー・バートンの病室に、もう何年も口をきいていない母親が見舞いにやってくる。2人はルーシーの幼少期の思い出話をはじめ、次第に絆を取り戻していく。しかし、その水面下では……短いながらも深い余韻を残す、母と娘の物語。

9. BROTHERHOOD IN DEATH    Down

J. D. Robb J・D・ロブ

元上院議員エドワードが何者かに傷を負わされ、そのまま消息を絶つ。姿を最後に見たのは、いとこのデニスだった。デニスいわく、エドワードは一族ゆかりの土地を勝手に売ろうとしていたらしい。イヴはデニスの妻で自身の友人でもあるトッププロファイラーのシャーロットとともに事件を調べはじめる。イヴ&ローク・シリーズ第42作。

10. NYPD RED 4    Down

James Patterson and Marshall Karp ジェイムズ・パタースン、マーシャル・カープ

ニューヨーク市警の特命捜査班“レッド”所属のザック・ジョーダンとカイリー・マクドナルドの男女コンビが活躍するシリーズの第4作。映画のプレミアイベント会場で女優が殺害され、数百万ドルのネックレスが強奪される。一方、市内の病院では高価な医療機器の窃盗事件が頻発、ザックとカイリーは捜査に奔走する。

【まとめ】

2位と7位に新作がランクインしました。7位のジョアン・フルークのお菓子探偵シリーズは第16作『レッドベルベット・カップケーキが怯えている』(ヴィレッジブックス)まで邦訳が刊行されています。また、先月他界したハーパー・リーの“GO SET A WATCHMAN”が、ふたたび順位をあげています。こちらの邦訳は早川書房から年内に刊行予定とのこと。トップテン外では、V・E・シュワブによるロンドンを舞台にしたファンタジー・シリーズ2作目の“A GATHERING OF SHADOWS” が15位に登場しています。

佐藤桂(さとう けい)

神奈川在住の翻訳者です。訳書に『中途の家』(越前敏弥さんとの共訳)、『世界のEMOJIへ: 絵文字の成り立ちとグローバルな展開』(Amazon Kindle Singles)など。先だって南東京読書会にはじめて参加しました。課題書だった『悲しみのイレーヌ』の展開になんの疑いも違和感も抱かず読みすすみ、おそらくは著者の狙いどおりにきっちり嵌められた読者はわたしです……。第7回翻訳ミステリー大賞最終候補作、すごい作品ばかりで迷いますね。