アメリカのベストセラー・ランキング

3月20日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)

1. THE GANGSTER    New!

Clive Cussler and Justin Scott クライブ・カッスラー、ジャスティン・スコット

私立探偵アイザック・ベル・シリーズの第9作。1906年、ニューヨークで幅を利かせるイタリア系犯罪組織を抑止すべく、特別対策班に協力するヴァン・ドーン探偵社。混沌のなかで起こる連続殺人を追うベルは、犯人の最後の標的が途方もない人物であると気づく。

2. ALL THE LIGHT WE CANNOT SEE    Down

Anthony Doerr アンソニー・ドーア

フランスに住む盲目の少女と、無線技師となり戦争に巻きこまれていくドイツ人の青年——第二次大戦直前、ふたりの人生がサン・マロで交錯する。短編集『シェル・コレクター』でデビューした著者の4年ぶりの新作長編。新潮クレスト・ブックスから邦訳刊行予定。

3. THE GIRL ON THE TRAIN    Stay

Paula Hawkins ポーラ・ホーキンズ

ロンドンに住むレイチェルは、毎朝同じ通勤電車に乗り、線路ぞいのある家に暮らす夫婦の朝食風景をながめるのを日課にしていたが、ある日意外な場面を車窓から目撃する。やがてその夫婦の妻の失踪が明らかになり……。イギリスの新人女性作家による心理サスペンス。邦訳『ガール・オン・ザ・トレイン』(池田真紀子訳)が講談社文庫より刊行されている。

4. THE NIGHTINGALE    Stay

Kristin Hannah クリスティン・ハナ

ドイツ軍に占領されたロワール地方の村で幼い娘をかかえて苦労するヴィアンヌと、パリでレジスタンスの活動に身を投じたイザベル。第二次大戦中のフランスを舞台に、苛酷な時代を強く生き抜いた姉妹の姿を描く。小学館から『ナイチンゲール(上・下)』(加藤洋子訳)として邦訳刊行予定。

5. A GIRL’S GUIDE TO MOVING ON    Down

Debbie Macomber デビー・マッコーマー

夫に裏切られて結婚生活の危機に直面したふたりの女性が、新たな愛と希望を見つけ、勇気を出して再出発する。昨年3月にトップテン入りした“LAST ONE HOME”につづく“New Beginnings”シリーズ第2作。

6. COMETH THE HOUR    Stay

Jeffrey Archer ジェフリー・アーチャー

激動の20世紀イギリスを生きる一族を描いた〈クリフトン年代記〉第6部。ハリー・クリフトンはシベリアで投獄された友人のロシア人作家の救出に奔走。一方、銀行の重役となった息子のセバスティアンはインド人の娘と恋に落ちるも、彼女には親の決めた許嫁がいた。

7. MY NAME IS LUCY BARTON    Up

Elizabeth Strout エリザベス・ストラウト

ピューリッツァー賞を受けた著者による最新作。簡単な手術を受け、回復中のルーシー・バートンの病室に、もう何年も口をきいていない母親が見舞いにやってくる。2人はルーシーの幼少期の思い出話をはじめ、次第に絆を取り戻していく。しかし、その水面下では……短いながらも深い余韻を残す、母と娘の物語。

8. GO SET A WATCHMAN    Down

Harper Lee ハーパー・リー

ピューリッツァー賞受賞作で映画にもなった『アラバマ物語』(1960年刊行、原題は“TO KILL A MOCKINGBIRD”)の著者による半世紀ぶりの新作。『アラバマ物語』の語り手の女性、スカウトのその後を描いたもので、1950年代に執筆された草稿が最近見つかり、出版の運びとなった。早川書房より年内に邦訳刊行予定。

9. THE WIDOW     New!

Fiona Barton フィオナ・バートン  

幼い少女の失踪事件で、誘拐殺人の最有力容疑者と目されながら逮捕に至る決め手がないまま日常生活を送ってきた男が、バスに轢かれて死んだ。男の妻は、支配的だった夫がいなくなった今、事件を追い続けてきた刑事と記者に何を語りはじめるのか。

10. FIND HER    Up

Lisa Gardner リサ・ガードナー

ボストン市警の刑事D・D・ウォーレンを主人公とするシリーズの第8作。誘拐された若い女が犯人を殺害するという事件が発生する。その女は7年前にも誘拐され、1年以上にわたって監禁されたすえに、犯人を殺害して脱出した過去を持っていた。

【まとめ】

1位と9位に新作が入りました。20世紀初頭を舞台にした1位のシリーズは『大追跡(上・下)』と『大破壊(上・下)』の2作が邦訳刊行されています。“THE WIDOW”はジャーナリズムの世界で長く活躍してきたフィオナ・バートンの小説デビュー作で、発売直後の先々週が12位、先週は11位、そして今週9位と着実に順位を上げてきました。ベストテン圏外で新たに登場したのは12位の“A FEW OF THE GIRLS”。映画「サークル・オブ・フレンズ」の原作者で2012年に他界したアイルランドの作家、メーヴ・ビンチーの短編集です。

飯干京子(いいぼし きょうこ)

大阪在住。訳書にグレッグ・ルッカ『回帰者』など。近ごろ同世代の人と話していると、「ちょっと前のことが思い出せなくて。昔のことならはっきり思い出せるんだけどねぇ」なんて話題がやたら多くて情けないです。ダニエル・フリードマン『もう過去はいらない』の作中、介護施設で短期記憶のテストをやらされるバック・シャッツ。「リストを言ってみて」「やりたくない」—— その気持ち、よくわかりますよ、バックさん。